アドリミア王国内乱編-1
一応章を変えましたが、ほぼ外交編の続きです。
日本民主主義国歴12年11月15日。
連合艦隊はフィアンカの港を出港した。
「良かったんですか?」
ヘルマー中佐が隣で言った。
「何が?」
「エヴェリーナ少将ですよ。告白されたんでしょう?」
「んな!?んなわけにぇえじゃろうが!」
自分でも恥ずかしいぐらいに言葉が崩壊している。
「やっぱりこれは本当なんですか。若い兵が噂していたんで緘口令を敷いてきましたよ。」
「・・・感謝する。」
そりゃそうだよな~、偶然会議室の前を通っていたりしたら聞こえるよな~。
「それで、いいんですか?エヴェリーナ少将置いてきて。」
「軍務に私情ははさまないよ。他にあんな大艦隊を任せられる将校があの場にいたか?しかもいざとなったら大使連れて逃げ出さなきゃならんのだぞ。
それともヘルマー中佐、この任務やりたかった?」
「遠慮します。」
きっぱり断りやがった。
「ま、いづれは君もこういう難しい任務をやってもらうときが来るがね。」
艦隊は一路、日本民主主義国を目指した。
12年11月30日
日本民主主義国
首都 桜市
「お、歓迎ムードだねぇ~」
俺は重巡“仙崎”の露天艦橋から桜市を見ながら言った。
「谷岡中将、非常に申しあげにくいのですが・・・」
ヘルマー中佐の指さしたほうを見ると、
“ようこそ!アドリミア王国 ピーア第2皇女様!”
「ねぇ、僕泣いていい?」
海軍が裏方すぎるだろ!
だが、現実も裏方だった。
桜市の中心部沿岸にある一番メインの港、“桜港”から中心部へ続く幹線は全面封鎖され、桜市警が警備に出て、陸軍の儀仗兵が並ぶ中をピーア第2皇女様は迎えの車で通って行った。
一方で俺は港に入港した途端やってきた海軍司令部員によって車に乗せられ、第2皇女様でにぎわう通りを避けるように軍基地へ連行された。
海軍総司令部
これを改名して、今は“日本民主主義国海軍桜鎮守府”となっていた。
何でも近々海軍の本拠地は例の“海軍都市”へ移すそうだ。そのため一足早く解明になったのだとか。
だがまぁ、建物も変わってないし、中にいる人もあまり変わっていない。
「さてと、谷岡君。色々と説明してもらおうか。」
斎間大将が言った。
「すぐに報告書を上げるつもりだったんですが、取りに行く暇もなく司令部員に引っ張ってこられたんですけど・・・」
連れて来られたのはいつもの斎間大将の部屋だ。
だがそこには、陸軍や空軍のお偉いさんまでいる。
「とりあえずまずは、アドリミア王国の敵勢力、および味方勢力!これを報告せよ!」
なんで口頭で・・・という文句はとても言える雰囲気ではないので飲み込んでおく。
「ハッ。
アドリミア王国敵勢力、第1皇子アルトゥル・アガフォーノヴィチ・アバスカル・アドリミア以下アドリミア王国陸軍・海軍。陸軍兵力20万。海軍、海龍艦5、木造戦艦20!」
この程度は覚えていた。
だた、これを聞いて反応は二つに分かれた。
安堵する海軍と、動揺する陸軍。
そんな中手が上がった。
「失礼、空軍司令部付のマリアン・ダンヴァーズ中佐です。敵勢力に空軍は?航空戦力は?」
「おそらく皆無に等しいかと。空軍は味方勢力です。そのため、有ったとしても微々たるものかと。」
「ありがとうございます」
その後、色々と質問された。
帰国中のおよそ2週間、報告書をまとめていただけあって意外と覚えていた。
そして、陸空軍のお偉いさんたちは足早に去っていった。
「いったい何なんです?こんな緊急で連れてこられて、さらに質問攻めにされて、それが終われば猛スピードで帰って行きましたが。」
斎間大将はワープロ専用機を打ちながら答えた。
「すまんな。首相官邸から何度も尻たたかれているんだ。」
「はっ?」
「この国は、民主主義国なんだよ。
今議会も世論も、
真っ二つなんだ。」




