海軍都市編-5
海軍都市編、めっちゃ長くなりそうです。
長くなりそうにしたのは誰かって?
・・・作者です。
海軍都市建設予定地で朝を迎えた。
とりあえずはるか遠くに確かに大火事を見たが、ここまで延焼することは無かったようだ。
「とりあえず、予定地を見て回りましょう。」
ダドリーさんの言葉で目の下にクマさんを飼ったまま、俺はそれについて回った。
予定地はもちろん平地だった。周りは広く草原が広がっており、東には大きな川が流れている。この川を国境にするつもりのようだ。
川の向こうには森が広がってる。外務省職員によると、“その森は野獣が多く、危険。我々も川を越えたがすぐに引き返した。”とのこと。今のところ木製のボロい橋が川にかかっている。しかし、洪水が来たら一発で壊れそうだ。
海岸線に出た。双眼鏡でのぞくと沖合に島が見える。いつぞや空軍さんがこの周辺の航空写真を撮ってきてくれたが、ここらの海は瀬戸内海のように島が多いらしい。それが沖合60kmくらい続き、その先には大海原が広がっているそうだ。未だに海軍の海図はその大海原までたどり着いていない。もっと頑張らなければ・・・。
とりあえず大型艦を航行させるのに問題のある位置に島はなさそうだ。あとは水深測量次第だな。
北側は相変わらず山脈が続いていた。結構高い山だが、標高何メートルあるのやら。ざっと1000m越が連なっているように思える。
そして一通り見終わって、ダドリーさんが連れてきた国土開発省の人による土地測量もひと段落した時だった。
「上空!機影!友軍機!」
エンジン音とともに木材で組んだ櫓で対空監視していた兵の声がした。
上を見上げると、3人乗りの九七式艦上攻撃機が飛んでいく。零戦と言い九七艦攻と言い、どうやら空軍は日本軍好きがいるらしい。
友軍機が日本湾の東側の終わりでもある赤嶺岬を飛び越えて見えなくなるころ、伝令兵がやってきた。
「先ほどの友軍機が、連絡筒を落としていきました。」
「へ?」
なぜ本国とも無線連絡できるのに連絡筒なんて使ったのだろうと思いつつ、お茶の葉を入れる缶にも似た連絡筒をあけた。
“そこから東50km地点に町有。ただし壊滅状態。空軍”
とだけメモ用紙のようなものに書き殴ってあった。
本能的に俺は思った。“あ、面倒なことになった。”
翌日には予想通りになった。
陸軍が大挙して押し寄せ、外務省職員と軍需庁職員、さらに空軍兵までやってきた。
「一体何事ですか!?」
おそらく事情を知っていそうな背広野郎に大声で言ってみた。
「すぐにここにいる役人を集めてください。あなたは海軍の谷岡中将ですね?あなたも来てください。」
背広野郎は早口でそう言った。
「それと、本部のテントはどこです?」
これといって“本部”と言うものは決めていなかったが、会議室として使用している部屋にダドリーさんや美佐さん、イリマさんも集まった。
ダドリーさんはすごく不機嫌そうな顔をしている。そして怖い。
「外務省大臣政務官のリュディガー・ニーダーハウゼンです。まずはいきなり押しかけたことを謝罪します。しかし、我々外務省にとって緊急事態が起こりました。」
「我々、外務省にとって、ねぇ・・・」
ダドリーさんが皮肉るように言う。
「先日の航空写真によってこの先に村が発見されました。その村が何かに襲撃されていた可能性があります。」
そう言いながらリュディガーさんの部下らしき男が写真を黒板に貼っていく。
A4サイズの写真には、はっきりと大火災の跡が写っていた。
「建物が写ってないじゃない。」
美佐さんが指摘する。
「全部燃え尽きたのか?」
ダドリーさんも写真を見ながら言った。
「いえ、よく見てください。ここ。」
リュディガーさんは写真の右の方を指した。そこには燃えなかった木が写っているだけだ。
「この木がどうかしたのか?」
俺は質問してみた。
「よく見てください。この木、葉が茂っている下に穴が開いてるのが見えますか?」
確かに、穴が開いている。
「そしてその下を見てください。木の根元に吊り橋の残骸みたいなものが写っているでしょう?」
「確かに・・・」
ダドリーさんは何か思い当たる節があるのか、リュディガーさんを見ている。
「おい、まさか・・・」
「恐らく・・・」
二人はそれで分かるのかもしれないが、俺にはさっぱりわからない。
「え?いったいどうしたの?」
美佐さんが質問する。どうやらわからないのは俺だけではないようだ。
「ああ、そういえば転生されてきた方々には分からないでしょう。説明します。」
リュディガーさんが言った。
「恐らくですが・・・。
これは、エルフ族の村があったのではないかと。」
エルフもいるの!?この世界。