外交編-13
またもや夜中更新ですいません。
「き、君は・・・」
外務省の越智さんが言葉にできないような顔で怒鳴った。
「なんてことをしてくれたんだーーーーーー!!!!!!」
“大隅”の艦内スピーカーは各所で断線しているはずなのに、越智さんの声は艦内中に響き渡った。
「君は!海軍軍人だろう!?元は一般人とはいえ、他国の軍艦に向かって砲撃する意味を分かっているのかね!?」
越智さんが怒鳴る。
「そう言われましてもね、あのままだったらこうやって怒鳴られる前に、全員死んでいたかもしれませんよ!?それにあれは威嚇です!」
俺も言い返す。
「だがね君!これで我が国はアドリミア王国に対して友好的でないと取られたらどうする!?」
「それは外交官のあなたの仕事でしょう!?」
「うるさい!!室長も越智さんも黙って!」
エヴェリーナ少将に怒られて、俺も越智さんも黙った。
とにかく、“大隅”艦内を見て回ることにした。
「“大隅”艦長のリューリ・イコマ少佐です。艦内を案内します。」
リューリ艦長とは何度か顔を合わせてはいるが、よくよく考えてみるときちんと紹介されたのは初めてだった。ちなみにリューリ少佐は第1輸送艦隊司令も兼ねている。
「イコマ?君は元日本国人なのか?」
俺は金髪で美人で胸があって完全に日本人離れしている容姿の女性将校に訊ねた。
「いえ、私はこの世界に来た元日本国民の父に15年前に拾われました。養子です。」
「こりゃ失礼。プライバシーを侵害する気は無かったんだ。すまん。」
「別に大したことではありません。」
そんな会話をしながら俺と越智さん、エヴェリーナ少将の3人はリューリ少佐について行った。
通路には弾痕が多くあり、椅子や机の残骸が転がっている。焼け焦げた跡や血しぶきもあった。
「まずは機関室です。現在4機あるエンジンのうち、2機が故障中です。」
「これは・・・魔法?」
エヴェリーナ少将が焼け焦げたエンジンを見ながら言った。
「そのようです。炎を出す魔法を使う・・・つまりは火炎系魔法使いの仕業です。」
「また魔法かよ・・・」
俺はおもわずつぶやいてしまった。
この“魔法”は我々の近代兵器に比べて優っているのか劣っているのか、戦力的にはどう考えればいいのかさっぱり不明なため、扱いに困る代物だ。
「機関長!」
リューリ少佐が叫ぶと、すぐに作業服のおっさんがやってきた。
「本艦機関長の、ラロ・バディジョ中尉です。」
リューリ少佐がビシッと敬礼する中年男性を紹介した。
「ラロ機関長、エンジンは修理できそうか?」
俺は訊ねた。
「できます!ただし、工作艦“島根”から部品を受け取らないと無理ですがね。」
「“島根”から部品が来たとして、何時間でできる?」
「部品が来てから2時間以内で完了させて見せます!なぁ野郎ども!」
「「「「「「「うぉおーー!!」」」」」」
“大隅”機関室はものすごい士気だ。
「ラロ機関長。すごい士気だな。これなら安心して任せられる。」
リューリ少佐が言った。
「ハッ!これで“お嬢”の足を引っ張ったとなれば他の科からからかわれまさぁ!」
「ちょっ!連合艦隊司令がいらっしゃっているのよ!」
顔を真っ赤にしてリューリ少佐がラロ機関長の肩を叩いた。ラロ機関長は「へへへ」とおっさんが子供をからかうような笑い方をして油まみれの作業員たちの中へ戻って行った。
「し、失礼しました!」
赤面したままリューリ少佐が謝罪した。
「いや、別にいいが・・・。“お嬢”?」
「えっと・・・その・・・。私がラロ機関長などの年上の兵を多く従えているのがまるで“お嬢様”みたいだと言われたことがありまして・・・。それ以来“お嬢”と呼ばれることが・・・」
や、やべぇ!面白すぎて笑いそう!
後ろではエヴェリーナ少将が笑いをこらえきれなくなってるし!
越智さんも下を向いて笑いこらえてるし!
どこのヤクザだよ!ほんとに!
「わ、笑わないでください!」
しばし機関室は笑いに包まれた。
だが、次に行ったところでは笑えなかった。
先ほど笑っていた自分を呪いたくなるような光景だった。
医務室。
“大隅”では病院船も兼ねているため、医務室は非常に広い。
その医務室が、患者でいっぱいになっていた。
「負傷者は、何名だ?」
「85名です。主に臨検隊がやられました。他の艦から来た陸戦隊も負傷しています。」
「死者は?」
「25名です。本艦乗組員が15名。臨検隊が8名。他の艦から来た陸戦隊が2名。全員遺体安置室へ移してます。」
「わかった。」
医務室を見回していると、越智さんが驚きの声を上げた。
「ピーア第2皇女様!」
第2皇女様が看護師の格好をしていたのだ。
「いったい何を・・・」
第2皇女様は答えた。
「私も何かしたかったのです。」
白いはずの看護師服は、赤い斑点が大量についていた。
その後も艦を見て回ったが、どこもひどいものだった。
弾痕
血痕
破壊
そして驚いたのが、艦橋だった。
「なんですかこれ!?」
俺よりも先に驚いたのは、エヴェリーナ少将だった。
艦橋は、屋根が無くなって露天艦橋になっていた。
「ここが一番激しかったです。侵入者もこの操舵輪を見て、ここが船の操作場所とわかったのでしょう。侵入者25名のうち5名は最後にここに立て籠もりました。」
“この操舵輪”はすでに元あった場所から外れ、床に転がっていた。さらに言えば、半分ほど無くなっている。
リューリ少佐は続けた。
「そして、火炎系魔法使いが、自爆しました。それで屋根が吹き飛んで、ご覧の有様です。無線アンテナが倒れてこなかったのは、不幸中の幸いでしょうか。」
「じゃあ今は操舵は?」
越智さんが訊ねる。
「機関室の近くに、人力操舵用の予備があります。そこで行っています。」
侵入者25名に対してこの被害。
85名負傷25名死亡。
この戦い、勝ったとは
とても言える気にはならなかった。




