外交編-11
今週末くらいから、しばらく更新できない可能性が高いです。
ご了承ください。
ドォン!
まるで砲弾をくらったように大隅の上部構造物から火が噴きだした。
「いったいどうなっている!?」
重巡“仙崎”から臨時編成の陸戦隊を増援に送り、各駆逐艦からも内火艇で陸戦隊を送った。
重巡“仙崎”は緊急出港し、兵員輸送艦“大隅”を港から少し離れたところで待っていた。
「これ以上破壊工作員を乗せないようにできれば“大隅”を出港させたいが・・・。」
「動きませんな・・・」
俺は露天艦橋から双眼鏡でずっと大隅を見ていた。
「司令、万一の場合は・・・」
「今それを言うな、ヘルマー中佐。」
万一の場合は。
俺の判断だ。
艦隊総司令。
連合艦隊司令。
国防海軍中将。
重い肩書だ。
現在、兵員輸送艦“大隅”には、“大隅”艦長以下50名の海兵、エルネスト少佐以下特別臨検隊(リサ中尉以下20名欠)、各艦から派遣した増援の陸戦隊およそ180名。未だアドリミア王国に引き渡していない救助者ざっと100名。
合計300名以上が乗っている。
だが、軍艦を奪われるなんて言うのは論外だ。
乗せている車両は他の国にはない“兵器”だ。盗まれるわけにはいかない。
“大隅”自体そうだ。この世界で海龍なしの鋼鉄艦は激レアものだ。
これが他国にわたり、それをもとに開発された兵器で我が国が攻められたのではたまったものではない。
つまり、
万が一には。
雷撃処分。
乗組員300名以上はほとんど死に絶え、“大隅”が奪われたとなったときには俺が命令しなければならないことだった。
やはり、重責は
つらい。
「“大隅”機関始動!」
見張り員が大声で叫んだ。
あわてて双眼鏡を覗き込むと、煙突から黒煙がもくもく上がっている。
「いかり巻き上げています!」
ヘルマー中佐が興奮して叫んだ。
“大隅”の投光機が点滅した。
「“大隅”より発光信号!
ゾクタイホ。キカンブジナルモヒガイジンダイ。シュウリヨウ。
賊逮捕。機関無事なるも被害甚大。修理要!です!」
信号兵が発光信号をすぐに翻訳する。いつのまにこんな優秀な兵が育っていたのであろうか。
「“大隅”へ返信!
我に続け。だ!
連合艦隊全艦に連絡!
外洋へ脱出せよ!我に続け!
第1輸送艦隊工作艦“島根”に連絡!“大隅”の修理を準備させとけ。」
「りょ、了解!」
「あ!それと!」
俺は信号兵を呼び止めてメモ用紙を渡した。
「長距離モールスで本国の斎間大将宛てにこれを打っておいてくれ。」
「ハッ!」
全速力を出したいが、どうも“大隅”の速力が遅い。
まさか、機関までやられたか?
「前方、1時の方向!海龍艦です!」
見張り員が叫ぶ。
「無視だ!振り切れ!外洋に出る!」
俺はそう指示した。
だが、
「無理です!“大隅”の速力が上がりません!」
重巡“仙崎”を追いかける輸送艦“大隅”は未だノロノロ運転だ。あれでは海龍艦を振り切れないだろう。
「進路変針、面舵、0-3-0!海龍艦に体当たりしてでも“大隅”の進路を開け!」
「えっ!ハッ!お、面舵!0-3-0!」
操舵手が戸惑いながら舵を取る。
進路0-3-0。つまり、北を0度=0-0-0として時計回りに30度。
つまりは1時の方向。
俺は、重巡“仙崎”を海龍艦衝突コースに乗せた。
「司令!エヴェリーナ少将から通信です!」
通信士が受話器を持ったまま言った。
「今出る。」
俺は受話器を受け取った。
“室長!いったいどういう状況なんですか!?”
「わからん!とにかくは外洋脱出が最優先だ!第1艦隊は重巡“仙崎”と輸送艦“大隅”の外洋脱出を支援しろ!話はその後だ!」
“了解!”
すぐに第2艦隊に繋いだ。
「こちら谷岡中将だ!ペートルス中佐につなげ!」
少ししてペートルス中佐が出た。
“ペートルスです!何ですか?室長。”
「第2艦隊に命令する!“大隅”以外の第1輸送艦隊を護衛して外洋へ脱出しろ!」
“了解です!
・・・それで室長。海龍艦の妨害があった場合は?”
「もしも攻撃が少しでもあった場合は、反撃を許可する!」
“了解!”
こうして我々日本民主主義国国防海軍連合艦隊は最初の寄港地から逃げるように出港した。




