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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
外交編
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外交編-6

最近、護衛艦の写真を撮ろうと思うのですが、もちろんのこと”いつどこに”現れるのか不明なため、どうしようか悩み中です。

港にいる奴じゃなくて、航行中のが撮りたいんだよなぁ~

第1輸送艦隊を中心にして、輪陣形で艦隊は進んでいく。


日本民主主義国沖合は、瀬戸内海のような島が多くある海域がしばらく続く。

我が国とアドリミア王国とは海上貿易する程度の付き合いはあるため、この間には商船が多い(といっても商船は皆木造帆船だが)。


連合艦隊はノロノロと進んでいく木造帆船を次々追いぬいていく。木造帆船の反応は様々だった。

一番多かったのが、手を振るもの。これには見張り員が笑顔で手を振り返していた。

二番目に、国際信号旗で質問してくるもの。

我が国に寄港するすべての船舶には国際信号旗を学び、装備するように海軍が指導しておいた。それを使っているのだ。

だが、軍がそうそう目的を明かすわけがない。

“軍事機密だ”が大半の答えであった。

三番目に、我が艦隊を見てあわてて進路を開けた結果、座礁してしまったおバカな商船。

そのままにしておくのもかわいそうなので、駆逐艦を2隻残して救助に当たらせた。艦隊も全速力で航行しているわけではないので駆逐艦はしばらくしたら戻ってきた。



そして四番目が・・・


ジリリリリリリリリリン!キンコンキンコンキンコンキンコン・・・

“戦闘配置!総員起床!戦闘配置につけ!”

俺も驚いて飛び起きた。軍服を着たまま寝ていたので、そのまま艦橋に駆け上がる。

「ヘルマー中佐!何事だ!」

俺は艦長のヘルマー・ロホス中佐を呼んだ。

「申し訳ありません司令。海賊が出ました。」

「海賊?」

どこの世界にもいるものだな。海賊と言うのは。


艦橋から外を見ると、投光機つまりはサーチライトに照らされた骸骨マーク。

やる気満々で上甲板に大集合している男たち。

明らかに、海賊だった。

「司令、攻撃してよろしいですか?」

「まぁ待て。ヘルマー中佐。おぜん立てをしなければならないだろう?」

もしも遊び半分で海賊船ごっこをしている商船でした~、なんて言われたら面倒だ。

・・・ないとは思うけど。


艦橋にあるマイクを艦外スピーカーに繋ぐ。

「こちらは、日本民主主義国国防海軍である!骸骨マークを掲げた船舶へ告げる!

敵対する意思がない場合はすぐに帆をたため!」


ボォン!

お答えは、ご丁寧なことに砲撃でいただいた。


俺はマイクを艦隊全艦に繋いだ。

「艦隊司令より連合艦隊全艦に告げる。11時方向にいる骸骨を掲げた木造船舶は、敵とみなす。攻撃を許可する。砲雷撃戦用意!」

さて、この後どうなったかは・・・言うまでもないだろう。


某海賊映画の同じくらいの技術水準の大砲で撃ってきた。

砲弾は丸く、初速・・・どころか砲弾の速度自体が遅い。

ただ、命中した時の音はデカかった。


ボォン!・・・グワァァン!

「損害報告!」

「・・・無し!ただし転落防止柵支柱2本損壊!」

「あとで直すのめんどくさいなぁ~」

ヘルマー中佐と海兵のやり取りを聞いて、艦橋は笑っていた。


ドォン!

今度はこちらが砲撃した。

距離が近いこともあって初段命中。

ただし、穴が開いただけだ。


「艦長、弾を徹甲弾じゃなくて榴弾にしろ。徹甲弾じゃ貫通するだけだ。」

俺はヘルマー中佐に言った。

どういうことか説明すると、徹甲弾は敵艦に命中した後、先がとがっているためそのまま艦内部へ突入。そこで爆発するように信管には“衝撃を受けてから○秒後に爆発”というように設定してある。

一方で榴弾は主に“対地攻撃”つまりは海から陸を攻撃するときに使うもので、信管には“衝撃を受けたらすぐ爆発”という設定にしてある。

つまり、徹甲弾では木造船を突き抜けた後、爆発するのだ。


ただ、すでに20.3cm主砲2基、つまり2連装×2、4発の20.3cm砲弾をくらって、駆逐艦3隻から複数の12.7cm砲弾か10.0cm砲弾をくらった海賊船は、満身創痍だった。


「必要あります?」

ヘルマー中佐が俺に訊ねた。

「やっぱいいや。」

俺はマイクを取って叫んだ。

「砲撃中止!」


穴だらけの木造帆船の海賊船は、もう長くは持たないだろう。

「第1艦隊司令エヴェリーナ少将からです!」

信号兵が受話器をもって叫んだ。艦橋の一角には受話器が大集合した区画がある。それはスイッチ操作によって艦内どこでも、場合によっては同じ艦隊の艦にもつながるようになっていた。

艦隊内電話はラジオとあまり仕組みは変わらない。よってラジオの何倍も大量に艦内に真空管を積み込める軍艦では結構はっきりとつながる。聞こえにくいことは今のところない。


「何だ?エヴェリーナ少将」

俺は受話器(というか電話?)を受け取り、通信に出た。

“我が艦隊から乗員の救助をさせたいのですが”

「海賊をか?」

“ですが、助けないというのも・・・”

う~ん、我が国の道徳教育の賜物と言うべきか、弊害と言うべきか・・・

少し優しすぎるような気がする・・・

「わかった。好きにしろ。ただし、少しでも抵抗する者はすぐに射殺しろ。収容は、第1輸送艦隊旗艦の“大隅”だ。特別臨検隊に引き渡せ。“大隅”は兵員輸送艦だから捕虜収容施設がある。“大隅”には俺が連絡しておく。」

“ありがとうございます。”

一旦受話器を置いて、艦隊全艦に繋ぐ。

「連合艦隊全艦へ、艦隊速度を落とせ。救助活動を行う。艦隊速力、3ノット。」


海賊たちは、予想より大人しく内火艇に引き上げられていた。

「ヘルマー中佐、なんだか大人しすぎないか?俺はもっと海賊が暴れると思っていたんだが・・・」

「そうですね・・・。」

その時、見張り員が走りこんできた。

「失礼します!漂流者収容中の内火艇より発行信号です!」

そう言ってメモ用紙を渡された。


“発、駆逐艦赤崎2号内火艇

宛、旗艦重巡仙崎

漂流者の大半は、奴隷の模様。複数の証言有”


俺がいまいち状況を飲み込めずにいると、ヘルマー中佐が「なるほど」とつぶやいた。

「どういうことです?」

俺はヘルマー中佐に訊ねた。

「どうやら我々が沈めた船は、海賊船で間違いないようですな。」

「と、いうと?」

「海賊船には常に奴隷が積んであるもんなんです。寄った港で奴隷を売ってお金にする。それまでは海賊船で船員として働かせる。海賊にとって奴隷は“働く世界共通通貨”なんですよ。我が国のように奴隷制度を禁止している国は、世界でも数えるほどしかないですからね。」

「しかし、多くないか?」

「こういう時、奴隷のふりをしていれば海賊だったとしても命だけは助かるかもしれませんからね。」

「なりほど。」

「または、時折海賊が奴隷商売に手を出していると聞いたこともあります。それかもしれませんね。

ただ・・・」

「ただ?」


「奴隷に厄介なのが紛れてなければいいですけどねぇ・・・」



このヘルマー中佐の言葉は、



よりによって的中しやがった。



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