外交編-14
よし、今度は夜中投稿ではない!
・・・22時ってやっぱり夜中か?
「昨日の“大隅襲撃事件”の詳細をまとめました。」
「お、ありがと。」
重巡“仙崎”の会議室。
リューリ少佐が報告書を持ってきてくれた。
あれから“大隅”は工作艦“島根”の力を借りながら修理中だ。特に艦橋は文字通り“吹っ飛んだ”ので、修理に時間がかかっていた。
報告書に目を通した。
襲撃者は25人。おそらく全員魔法使い。全員死亡確認済み。
持ち物よりアドリミア王国軍の極秘部隊と推測される。だが、アドリミア王国の“政府”や“軍”と結びつける決定的な証拠はない。
襲撃者25人のうち20人はわが軍の攻撃により死亡。5人が艦橋にて自爆。
詳しい報告は、もっと後になるだろう。とりあえずの暫定報告だ。
リューリ少佐が去った後、俺は応接セットにダイブした。
「さて、この後どうするか・・・」
俺は応接セットで寝ながら考えた。
2時間くらい寝たところでドアをノックする音に起こされた。
「どうぞ。」
「失礼します!特別臨検隊隊長の、エルネスト少佐です。」
「何だ。エルネスト少佐か。どうした?」
「先ほどリサ中尉から連絡がありました。」
そう言えばリサ中尉を別働でこっそり上陸させていた。
だが、この現状でどうやって拾って帰ろうか。悩ましいところである。
「んで?内容は?」
「21時にもう一度連絡するので幹部を全員集めておいてほしい、と。」
「それだけか?」
「それだけです。」
なんとも奇妙な通信だ。
「それにしても奇妙ですね。」
エルネスト少佐が言った。
「ああ、確かに奇妙な通信だ。」
「あ、いえ。そちらではなく。」
エルネスト少佐は俺の向かいのソファーに座った。
「アドリミア王国空軍が来ません。」
「空軍?アドリミア王国は空軍を持っているのか?」
「ええ。この世界で一番古い歴史を持つ空軍です。」
俺は驚いてソファーに座りなおした。
「詳しく聞かせてくれ。」
「はい。我々の空軍は飛行機を使用しますが、彼らが使用するのは“飛龍”です。書いてそのまま、空飛ぶ龍です。
龍はドラゴンより小さく、アドリミア王国周辺の地域では昔から飼っていました。そのため空軍が世界に先駆けていち早くできたのです。」
「なるほど。だが飛龍はそんなに飛べるものなのか?すでに陸からは200km近く離れているが・・・」
「飛龍は最大500km飛べます。これはアドリミア王国空軍が実際にやった実測値です。」
「となると、往復250km飛べるわけだ。ギリギリだな。」
「ですが、今までレーダーに探知されましたか?飛龍を。」
そう言われるとそうだ。
出港当初は不調が続いた“仮称 本山電機M-21”電探は、何度か部品交換と調整を行い、今では100km先を飛ぶ水上偵察機でも探知可能となった。これはアドリミア王国に向かう途中でやったので、確かである。
電探に何か探知されれば俺にすぐに報告が来るようになっているし、反応があっても無視するようなバカな海兵は我が海軍にはいない。
仮にあのパッチという港町から飛龍が我々の捜索を目的に飛んだのなら、我が艦隊のレーダーにかかりそうなものだ。
それが、一切ない。
ご自慢の空軍があるはずなのに。
考えられる可能性は二つ。
一つは、飛龍が何らかの理由で電探に引っかからない場合。そもそも電探、つまりはレーダーというのは電波を対象物に向けて発射し、その反射波を測定することにより、対象物までの距離や方向を知るものだ。つまり、飛龍の表面がとてもやわらかいものだった場合、電波を反射しない可能性がある。そうなると、電探には引っかからない。
二つ目に、何らかの理由で飛龍が飛ばせない場合。
もちろん飛んでいないのだから電探には引っかからない。だが、なぜ?
こうしてみると、どうにも奇妙なことが続きすぎているような気がしてきた。
越智さんが言っていた、文書と比べ、アドリミア王国側の態度の豹変。
突然襲われた“大隅”
飛んでこない空軍。
奇妙にほどがある!
「エルネスト少佐。こりゃいよいよわからなくなってきたな。」
「ですね。ドラゴンと戦った時を思い出します。」
「あ~。思い出したくもないよ。あれは最悪だった。」
「悪い事ばかりでもないですがね。おかげで兵の練度は上がりました。」
「確かに。だが味方同士で争っていたんだ。あんな最悪なことが・・・」
あ!
一つ奇妙なことを忘れていた。
アドリミア王国第2皇女様の誘拐騒ぎ。
さらにそれをまるで把握していないような貴族。
「エルネスト少佐ぁ、こりゃぁ・・・
俺らやっぱりめんどくさいことに顔を突っ込んでしまったらしいぞ。」




