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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
海軍都市編
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海軍都市編-11

歩哨が連れて行ったのは、広場と森の境目だった。


「もうちょっとで木と一緒に焼くところでした。」

歩哨が言った。

木の陰に、木にもたれかかるようにして人がいた。すでに赤十字腕章をつけた衛生兵が手当てを始めている。

「衛生兵、どうだ?」

「重度のやけど、栄養失調、餓死と破傷風による死が絶賛激しく競争中、という所ですな」

うぉう!この女性衛生兵、すごい表現するぜ!

「助かりそうか?」

「今軍医殿を呼んでいます。すでに衛生兵に助けられるレベルは超えまくってますからね。軍医殿次第です。」


少しして、その“軍医殿”側車付バイクがやってきた。

ポーラ・ゴドフロワ軍医中尉。我が国の医療技術(特に外科手術)に魅せられて他の国からやってきた医者だ。軍に入れば無料で医学が学べるということで軍に入ったらしい。

軍部では有名な人だった。

「大人の色気とはこの人だ。」と噂だった。


「どいて!」

側車から降りてきた第一声がこれだ。大人の色気と言うより、“大人の男気”の間違いではないだろうか?

「ジャネット!容体は!?」

「破傷風と餓死が競争中。」

先ほどの“表現がすごい衛生兵”が答えた。後で知ったがジャネット・マクスウエル2等兵曹と言うそうだ。軍医を目指している、いわば“軍医候補生”だそうだ。今回はその研修の一環として陸戦隊に参加していた。

「どうだ?どうにかなりそうか?」

俺はポーラ軍医に訊ねた。

「すぐに点滴をします!運ぶの手伝って!その車、使わせてもらうわよ!」

そう言うと俺の高機動車に患者を乗せて、猛スピードで走り去ってしまった。


「・・・俺の高機動車。」

俺らは本部テントまでウォーキングすることになった。


歩きながら、エルネスト大尉と今後のことを話し合った。

「さて、どうするか。」

「ふと思ったんですけど、何もしなくていいんじゃないですか?」

俺は驚いた。

「どういうことだ?」

「例えば、もしも我々が反乱部隊ではなかったと仮定しましょう。リュディガーはあれだけのことをしたんです。本国に伝わるのも時間の問題でしょう。すると、本国はリュディガーの確保と我々の捜索を行うでしょう。」

「つまり、待ってたら接触が来ると。」

「そうです。

仮に我々が反乱部隊に認定されていたとしたら、リュディガー率いる陸軍に大量の増援を付けたうえで追撃が来るでしょう。他の武装勢力と我々が結びついたりしたら大変ですから、空軍でも何でも使ってつぶそうとするはずです。」

「つまり、待っていれば我々が反乱部隊か、そうでないかが分かる、というわけだな?」

「そう言うことです。」

そう言うわけで、ひとまずは待ってみることにした。

もちろん、ただ待つのではない。


俺は伝令用のバイク部隊を集めて、偵察に出した。

バイクで海軍都市建設予定地に近づき、手前でバイクを隠して海軍都市建設予定地に近づいて偵察するのだ。

もちろん危険もある。敵は陸軍と野生動物だ。ファブルだけとは限らない。

だから、途中まで戦車を出すことにした。最悪、戦車はファブルに襲われても立て籠もれる。さすがに76mm砲弾をはじく装甲を食い破る野生動物はいないだろう。


戦車4両と偵察隊を見送ったところで、食事にした。

「今日は金曜日か・・・」

飯は、カレーだった。

思えば、日本民主主義国を出て一週間もしないうちにこんなことになっている。

周りを見ると、全員疲れた顔をしている。そりゃそうだ。本国に家族を残してきた兵も多い。

他方をみれば、棺の前で手を合わせている兵もいた。陸軍との戦闘やファブルの襲撃で戦死者は10名を数えていた。彼らはこっそり持ってきていた棺に入れられ、トラックの荷台で眠っている。日本民主主義国に帰れたら、そこへ埋めていやりたいと思っている。


帰れなかったら・・・


あわててそんな不安を振り払った。


俺は夜中にこっそり、棺に手を合わせた。

責任者である俺の不用意な行動で、兵がどういう行動を起こすかわからない。それを避けるための措置だ。


翌朝、偵察隊が帰ってきた。

「それが・・・よくわからないんです。」

偵察から戻ったリサ少尉の報告を聞いて、俺は愕然とした。

「リサ少尉・・・偵察って何か知っているのか?よくわからないから調べに行くことを、偵察、と言うのだぞ。」

「それはわかってますが・・・。」

「まぁまぁ。とにかく報告を聞きましょう。」

エルネスト大尉が話を進めてくれた。


「敵勢力・・・敵でいいんですか?」

「とにかく続けろ。」

「敵勢力、およそ歩兵2個大隊。戦車はⅢ号が15両。突撃砲はⅢ号が5両。その他車両多数。陸戦隊員の一部は海軍都市建設予定地のほぼ中央のテントで隔離されている模様。」

「美佐さん・・・いや、平林事務官やダドリーさんは?」

「拘束こそされていませんが、どうやら隔離状態かと。」

「よく調べているじゃないか。必要な情報はだいたい集まっている。これで何が不明だというんだ?」

「それが・・・」


リン少尉は少し間をあけて言った。


「その・・・。偵察中に警察が・・・」

「警察!?」


なんで!?



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