アドリミア王国内乱編-5
なかなか更新が難しくなってきました・・・
皆さんは日本海軍の優秀な点をご存じだろうか。
もちろん、さまざまある。
空母の集中運用、酸素魚雷の開発・・・
挙げればきりがない。(もちろん、悪い部分も多くあるが)
その中でも戦後、米軍が驚いたと言われるのが、“二式飛行艇”だ。
川西航空機が完成させた、当時世界最高性能とも言って過言ではない飛行艇だ。
戦後、この二式飛行艇は米軍に引き渡され性能を調査されたが、「戦後10年はこれを超える性能の飛行艇は生まれなかった」と言われるほどすごかった。
特にすごいのが、航続距離だ。
なんと、6000km以上を2トン分の爆弾をつけた状態で飛行できたという。
そして、それが今、目の前にあった。
「第1飛行艇小隊のラファエル・フリード少佐です!」
人獣族、犬耳と犬しっぽがついた男性が俺の目の前で敬礼した。
「ラファエル少佐、どうだ?気分は。」
「最高であります、中将閣下。」
場所は海軍都市。ここには海軍総司令部が移転予定だが、いかんせん工事が遅れている。
だが、新たに作られた“飛行艇区画”はほぼ完成していた。
そこにある“飛行艇用格納庫”から引っ張り出された二式飛行艇は現在、海に浮いた状態で係留されていた。
「気を付けてくれよ。試験飛行だから何があるかわからん。」
「もちろんであります中将閣下。ですが絶対に成功させて見せますよ。」
そう言うとラファエル少佐は意気揚々と二式飛行艇に乗り込んで行った。
今回は二式飛行艇の試験飛行だ。いくら誰かさんの持って来た図面を基に作ったとはいえエンジンなど、一部仕様は異なっている。
万が一に備えて、飛行予定航路上には海防艦と駆逐艦を配備している。
「佐藤、本音はどうなんだ?大丈夫なのか?」
俺は見に来ていた佐藤少将(階級昇格していた)に訊ねた。
「自信無い物は引き渡さないよ。だけど、心配がないかと言われると、有るね。正直。」
「そりゃそうか。信用はしているが、どうしても不安になる。」
二式飛行艇はエンジンを始動させ、ゆっくりと滑水して行く。所定の滑水場所へ行くためだ。空港の滑走路のように、滑水場所が決まっているのだ。
海軍都市沖合にある島の海軍所管の灯台から二式飛行艇へ“滑水よし”の信号が送られる。
二式飛行艇が速度を上げ、離水体制に入る。
「やったぁ!飛んだぞ!」
兵器廠の誰かが叫ぶと同時に歓声が上がった。
俺と佐藤は飛んでいく二式飛行艇を大喜びで陸地から見送った。
俺と佐藤は工事中の海軍総司令部の一室に落ち着いた。
「試験飛行が終わるのが明日、か。」
俺がそう言うと佐藤はうなづいた
「だね。巡航速度は250km/hくらいだと思うし、それで爆弾なしだと7000kmくらい飛べると思うから・・・」
「ざっと28時間。長いな。」
俺は立ち上がった。
「んじゃ、あとは任せた。俺は出港だ。」
「ん、わかった。それじゃ」
俺は桟橋に待機させていた内火艇にのり、重巡“仙崎”へ向かった。
第1輸送艦隊。
兵員輸送艦“大隅”が旗艦なのは変わらない。が、
第1輸送艦隊(“大隅”以下10隻)
第1艦隊(重巡2隻、駆逐艦8隻)
第2艦隊(軽巡1隻、駆逐艦8隻)
えっ?下に書いてある第1艦隊と第2艦隊は何かって?もちろん護衛だよ。第1輸送艦隊の。
「多すぎません?」
「やっぱり?」
重巡“仙崎”艦長、ヘルマー中佐に言われてしまった。
「よくこれで軍需庁から文句言われませんでしたね。」
「まぁ、海軍の全艦隊、全艦艇の指揮権は俺にあるからね。軍需庁ができるのは政治的な連絡と、戦争になったときの大まかな方針を決定するくらいだ。海軍の内部にまでは口出しできないんだよ。」
「なるほど。」
「まぁ、文句は言ってきたから“第1輸送艦隊は彩海島に寄港した後、戦場一歩手前のアドリミア王国にも行くんだぞ!お前ら、護衛が不十分で艦が沈んだり死人がでたら責任とれるのか!”って脅してやった。」
「せめてそれをにやけずに言ったらどうですか?谷岡中将。」
「ありゃ、にやけてた?」
いや~、軍需庁のやつらに思いっきりガツンと言ってやれたのがうれしくて、どうしてもにやけてしまう。
「んじゃ、何かあったら呼んでや。」
俺はそう言って露天艦橋から中へ入ろうとした。
「あれ?出港命令は・・・」
ヘルマー中佐が首をかしげる。
「今回、名目上は第1輸送艦隊なんだよ。第1艦隊も第2艦隊もその護衛。まぁ、本来なら第1輸送艦隊の中に護衛の駆逐艦も入るはずなんだけど。
要するに、旗艦は“大隅”。俺は艦隊総司令だけど、今は第1艦隊司令に過ぎないのさ。」
少しして通信兵が走ってきた。
「旗艦“大隅”より連絡!出港命令です!」
ヘルマー中佐は叫んだ。
「出港する。進路0-3-0。機関始動!」
こうして法律の網をくぐるような艦隊が、
今、出港した。




