外交編-12
すっかり秋らしくなりました。
今年は寒くなるんですかねぇ・・・
「海龍艦、衝突コースです!」
見張り員が叫ぶ。
「投光機照射!本艦がここにあるのをアピールしろ!」
ヘルマー中佐が指示した。
“鋼鉄艦に告げるー!なぜ出港するのかー!?港へ戻れー!”
外から大声が聞こえた。
「なんだ!?あれ地声か!?」
俺は驚いて外を見た。
「いや、恐らく魔法でしょう。」
ヘルマー中佐が言った。
「また魔法かよ・・・」
いつぞや魔性動物とかいうのに襲われたことがあったような・・・
「我が国ではいませんが、どこの国も数名は魔法使いを雇い入れているものです。ましてや5隻しかいない海龍艦ともなれば・・・」
「虎の子軍艦に虎の子魔導士が乗っていてもおかしくないってか。」
「魔導士とは限りませんがね。」
「ほへ?」
「魔法使いと魔導士は別物ですよ。魔法使いは魔法を使う者全員を指しますが、魔導士は魔術師協会で修行する魔術師のタマゴのことです。」
「ほえ~」
って今はそれはどうでもいい。
俺はマイクを艦外スピーカーに繋いだ。
「こちらは日本民主主義国国防海軍連合艦隊司令の谷岡だ!我が艦隊は襲撃を受けている!そのための緊急出港だ!
貴艦に問う!これはアドリミア王国軍の攻撃か否か!?」
「思い切ったことを言いますね。」
ヘルマー中佐が言った。
「ヘルマー中佐、主砲照準。威嚇射撃用意だ。」
「りょ、了解!主砲射撃用意!目標、正面海龍艦!少しずらせ、威嚇だ!」
海龍艦は黙ったまま、進路を妨害しようとしてきた。これ以上進まれると、重巡“仙崎”だけでなく輸送艦“大隅”も外洋に出れなくなる。
俺はもう一回問いかけた。
「海龍艦に問う!貴艦に戦闘の意思はあるのか!?
戦闘の意思なき場合には、すみやかに進路を空けられたし!
繰り返す!すみやかに進路を空けられたし!」
それから30秒待った。
「これ以上進路をふさがれると、邪魔ですな。うろうろされると本艦はまだしも“大隅”が出れなくなる可能性が・・・」
重巡“仙崎”の航海長が進言した。
「航海長。このあたりの水深データはあるのか?」
ヘルマー中佐が訊ねる。
「かなりおおざっぱなものなら。海龍艦を避けようと思えば避けれますが、本艦も“大隅”も水深がギリギリのところを通ることになります。」
「と、なると・・・」
「ええ、この一番商船が多く通る航路を通るのが一番安全です。それには今すぐ海龍艦の足を止めないと。」
「・・・司令!」
ヘルマー中佐が俺を見た。
「ヘルマー中佐、威嚇射撃を行え。海龍の目の前に主砲を撃ちこめ。」
「ハッ!」
1番砲塔と2番砲塔がまわり、照準を定める。
「照準良し!」
受話器を持ったまま兵が叫んだ。
「撃て!」
ヘルマー中佐が叫んだ。
それから一瞬間をおいて、轟音。
海龍艦の目の前で複数の水柱がたった。
「今のは威嚇である!これ以上進路を妨害する場合は遠慮なく排除させてもらう!」
俺はマイクに向かって思いっきり叫んだ。
「司令、聞こえてないと思いますよ。」
「?どういうことだ?」
「海龍艦を見たらわかるかと・・・」
露天艦橋へ出ると、海龍艦は大パニックだった。
正確には“海龍が”大パニックだった。
砲撃に驚いて暴れまわっているため、それにつられて海龍にひかれている軍艦も揺れ、収拾がつかなくなっている。
「今だ!今の間に行くぞ!“大隅”に全力でついてくるように伝えろ!」
「はっ!」
こうして連合艦隊は、違う意味でにぎやかに出港した。




