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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
外交編
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外交編-18

次更新できるのは、当分先かもしれません・・・。

アドリミア王国建国歴321年10月15日

日本民主主義国歴11年10月15日

つまりはほぼ1年前。

アドリミア王国首都“シャウテン”

アドリミア王国初代皇帝 シャウテン・ラ・アドリミアの名前からとられた都市名だそうだ。


もちろん、首都なのでここに国の中心がある。


「異議あり!」

議会堂でハヴェル・クシチュカ公爵が叫んだ。

立派な長い白髭を生やした御年75になるこの人物は、10代前の皇帝の弟の子孫にあたる。そのころから代々クシチュカ家は主に外交で皇帝を支えてきた。


「なぜだハヴェル公爵。“皇帝は代々第1皇子が継ぐ”というのが習わしではないか。例外はあるが、それは皇帝に男子の子孫が生まれなかった場合だけだ。」

ケース・ヴィレムセ公爵が言った。彼もまた、数代前の皇帝の姉の子孫だった。そして、ヴィレムセ家も代々内政の要職につき、皇帝を支えてきた。


クシチュカ家とヴィレムセ家は、アドリミア王国にとって“名門家柄2トップ”であり、アドリミア王国の政治にとっても“2大重鎮”であった。

その2つが対立することは非常に珍しかったので、議会堂に集った貴族たちはざわめいた。


「ハヴェル公爵、理由を申してみよ。」

イリネイ・アレクセーエヴィチ・シゾフ・アドリミア 第15代アドリミア皇帝が訊ねた。

歴史的に見て、2大重鎮が対立することは一切なかったわけではない。その時に仲裁し、決断するのが皇帝の役目だ。


「ハッ。恐れながら、第1皇子 アルトゥル・アガフォーノヴィチ・アバスカル・アドリミア様は皇帝の器ではないかと。」

“貴様!失礼だぞ!”“いくら公爵とはいえ第1皇子を侮辱する気か!”などとヤジが飛んだ。

イリネイ皇帝はそれを手で止めた。

「なら、誰が良いと思う?」

「ハッ、第1皇女 リースベト・ラウラ・リア・アドリミア様がよろしいかと。」

これには議会堂全員、皇帝も含めて驚いた。


この時、皇帝の子孫は3人いた。

第1皇女 リースベト・ラウラ・リア・アドリミアはイリネイ皇帝が、側室の妻との間にできた子で、とにかくおてんば娘で知られていた。たびたび城を抜け出し、どこかへ遊びに出ていた。

これに業を煮やした教育係のケフマン伯爵は、皇帝を説得し、リースベト第1皇女が15歳になったときに軍学校に半強制的に入れた。

どういうわけか軍学校に入った途端に良い成績を連発し、“将来は軍人になるであろう”と貴族も民衆もそう思っていた。現に軍学校卒業後、空軍に入隊している。歴史的にも皇族出身で軍人になった例は多く、これと言った疑問もなかったそうだ。

ところが今回、皇帝候補に浮上したわけである。


第1皇子 アルトゥル・アガフォーノヴィチ・アバスカル・アドリミアは皇帝が正室との間にできた子だ。だが、生まれた順番はリースベト第1皇女より後で、リースベト第1皇女の弟になる。

そして、これまた誰に似たのかかなりの暴れん坊だった。城を抜け出すのは当たり前。時折城の外で騒ぎ起こし、衛兵に連れ帰られたこともあった。

教育係はそうそうに諦め、皇族の教育者は出世のチャンスだというのに辞職願を皇帝に出したほどだ。それ以来アルトゥル第1皇子は好き勝手やって育った。

だが、第1皇女の例でもしやと思った皇帝は、アルトゥル第1皇子も軍学校へ入れられた。だが、自分の地位を笠に着て威張り倒し、いつの間にか親衛隊を作っていた。

とりあえずはそのまま陸軍に入隊している。


第2皇女 ピーア・マリーア・リア・アドリミアは皇帝が第1皇女と同じ側室との間にできた子だ。教育係に任命されたオールブライト子爵は最初、“人生の終わり”と言わんばかりの顔をしたと言う。ところが他の二人とは違い、とてもおとなしい性格だった。

とにかくやさしい性格で、オールブライト子爵はホッと胸をなでおろしたそうだ。

生き物が好きで、元々医者の家系であったオールブライト家の影響もあり、医学の道を歩き始めた。(ただし、ここでいう“医学”とはどちらかと言えば“薬学”と言ったほうが正しい)

非常に人道的であるため、民衆の人気はダントツに高かった。特に流行病の後、皇帝を説得し流行病の原因調査、及びアドリミア王国初の国立病院を立ち上げたことで民衆の心は鷲掴みされたと言ってもよい。それ以来、内政で力を発揮していた。


こうしてみると、目立つのは第2皇女なのだ。とにかく民衆の支持が高い。一方で第1皇子で正式な次期皇帝であると思われる第1皇子は貴族の間では目立つ。

そう、第1皇女の存在は少しかすれているのだ。


「なぜ、そう思う?」

イリネイ皇帝は訊ねた。

「はい。第2皇女様はご立派です。確かに民衆からの支持は非常に高い。これはこの議会にいる者でもよく知っていると思います。

ですが、第2皇女様は優しすぎる。我がクシチュカ家は代々外交を任されてきました。正直、特に外交面においては時に厳しくせねばなりません。」

「なら、第1皇子が適任だ。」

誰かが野次を入れた。

「第1皇子が外交なんぞできるものですか!第1皇子を皇帝にした日には、全方面戦争をやりかねませんぞ!」

この堂々とした皇族批判ともとれる発言は、第1皇子派のヤジを大量生産させる材料には充分だった。


「しずまれい!」

皇帝が大声で叫んだ。

「この件は後日また議会で話し合う!それまで各自、しっかり考えておくように!」



それからおよそ1年、毎度大紛糾する議会は続いた。


ところが、この議会はとんでもない終焉を迎えることとなる。

アドリミア王国建国歴322年10月18日

日本民主主義国歴12年10月18日


皇帝が倒れたのだ。



議会は全会一致で皇帝が“これ以上執政できない”と採択した。

これにより普通なら次期皇帝に執政権が移り、次期皇帝が皇帝となるのだ。


ところが皇帝が予想以上に早く床に伏せたため、次期皇帝は未だ決まっていなかった。

仕方なくハヴェル公爵が折れる形でアルトゥル第1皇子に“暫定的に”執政権が移った。



それからの政治は滅茶苦茶だった。

アルトゥル第1皇子は町へ出て女遊びをし、気に入った娘が居たら無理矢理でも連れ帰って側室にした。政治の大半は貴族に任せっぱなしで、貴族はそれをいいことに好き勝手やり始めた。


ついに、一部の貴族が“反第1皇子派”を立ち上げた。するとアルトゥル第1皇子はいわれもない罪を着せ、時にはそれすらめんどくさかったのか、とにかくその貴族を殺した。


ついにこれに堪忍袋の緒が切れたリースベト第1皇女とハヴェル公爵をはじめとする貴族の一部が反乱を開始した。協力してくれた辺境伯爵が東部の担当だったため、東部へ“視察”名目で移ったのだ。ここを拠点に首都を狙っていた。


そんなところへ来航したのが、我々、日本民主主義国外交使節団(連合艦隊)だったわけだ。


この話をきいた俺はエルネスト少佐に言った。


「な?めんどくさいことになったろ?」





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