海軍都市編-16
やっと海軍都市編に戻れそうです!
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俺は、海軍司令部の自分の部屋で、何もしていなかった。
時折、艦隊総司令としての書類が回ってくるが、下が優秀になったのでほとんどハンコを押すだけになっている。
机の上には、ハンコやペンといった事務用品以外にも、電話が二つ乗っている。
一つが内線電話。軍内の内線だ。
もう一つが外線電話。まぁ、言わずもがなだ。
一般人の友達が少ない俺は・・・なんか悲しくなってきた・・・。
気を取り直して、一般人の友達が少ない俺は、外線電話を使うことはまずない。
一時期ドックとの連絡に頻繁に使っていたが、今は担当者がいるため俺の担当ではなくなっている。俺は、その関連書類に目を通すくらいだ。
1週間の休暇なんて、陸戦隊員の慰労であっという間に終わってしまった。
特別手当も出たが、これまた陸戦隊員の慰労ですべて使った。
ドタバタしつつも俺も無茶苦茶なフォローが役立ったようで、陸戦隊員たちのほとんどは職務に復帰している。
もちろん、俺だけの功績ではない。
あるものは家族に支えられ、あるものは親に支えられ、あるものは恋人に支えられた。
俺のもとに「お世話になりました!明日より職務に復帰します!」と何人もの元気になった陸戦隊員があいさつに来た。
その時ふと、自分を振り返ってしまった。
親はいない。
恋人もいない。
家族もいない。
俺は、一人と言うことをこのタイミングで思い知ったとき、すべてからやる気が失せた。
幸か不幸か、斎間大将はしばらく俺を休ませる気のようだ。
ラジオをつけると、ちょうどニュースをやっていた。
“・・・国立魔術研究所では今回回収したドラゴンを炎性ドラゴンと命名し、今後研究を続けていく予定です・・・”
「・・・そんな機関あったんだ・・・」
ボソッとつぶやいた。
部屋には俺以外誰もいない。
もちろん、独り言には返事がない。
精神が不安定な時はこんなことでさえ、気にかかる。
その時、電話が鳴った。
外線電話だ。
「珍しいこともあるもんだ。」
そうつぶやいてから電話を取った。
“やっほ~!元気にしてるかなぁ~!?そうでないのは知っているから電話したんだけどね~”
女の声だ。だが、俺はこんなうざったいしゃべり方をする女に知り合いがいた覚えはない。
「どちら様ですか?おかけ間違いでは?」
ん!?まてよ・・・
なんで交換手が最初に出ないんだ?外線からだろうといったん海軍司令部内の電話交換所を通らなければつながらないはず。そしてつなぐ前に“~~様からの電話ですが、お繋ぎしますか?”と交換手が訊ねてくるはずだ。
「おめぇ、誰や?」
“おや~、もうお忘れかい?まぁ会ったのは1年以上前だから、仕方ないか!”
俺は内線電話を取った。電話交換所に逆探するように言う。
“そんな~、久々なんだし話くらい聞いてよ~”
「逆探されたくなければすぐに電話を切ることだな。」
“ちぇ~、ケチ~”
「黙れクソガキ!いまそういうのにかまってやっているほど気分がよくないんだよ!」
内線電話から逆探結果が来た。“不明”と。
「不明だぁ!?」
そもそも俺の部屋の外線電話にどこの回線も繋いでないという。
「マジかよ・・・。こいつはどうなっているんだ?」
俺は内線電話を置いた。
「まったく・・・貴様は何者だ?」
“君は私を「神」といったね。”
・・・まさか!
“思い出してくれた?”
「ああ。まさかあの時のとち狂ったように踊っていた“白い空間の主”とはね」
俺が前の世界で死んで、この世界に来る前。真っ白な空間にいた女。
それが電話の相手だった。
“呼び方変わってない?白い空間の主よりも神のほうがいいなぁ”
「でも神じゃないんだろ?」
“否定もしてないし肯定もしてなよ。あの時は”
確かに。笑い転げていただけだったが。
「まぁいい。それで、何の用だ?」
“お、やっと聞いてくれるようになったか~”
「早くしろ。俺も長電話できる立場じゃない。」
“そりゃ失礼。中将様。”
いま一番してほしくない呼び方だなぁ。と思いつつ話を聞く。
“フォローだよ。フォロー。”
「はっ?」
“言ったでしょ?できるだけフォローはするって。今君の精神的状況にはフォローが必要じゃないかと思ってね。”
「はぁ。」
“何かして欲しいことはあるかい?”
真っ先に思い付いたのは“帰る”だった。
元の世界に帰る。
家族に会いたい。
「帰りたい。」
“いいよ。わかった。だけど君は二度とこの世界には戻れない。それでもいい?”
俺は判断に迷った。
それほど、この世界に愛着も持ってしまったというのか?
だけど、海軍中将も何もかも捨てて、元の世界に帰るというのは実際魅力的な話だった。
だが、答えは
「NOだ。やっぱいいや。」
“本当にいいのかい?もう一度こんな機会あるとは限らないよ?”
「やめた。その代り、調べて欲しいことがある。」
やはり、家族のことは気になって仕方なかった。
俺が質問したのは、家族のことだった。
「俺の家族は、元気でやってるか?」
“うん。元気でやってるよ。”
それを聞いて安心した。
「ありがとう。」
俺は電話を切った。
数日後
国土開発省
「・・・このようにこのA~C区画を海軍の土地として・・・」
ヒネク中佐が説明する。
「ヒネク中佐~、君ずいぶんと海軍学校の予定地を便利な場所に置いたね~」
俺はいきなり後ろから話しかけた。
「うぉふぉ!?た、谷岡中将!」
「ヒネク中佐、この件は再び俺の仕事になった。ヒネク中佐には俺の補佐につくよう斎間大将からの命令書。ほれ。」
ヒネク中佐は驚いて命令書を見た。
「はぁ~、けっこう大胆に学校の場所を取ったね~」
「そ、そりゃあ~、新兵の育成は重要ですから。」
「だけど、全寮制学校が交通の便の良いところになくてもいいんじゃない?」
俺がいたずら心全開で指摘してみると、ヒネク中佐は折れた。
「やはり、谷岡室長には勝てません。その通りです。」
ヒネク中佐はため息をつくように言った。
「さて、悪いけどヒネク中佐。再び俺の下で働いてもらうぞ。」
「了解です。ですがこれでも一応海軍学校教官と兼務なので、お手柔らかに。」
「分かってるって。んじゃさっそく俺がいない間の会議記録、明日までにもってきて。」
「谷岡室長、聞いてました?私の話。」
「ちょっと~、それよりもよくこの美人の私と世界一可愛いイリマちゃんを置いて逃げたわね~」
美佐さんがテーブルの向こう側からからむ。
「いや~、一緒にドラゴン退治したかったですか?そりゃあ申し訳ございません!今度は必ず連れて行きますね~」
「やっぱりいい。」
「会議、続けていいですか?中将。」
ダドリーさんが“早くしろ”みたいな目で見てる。
「すいません。あと少し。
え~、そう言うわけで再びこちらに復職いたしました、谷岡です。よろしくお願いします!」




