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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
外交編
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外交編-16

外交編、まだまだ終わりそうにありません。

日本民主主義国歴12年11月3日。


「やっと動けるようになったか。」

工作艦“島根”による輸送艦“大隅”の応急修理が完了した。

結局あの放送の後すぐに東へ向かおうとしたものの、“大隅”を露天艦橋のまま航行させるわけにもいかず、長い間足止めを食らってしまったのだ。


その間暇なので、駆逐艦に先行偵察に向かわせたり、食糧確保のため駆逐艦で漁をしたりしていた。

そういえば昔、じいちゃんが中型貨物船でカツオを取っていたとか言っていたなぁ・・・。

(※場合によっては犯罪になる可能性もあります。マネをしないでください。)


俺は重巡“仙崎”の露天艦橋から“大隅”を見た。

応急と言うだけあって、壊れる前と形が異なっている。

「前の方がかっこよかったな。」

俺がそう言うと、ヘルマー中佐がタバコを吸いながら言った。

「応急ですし、仕方ないですよ。」

ん?

「ヘルマー中佐、タバコ吸ってたの?」

「いや~、どうにもストレスがたまりましてね・・・。

なんせ“大隅”中破のせいで、第2皇女様はくるわ幹部は集まるわそれで些細な問題が大量発生するわ・・・。

あー!思い出すだけで嫌になる!」

そう言うとヘルマー中佐は鼻から勢いよく煙を吹きだした。


“大隅”中破で問題になったのが、大隅の乗員たちだった。

まず第2皇女様。

“大隅”修理の間、第2皇女様にどこに居てもらうか?

まず考えたのは、第1輸送艦隊のどれか。

だが、“大隅”以外の第1輸送艦隊は、タンカー2隻に物資輸送船1隻。そして工作艦“島根”。工作艦はもってのほかだし、他の3隻はそもそも空き部屋が無かった。

そこで候補に浮上したのが、重巡“仙崎”。

連合艦隊旗艦だし、一応賓客を迎える設備みたいなものはある。主に、越智さんのように自国の役人を運ぶことを想定して作られた個室だ。居心地も悪くない。

よって第2皇女様は重巡“仙崎”に移乗した。


第2に、特別臨検隊だ。

彼らも居所を失った。

一部は第1輸送艦隊の物資輸送艦の貨物室で寝泊まりしてもらった。

それでも入りきらなかった残りは、これまた重巡“仙崎”に移乗している。

第3に、会議室だ。

出港後は、越智さんが“大隅”に滞在しているため、越智さんと相談する場合は“大隅”の会議室を使っていた。それが使えなくなり、重巡“仙崎”の会議室を使うようになった。

第4、というかおまけ的に、越智さんも重巡“仙崎”に移乗している。彼も“大隅”の自室を追い出されたのだ。


こうして考えてみると、重巡“仙崎”はずいぶんと忙しかったことがわかる。そしてその艦長ともなれば、そりゃそうだ。


「すまないな。感謝するよ。」

「そう言われるだけで、“まぁ、やってよかった。”“少しは報われた”と思えるのが軍人のいいところですよ。」

ヘルマー中佐は煙草をもみ消しながらそう言うと、艦内へ戻って行った。



「出港!進路、0-9-0!艦隊陣形は輪陣形だ!ただし、駆逐艦を2隻前方警戒に出せ!」

俺は大声で言った。

「取り舵15!微速前進!輪陣形の先頭に出るぞ!」

ヘルマー中佐も大声で叫ぶ。

「とぉーりかぁーじ!15ぉー!」

「びそぉーく!ぜんしーん!」

久々に動くとあって、乗組員もどこか嬉しそうだ。

「対空警戒を怠るな!電探でむこうさんに見つかる前に見つけろ!」

「ハッ!」

俺もどこか興奮していた。


潮風が気持ちいい。ほんの数日しか停滞していなかったのに、数か月ぶりに潮風を感じたような気がする。


こうして連合艦隊は一路、東を目指した。



12年11月6日

「電探に感有!」

その時はヘルマー中佐が寝ていて、副長代理で俺が艦橋にいた。副長は“大隅”への増援で陸戦隊を指揮しており、重傷だった。命に別条はなかったが、しばらくは安静とのことだ。

人員不足気味の我が海軍では、兼ねている役職が多い。例えばこの重巡“仙崎”の場合、ヘルマー中佐は艦長と船務長を兼ねている。副長は、砲雷長を兼ねていたそうだ。航海長はかねているものはなかったが、副長不在のため航海長と砲雷長を兼ねることになっている。

よって、副長代理は俺に転がってきた。

「方向と数は!?」

俺はすぐに訊ねた。ほぼ、反射的だ。

「数、恐らく3!距離80!」

単機の水上偵察機を距離100kmで探知できた電探だ。やはり、飛龍だと若干探知しにくいのか?

「対空戦闘用意!ただし、許可あるまで絶対に撃つな!」

「対空戦闘よぉーい!」

「配置につけ!」

ジリリリリリリリリリン!キンコンキンコンキンコンキンコン・・・

艦内が一気に騒がしくなった。


少ししてヘルマー中佐が艦橋へ上がってきた。

「谷岡中将、状況は?・・・はぁ・・・はぁ」

ヘルマー中佐は息切れしながら俺に訊ねた。どうやら全速力で走ってきたらしい。

「飛行物体を電探で探知した。一応対空戦闘用意をさせている。以降は任せるよ。」

「ありがとうございます。中将。」


「それじゃ、俺はお出迎えの準備でもしてくるや。」


そう言って俺は艦橋を後にして、前部甲板へ向かった。





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