外交編-21
すいません。外交編もう少し追加します。
アドリミア王国
東の港町 フィアンカ
「心なしか、こちらの方がパッチよりにぎわっているように見えるな。」
俺は露天艦橋からフィアンカの町を見ながら言った。
「確かに、そうですな。」
ヘルマー中佐が俺の隣で同意した。
埠頭に近づくと、住民がお祭り騒ぎで歓迎していた。
「こりゃすごい。パッチ以上だ。」
「ですなぁ。どちらかといえば、歓迎しているのは我々ではないようですが。」
ヘルマー中佐が指さす方を見ると、アドリミア語でこう書いてあった。
“お帰りなさい!ピーア第2皇女様!”
「なるほど。我々はただの船乗りにすぎないようだ。」
重巡“仙崎”と輸送艦“大隅”はゆっくりと埠頭に接岸した。
「司令、あとでこの港にタグボートを持ってくることを上申します。いい加減タグボートなしで埠頭に接岸するのは神経が持ちません!」
ヘルマー中佐が汗をぬぐいながら言った。
「考えておこう。」
ヘルマー中佐の神経がなくなる前に。
輸送艦“大隅”
「リサ中尉以下、特派臨検隊分派隊、ただいま帰還しました!」
潜入のため軍服ではなく平服(一般人の服)を着たままリサ中尉は敬礼した。
「ご苦労。大変な任務をよくこなしてくれた。ゆっくり休んでくれ」
俺がそう言うと、帰ってきたリサ中尉以下10名は大きなため息をついた。
そうとう緊張していたのだろう。潜入任務に捕虜扱い。なんど命の危機を感じたか。
そう思うと、本当に感謝に絶えない。
「ところで司令。“大隅”の艦橋が少し変わっているような気がするのですが・・・」
あ・・・
「きゃー!私の部屋がー!」
「俺の私物がー!」
「私の私物、全滅!?」
・・・そういえばそうだった。潜入任務だから私物は持って行けない。だから私物の大半は“大隅”に置いて行ったのであろう。そうなると・・・こうなるよな。
「本当にすまん!帰国したら必ず賠償する!」
俺は平謝りだった。
2日ほどフィアンカに滞在した。
12年11月12日
「電探に感有!」
“通信室より艦橋!味方艦隊接近!”
「ついに来たか!」
俺は露天艦橋へ走った。
元々後追い予定だった軽巡2隻“酒田”と“三川”、更にそこに駆逐艦4隻と補給艦2隻をまとめ、“第3艦隊”とした艦隊がやってきたのだ。
ただ、艦隊司令は決まっていない。とりあえず“酒田”艦長が艦隊司令代理となっている。というのも第3艦隊はここで解体予定だからだ。
俺はここで艦隊を再編した。
「軽巡“酒田”“三川”は第1艦隊へ編入!以降、エヴェリーナ少将の麾下に入る。第1艦隊第2駆逐隊は第2艦隊に編入。その代りに第3艦隊第5駆逐隊を第1艦隊へ編入。」
つまりこれにより、第3艦隊は第1艦隊と名前を変え、第1艦隊から4隻の駆逐艦を編入して艦隊司令をエヴェリーナ少将にしたのと変わらない。
「さらにエルネスト少佐には在アドリミア王国大使館付駐在武官の任を言い渡す。数名の兵とともに、大使と大使館を守れ。
第1艦隊は明日より連合艦隊の麾下を外れ、アドリミア派遣艦隊と改名する。アドリミア派遣艦隊には、ここフィアンカの防衛を命ずる!
アドリミア派遣艦隊を残し、連合艦隊は一時本国へ帰還する!全員準備にかかれ!」
「「「「「「ハッ」」」」」」
重巡“仙崎”の会議室から、将校たちが一気に出て行った。
最後まで会議室にいると、いつの間にか俺とエヴェリーナ少将だけになっていた。
「エヴェリーナ少将。すまんな。アドリミア派遣艦隊司令なんて大きな仕事を任せて・・・。」
「いえ。海軍将校として光栄です!」
「そう言ってくれると助かるよ。」
「で、ですが・・・。」
ん?
「こ、個人的にはあなたと一緒に居たいです!」
ふぁ、ふぁい!?
その後エヴェリーナ少将は顔を真っ赤にして、「失礼しました!」と言って出て行った。
・・・え?
かつて、彼女いない歴=年齢だった俺でもここまでされればわかる。
いやいや。
いやいやいやいや!
そんなわけあるか!
俺はデブだし正直顔はよくない。年齢に対して老け顔だ。
その日、俺はなかなか寝付けなかった。




