アドリミア王国内乱編-3
“日の丸ラジオ、9時のニュースです。
まずは国会のニュースです。本日、国会にアドリミア王国軍事介入の参考人として、アドリミア王国第2皇女が招致されました。
我が番組ではこの参考人招致前の第2皇女様にインタビューすることができました。
カミラ記者の取材です”
俺はラジオを切った。
軍の寮の一室。
10畳ほどのスペース。
「いい加減家でも買うかな・・・」
そう思いながら読書をしようとした。
ジリリリリリリリリリン!ジリリリリリリリリリン!
黒電話が鳴る。
「はいもしもし?」
“谷岡中将、すぐに来い!”
斎間大将は俺を寝かせてくれないそうだ。
軍服を着て桜鎮守府の斎間大将の部屋へ行った。
「何事でしょうか?」
「アドリミア派遣艦隊から至急電(至急の電報)だ。」
渡された紙には殴り書きのような字でこう書いてあった。
“センキョウヒッパク
シキュウゾウエン マタハ ハヘイヲモトム”
戦況ひっ迫
至急増援又は派兵を求む、か・・・。
「それと、今日のラジオと国会、お前が仕組んだな?」
「あ、ばれました?」
「分かったのは俺ぐらいだ。あまり軍人が政治にかかわると色々面倒だから、注意してやれよ。」
「分かりました。」
「それで、派兵なんだが。」
「はい。」
緊張の瞬間だ。
「国会での派兵決定は確実だ。だが、いくら早くても採決は2週間後になりそうだ。」
「はぁ!?」
「たとえ決まりそうでも“十分な議論”をしなければならないのだよ。国会は。」
「ですが!それでは“至急の増援”なんて無理ですよ!片道2週間もかかるのに!」
「そうだ。だが谷岡君、君は的確な判断をしてくれた。」
「?」
「アドリミア派遣艦隊だ。」
俺はどういうことかよくわからなかった。
「国防軍は、防衛戦闘以外の自発的戦闘行為を禁じられている。
他にも、他国へ派兵するなんてことも、もちろんせめても首相の許可がないとできない。」
「ええ。そうです。」
「ただ、この時代において、他国の軍港に軍艦がいることは珍しい事じゃない。」
たしかにそうだった。
我が国では少ないが、帆船に限らず船と言うのは遠くまで行こうと思うとどうしても食料などを消費してしまう。これは軍艦でも同じだ。
我が軍のように補給艦を連れて行くならいいが、そうでない場合は近くの港によって食料を購入する。
つまり、軍艦が他国の港へ“拒まれない限り”入港するのはこれといって問題ない。
俺が勝手にアドリミアへ艦隊を残してきたのも問題になりそうになったが、これで切り抜けたらしい。
「だが、我が国防海軍では他国の港に入港しても補給できない物がある。」
「石油ですか?」
「そうだ。
帆船が主流のこの世界で、軍艦に使う重油を港近くに売っていて、さらに軍艦が満足するような量を用意できるところなんてあるわけがない。」
そう、重油を使った船は我が国の専売特許だ。
俺は段々斎間大将が何をしたいのか見えてきた。
「もしかして、“重油運搬”とその護衛、と言う名目で軍艦を出すのですか?」
「そう言うことだ。これは海軍総司令として艦隊総司令に命じる。すぐに艦の編成に書かれ」
「分かりました!」
俺は桜鎮守府の自分の部屋に帰った。
やはり、
「こりゃ寝れそうにないな。」
すぐに補給艦と補給物資の手配に走る。
「第1輸送艦隊はすぐに再編成だ!今動ける補給艦は何隻か、すぐに調べて報告に来い!」
「第2艦隊出港用意!重巡“仙崎”と“下関”もだ!んで他の艦艇の状態をすべて調べて報告に来い!」
「佐藤!お前のところに員数外の武器があるだろ!それをすぐに寄越せ!緊急だ!」
とにかく電話をかけまくり、人員をかき集めに走る。
「リサ中尉!悪いがすぐに出動用意だ!」
俺は第1陸戦師団詰所へ駆け込んだ。
「あ、あれ・・・」
なんだか間が悪かったのか、大量の陸戦隊員がリサ中尉に詰め寄っている最中だった。
「ちゅ、中将閣下だ!」
「艦隊総司令だ!」
今度は大量の陸戦隊員が俺に詰め寄ってきた。
「な、なんだこりゃ!説明しろぉ!リサ中尉!」
「ハッ!全員戦場近くにあるアドリミアに置いてきたエルネスト少佐が不安だと。それで応援に自分らを出せと詰め寄ってきた次第で・・・」
「な、なるほど・・・」
俺は詰め寄ってくる陸戦隊員に大声で叫んだ。
「気を付けー!!」
一瞬きょとんとした陸戦隊員だが、すぐに気を付けをした。
「お前らは自分らのかつての教官を信用していないのか!?」
そう叫ぶと、陸戦隊員たちは下を向いた。
「・・・」
「上官を心配するのはいい事だが、信用することも大事だ。」
陸戦隊員達はゆっくり敬礼した。
「だが、こんなこと言ったばかりだが・・・
リサ中尉!第1海軍陸戦師団から1個大隊を選抜しろ!すぐに出動用意!」
「ハッ!」
「あ、それと忘れてた。
第1海軍陸戦師団リサ・バスケス、本日現時刻をもって大尉に特進!編成した1個大隊の指揮官に任命する!」
「え、えええーーー!!!」
「リサ大尉、悪いが驚いている暇はないぞ!すぐに出動準備!」
「りょ、了解です!」




