アドリミア王国内乱編-6
遅くなりました。すいません。
最近急速に読者が増えているようです。ありがとうございます。
途中で放置しないように頑張りたいと思います。
彩海島。
日本民主主義国沖合、およそ60kmのところにある島だ。
今後、海軍の重要拠点になるであろうと飛行場以外にも、砲台や地下施設も存在する。
だが、たかが60km。いくら船舶の足が遅いとはいえ、15knで航行すれば2時間ちょっとでついてしまう。
※15kn=時速28kmくらい
「急いで必要なものを降ろせ!」
俺は叫んだ。
海軍兵も急いで彩海島に下す予定の物資を降ろす。
「谷岡中将。ほんの3時間前まで“自分はあくまで第1艦隊指令に過ぎない”とか言っていたのは誰ですか?」
ヘルマー中佐に突っ込まれた。
「ところで、結局ここの岸壁に接岸しているのは輸送艦一隻のようですが・・・。他は?」
確かに、岸壁はがら空きだ。
「他は見ての通り、全部アドリミア王国行だよ。」
「ですが、あんなに何を・・・」
「それは秘密ってやつだ。結構無茶してるしな。」
ヘルマー中佐が疑問に思うのも無理はない。
海軍がかき集めた歩兵はリサ大尉以下の1個大隊のみ。以前に紹介したように海軍の輸送艦は“兵1個大隊(=500~600名)とその装備を輸送できる構造とする”となっているため、リサ大尉以下1個大隊は1隻の兵員輸送艦で収まってしまう。
そして彩海島で荷卸しした輸送艦は1隻。
残りの8隻のうち、工作艦“島根”と物資輸送艦2隻、タンカー3隻を除くと、2隻分計算が合わない。その2隻に何が積んであるかは今のところ秘密だ。
「うう、寒い。」
露天艦橋で叫びまくっていたら、いつの間にか雪が降り始めた。よくよく考えると、もう12月寸前である。
一番最初にアドリミア王国へ出港した時は、過ごしやすい時期だったなぁ・・・。
翌日、12年11月30日。
物資輸送艦1隻を空にして、その代りにあるものを積んで第1輸送艦隊はアドリミア王国へ向かった。もちろん、護衛の艦隊も一緒だ。
佐藤が新たに開発した試作の長距離音声無線機で俺は斎間大将にかみついた。
「いったいいつまでかかっているんですか!いつ正式にアドリミア王国への派兵ができるんですか!?」
“そ、そう言われてもだなぁ・・・。”
彩海島出港から一週間。つまりは12年12月7日。
俺はこの試作無線機を使って斎間大将にかみつくようになっていた。
斎間大将にかみついても仕方ないのはわかる。だが、不安なのだ。
すでにここまで事を進めてしまったというのもある。アドリミアに艦隊を置いてきたし、大使館も置いてきた。そして、やる気満々で輸送船に物資を積み込んでアドリミア王国へ向かっている。
ここで、アドリミア王国への派兵が中止になったら大変なのだ。
「電探に感有!大型水上艦艇です!」
電探員がそう叫んだとたんに艦橋に緊張が走った。
「距離と方角は!?」
ヘルマー中佐が叫ぶ。
「距離、100!2時から3時の方向!」
俺はとっさに叫んだ。
「水上偵察機用意!注意して偵察させろ!」
すぐに水上偵察機が出射された。
40分くらいして、水上偵察機、“仙崎2号”から連絡が入った。
“カイリュウカン2。ワレコウゲキヲウケル”
海龍艦2。我攻撃を受ける。
「まずいことになりましたな。」
ヘルマー中佐が言った。
「水偵に即時帰還を伝えろ。無茶させるな。」
俺は通信員に伝えた。
さて、困ったことになった。まぁ、戦争が自分の都合よくいくわけはないのだが。
思いっきりフィアンカへ向かっている我が艦隊を海龍艦に見つかりたくはない。そもそも、水偵を攻撃したということはすでに我々を“敵”とみなしている可能性が高い。
確かに、海龍艦2隻くらい我が第1艦隊だけでも充分対応できるのだが・・・。
「艦長!下関1号から入電です!」
通信士が紙切れをヘルマー中佐に渡した。
それを読んだヘルマー中佐はあわててその紙を俺に渡した。
「司令!大変です!」
“モクゾウセンカン8ヲシニン。フィアンカホウメンヘムカイツツアリ”
木造戦艦8を視認。フィアンカ方面へ向かいつつあり。
「おい!下関1号はどの方角へ飛ばしたんだ!?」
ヘルマー中佐は答えた。
「12時方向です。」
最悪なことになった。
これでは派兵も間に合わない。この第1輸送艦隊が全速力で走れば、いや、そんな必要はない。第1艦隊か第2艦隊のどちらかだけを全速力で先行させればいい。そうすれば木造戦艦の艦隊なんてすぐに追いつくし、海の藻屑にするのも簡単だ。
だが、
国会はまだそれを許可していない。
俺は悩んだ。
この事を本国へ報告して、すぐにでも攻撃許可を取り付けるか。または、本国へ報告せず、こっそり木造戦艦8隻を沈めるか。
前者は、まず可能性が低い。
後者は、今後の独断専行を認めることになってしまう。
独断専行はすべて“悪い”とは言わないが、かつての日本陸軍のようにはしたくない。
「くそったれ!最悪だ!」
悪い意味で我が国は優秀すぎる。王政がほとんどのこの世界で生き残っていけるのだろうか?
とにかく即断即決ができない。
「ヘルマー中佐!現状を本国へ打電しろ!最後に派兵決定の催促と、“これ以上遅ければ取り返しのつかない大被害が出る”と俺の名前付きで送れ!!」
「ハッ!」
結局、俺にできることはこのくらいだった。




