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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
外交編
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外交編-7

ちなみに、前話で出てきた艦内の非常事態を知らせるベルの音、谷岡中将のたっての希望で電車のATSの音になってます。

海賊によって叩き起こされた俺は、再び寝床へ戻った。

今度は軍服を脱いで、寝間着に着替え、ベッドに入ってさて寝ようとした瞬間だった。

「司令!大隅より緊急通信です!」

俺は人生でいちばん不機嫌な顔になった。


まさか寝間着のまま行くわけにはいかず、再び軍服に着替える。

めんどくさ~。

俺がいちばん嫌うのが、睡眠妨害だ。

特に寝ようとしたところを起こされるのは、とても気分が悪い。


艦橋よりも通信室が近かったので通信室に行った。

この通信室は、艦内の電話交換局みたいなところだ。艦内電話と艦外通信をつなぐのもここだ。これの簡易版が、艦橋にもある。まぁ、艦橋にある簡易版は通信室が使えなくなった時の予備みたいなものだ。

ただし、長距離通信のモールス信号を打つ場合にはこの通信室でしかできない。これが通信室でしかできない唯一のこととも言っていい。

「はい、谷岡ぁ!」

俺は受話器を取るとぶっきらぼうに言った。

“お、す、すいません。特別臨検隊のエルネストです。”

「んあ~、エルネスト大尉か。どした?」

“エルネスト少佐です!”

「すまんすまん、“エルネスト大尉”と呼びなれていてな・・・」

“そんな冗談かましている場合じゃないんですよ!すぐに来てください!”


ここまで怒られながら言われるのだから、相当な大事なのだろう。

仕方なく再び艦隊速度を落とし、俺は内火艇で輸送艦“大隅”に向かった。

輸送艦“大隅”は一見すると大型船舶に見えるが、実はしっかり装甲もついた兵員輸送艦兼病院船である。武装も申し訳程度にはついているが、そこまで強くはない。当たり前だが。

「こちらです!」

タラップまで迎えに来ていたエルネスト少佐に連れられて、艦内へ入る。艦内は上部構造物が兵員室、下部が貨物室になっている。貨物室と言っても、ほとんどは車両を積んでいるのだが。

兵員室をいくつか抜け、たどり着いたのは大食堂だった。

基本的に海軍の兵員輸送艦は

“兵1個大隊(=500~600名)とその装備を輸送できる構造とする”

となっている。つまり、この大食堂も一度に100名くらいが食事できるようになっているのだろう。


そんなことはどうでもいい。


その大食堂の調理場に近い席で、外務省の越智さんが椅子に座った誰かに話していた。

「あ、来ましたな。こちらが谷岡中将です。」

外務省の越智さんが、アドリミア王国語を話していたことに驚いた。

一応出港前に学んではいたが、未だ完璧と言うレベルには達していなかった。

ただ、話すのは問題ない。読むのも問題はない。問題あるのは、“書く”だ。文法が難しくてろくに書けた物ではない。

とにかくは、頭をアドリミア王国語を使うように切り替えた。

「日本民主主義国国防海軍、連合艦隊司令の谷岡中将です。」

見ると、椅子に座っているのは女性だった。恐らくあの海賊船に乗っていたのだろう。首に“海軍タオル”がまいてある。

(※海軍タオルとは・・・タオルに日本民主主義国国防海軍マークを入れた、海軍限定のタオル。基地や軍艦の売店で買える。400円。)


女性はスッと立ち上がった。


「アドリミア王国第2皇女、ピーア・マリーア・リア・アドリミアと申します。この度は助けていただき、ありがとうございます。」


“あ~、めんどくさいことになった~(泣)”

という海軍都市以来の感情を0.3秒で押し殺した。


後ろから越智さんがつぶやく声がした。

(俺の時は立って挨拶なんてしなかったぞ・・・)

ちょ、越智さん!表に出てますよ!


「それにお着替えまで貸していただいて・・・。なんとお礼申し上げてよいか・・・」

「いえいえ。ご無事で何よりでした。」

“エヴェリーナ少将の助言が無ければそのまま素通りする気満々だった俺が言うのも何だが。”

というのは口に出さずに握りつぶす。

ピーア・マリーア・リア・アドリミア第2皇女は、海軍の女性用制服を着ていた。あとで聞いたが、エルネスト少佐がリサ中尉からぶんどってきたらしい。

まぁこういっては何だが、皇女様のお胸がこう・・・苦しそうなんだが。

リサ中尉って、あれだもんな・・・。これ以上は触れないでおこう・・・。


「それで、我々は現在アドリミア王国へ向かっている途中です。不都合が無ければこのままアドリミア王国へ向かい、そこで皇女様をアドリミア王国へ引き渡そうと思うのですが、いかがでしょう?」

「ありがとう。感謝します。」

他には・・・。

一応皇族なので、失礼のないようにしないと・・・。


そこで思いついたのが、“誰かお世話係をつけないと”

なるべく不便をかけないようにするためにも、それは必要だ。

だが、誰をつけるか?


まず浮かんだのが、エルネスト少佐。

いや、同性の方がいいだろう。ということで却下。

ならば、リサ中尉。

だが、特別臨検隊をアドリミア王国の人に見られるのは少し都合が悪い。

アドリミア王国と交渉決裂した時に、越智さん救出作戦が隠密行動の場合がある。なるべく顔出しをしたくない。


ふと振り返ると、こんな緊急で飛び出したのに嫌な顔一つせずについてきているメイドさんがいた。

「ノエルさん!」

「は、はい!?」

適任発見!


と、いうことでノエルさんをピーア・マリーア・リア・アドリミア第2皇女付にして、“大隅”の1室を第2皇女様専用とした。


それにしても、名前長いなぁ・・・。




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