海軍都市編-13
空軍の戦闘機と爆撃機が頭上に迫ってきた。
これで、爆弾が落ちてくれば俺が“反乱軍指揮官”だとわかる。
運命が、
近づいてきた。
「日本空軍零戦3!機種不明3!九七式艦攻6!九九艦爆4!」
対空監視をしていた兵が大声で言う。
俺は、ずっと上を見ていた。
九七艦攻は、爆弾を抱えていた。
はは・・・。マンガでしか見たことなかった九七艦攻の現役を、こんな形で見るなんてな・・・。
その時、零戦が揺れたように見えた。
「バンクです!」
バンクとは、航空機が機体を左右に傾け、友軍だというメッセージを送るために使う。
つまり、
俺は小型無線機を取った。
「全軍に通達!空軍は友軍!敵はドラゴンのみ!」
だが・・・体長60mを軽く超えるこのドラゴンをどうやって倒せと?
「う~ん、ドラ○エでもやっておけばよかったか・・・」
冗談を言っているとまた火炎放射が来て俺はあわてて避けた。
「冗談はあとにしよう・・・。とにかく消防車だ!」
俺は消防車へ走りつつも、上空を注視した。
リン少尉は先に乗っていた。
「いつでも放水できます!」
空港用化学消防車にはタンクがついている。よって水源が無くても放水は可能だ。
だが・・・
「中将!バック!」
「わかっているが・・・・不整地走行向けじゃないんだよ!こいつ!」
地面は火事で焼け野原になる前は森だった場所だ。やたらとやわらかい。そこを重量数十トン(相変わらず正確には不明)の車がタイヤで走るのだ。地面が掘り返されて余計に動きが取れなくなる。
しかも上が見えない。消防車はドラゴンを撃ち落とす仕様にはなっていない。
「くそっ!」
俺は窓を開けて上を見上げた。
空軍の戦闘機が善戦していた。
「すごいな・・・。零戦の巴戦を生きている間に見ることになろうとは。」
その時、無線が雑音を立ててどこからか音声を持って来た。
“・・・りかえす。陸戦隊!ドラゴンが墜落する!下を空けろ!”
「はっ!?」
“あ、応答した!こちら日本国防空軍!姫城大佐だ!”
姫城・・・はてどっかで・・・
「あー!空軍準備室の!」
“もう空軍だ!準備室じゃないぞバカたれ!”
うぉ~、怖ぇ~。
思い出したぞ。空軍準備室のころ、零戦のテストフライトに偶然立ち会ったときに会った、見た目は幼女中身は極秘のパイロットだ!
“ドラゴンの羽はほとんど機銃掃射で砕いた!もう少ししたら落ちる!そこに爆弾お見舞いしてやるからどいてろ!”
「無茶な!俺らが何人いると思っているんだ!」
“あと1分もしないうちにドラゴンは地に落ちる!”
「やっぱり俺らを殺しに来たのか!?」
“味方を殺しても得にならん!”
「なら殺さないように落とせ!」
俺は諦めて隊内に無線で呼びかけた。とはいっても先ほどの通信は空軍が陸戦隊の周波数に割り込んできたのでだいたいの事情は分かっているだろう。
「こちら谷岡中将!陸戦隊全員へ!至急退避!空軍に丸焼けにされるぞ!」
“うえっ!?了解!”
“マジかよ!全員逃げろー!”
“空軍の爆弾が落ちてくるぞー!”
俺も空港用化学消防車をバックさせて道へ出ようとした。
ところが、消防車は少し動いたところで動かなくなってしまった。
「くそっ!腹がつっかえた!」
車体のほぼ中央の下に、焼け焦げた丸太が転がっていた。俗にいうシーソー状態だ。
「リン少尉!反動をつけてどうにかするぞ!」
「はい!」
二人で体で反動をつけてどうにかならないか、やってみた。
“おい!あと10秒で爆弾を投下するぞ!”
「まだ1分たってないじゃないか!」
“もう落ちた!”
「へっ?」
目の前にズドン!と巨体が落ちてきた。
やばい・・・
「中将!降りたほうが!」
「安心しろ!こいつは消防車だ!周りが火事ならこいつの中ほど安全な場所は無い!」
その時、車体の下をこする音がして、消防車が後ろに下がった。
「よし!動いた!」
タイヤも再び地面を蹴った。
だが、少し遅かった。
無線から、タイムリミットが聞こえてきた。
“投下開始!タリホー!”




