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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
海軍都市編
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海軍都市編-4

最近1話あたりの話がだんだん長くなっているような気がする。


また胃もたれする作品になりそう・・・

懐かしいところに来ていた。


この世界で一番最初に来たところ、といえば少し語弊があるが、だいたい正しい。


“赤嶺岬診療所”

俺がこの世界に来て一番最初に目覚め居たのは、この診療所の中だった。

「ここも、1年ぶりだな。いや、2年ぶりかなぁ。」

ちょっと故郷に帰った感じもあって、懐かしい。


そういえば元の世界に残してきた両親は今頃どうしているだろうか?あの災害に巻き込まれていないのは確かだ。大学と実家はかなり離れている。

心配ではあるが、会えないものは嘆いていても仕方ない。

それに、親元を離れてはいた。そう考えれば悲観する要素は少ない。


「おお、2年ぶりかのぉ?元気でやっとるか?」

診療所の医師が出てきた。

「お久しぶりです。まだギリギリ2年は経ってませんよ。」

白磯大路医師。

この世界に来た元日本人としてはかなりの古株になる。前の世界では漢方医と内科医だったらしい。

何歳かは知らないが、60代後半だと思われる。

とにかく、白磯医師と俺はしばらく立ち話していた。



そもそも何でこんなところ居るのかというと、海軍都市建設予定地の視察だ。

未だ国境があまりはっきりしていない、東側に予定地を設けたらしい。

その結果、この懐かしい診療所を通ることになった。


「谷岡中将!そろそろ・・・」

「ああ、すまん。それでは先生。またいつか。」

兵に声をかけられ、白磯医師に別れを告げた。

今回は教育中の海軍陸戦隊を連れてきた。陸軍からの転入者もそれなりにいるので陸戦になれてはいるのだが、一応訓練。というのと、ついに配備になったⅣ号戦車陸戦隊仕様の走行試験を目的としてついでに連れてきた。一応未開の土地へ行くのだ。丸腰はやばい。

ちなみにだが、Ⅳ号戦車と我々が呼んでいるものは史実のⅣ号戦車とは別物らしい。

佐藤いわく、

「技術的に無理な部分があったり、逆に改良したりして結構別物になってるよ。」

とのこと。恐らく他の戦車も同様であろう。


話を戻す。

今のところ、この診療所で道路工事は終わっていた。つまり、我が日本民主主義国の勢力圏はここで終わり、ということである。

この先には、どこの国にも所属していない土地が広がっているらしい。


「総員乗車!周辺警戒を怠るな!」

「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」


俺は2式不整地走行大型車、通称“高機動車”に乗り込んだ。思いっきり前の世界の自衛隊の高機動車のパクリだ。

だが、唯一の違う点は、この世界ではマニュアル車だと言うこと。これが開発されたときはまだオートマが完成していなかったらしい。

自衛隊などに詳しくない人は、11人くらい乗れる大型のジープだと思ってくれても差支えない。


「中将閣下。この先、大丈夫ですかねぇ?」

特別海軍陸戦隊第1大隊隊長の、エルネスト・ベルリオーズ大尉が言った。元陸軍兵士で、今回1個大隊いる歩兵すべての指揮を執る。40代くらいの男性だ。

「まぁ、無謀にも外務省は刀数本持って突入したらしいからな。大丈夫だとは思うけど、油断はするな。」

「いや、まぁ、そっちはそうなんですが・・・。私が言いたいのは戦車隊の方でして・・・」

「あ~・・・」

思わず次の言葉に迷ってしまう。

つい先日完成したばかりのⅣ号戦車陸戦隊仕様、つまりは“Ⅳ号戦車M型”はどうも調子が悪いらしく、仕方なく兵器廠から人員を連れてきたところだ。先ほど診療所に立ち寄ったのもそれが原因だ。

一応前の世界で大型特殊免許や重機の作業資格(正確には技能講習)を持っていた俺も試しに運転してみたが、確かにやたらめったらエンストする。これでは進むどころの話ではない。


こうして、戦車のせいで進軍が止まっていたのである。



「まぁ、実戦で嘆くよりかはマシだろ。」

「そりゃあそうですけどねぇ・・・」

エルネスト大尉は不安そうな顔をしたままだった。


兵器廠から誰が来たかと思えば、佐藤であった。

「佐藤!」

佐藤は側車サイドカー付のバイクでやってきた。

「たにさん!申し訳ないけど501号車と504、505号車はダメだわ。」

「原因は?」

「恐らく工作精度不足。すまんね。」

「まぁ、しゃあない。次は無いようにしてくれよ。」

こうして501号車~510号車の10両のうち、3両がそのまま引き返すことになった。


たしかに不安だ。こりゃ。



再び進軍を開始した。この先は未舗装の道が続く。

この世界での主要交通機関は馬車だ。そのため我々が開拓していない場所では馬車2~3台分の横幅の道が続く。

そこを、7両の戦車を先頭に車列が進んでいた。


しばらくすると、1列になっている車列をごぼう抜きするバイクが現れた。伝令兵だ。

車と並走して窓をノックするので窓を開けると、メモ用紙のようなものを窓から投げ入れて後ろに戻って行った。

「伝令ですか?」

エルネスト大尉が俺に訊ねた。

「伝令だが、大した用件じゃない。」

後ろにいる“お客さん”からの苦情だった。


先日の国土開発省での会議で、「とにかくは現地を見てみよう」というのが結論の一つとして採択された。よってこうして見に行っているのであるが、戦車の不調で動いたり止まったりしているので“お客さん”が不満を言っているらしい。

「“お客さん”?」

エルネスト大尉は首をかしげた。

「後ろをついてきている“お偉いさん御一行様”だよ。」

そう、今回の視察には美佐さんやイリマさん、そしてダドリーさんを連れて来ている。

ダドリーさんは「外務省職員は何事もなく行けたんだから、そんなに兵隊はいらないよ。」なんて言っていたが、万一何かあったとき“なぜ軍人のあんたが危険性を指摘しなかった!あんたは無能か?”なんて言われるのは嫌だ。

つまり、こんなに兵隊を連れてきたのは俺のわがままだ。そのため文句を言われても仕方ないが・・・

「これで何回目だよ・・・」

「おそらく8回目かと。」

俺はため息をついた。



予定地には夕方にたどり着いた。すぐに1個小隊を周辺警戒に当たらせ、戦車は半数を整備、半数を即応できるようにしておく。正直海軍大好きだった俺は、陸軍は詳しくない。そのため自分で考えて行う。


「もう遅いですし、詳しく見て回るのは明日にしましょう。谷岡中将、野営は出来ますか?」

「ええ、もちろん。」

俺はすでに野営の準備を指示していた。

兵がトラックに積んできたテントを素早く立ち上げ、主計科の烹炊兵がすばやく飯の準備をした。


飯の準備、とはいっても周りの木の枝を集めて・・・というようなキャンプのようなものではない。

なんと、今回は調理専用の車両がいるのだ!

名前を“九七式炊事自動車”という。旧日本陸軍のものだ。

九四式トラックの荷台に炊事器具を乗っけたもので、走行中でも調理可能。機能は炊飯と、汁物の調理。極寒地でも調理可能と言う優れもの。

なんでもこれ、前の世界から飛ばされてきたらしいのだが、出現位置が悪く日本民主主義国国防陸軍が接収したのはつい2年前。これといって遠征することの無かった陸軍はこれを修理したものの実質放置。それを今回もらってきたわけだ。

こうして、今夜の食事は豚汁と白ごはんになった。


この後もダドリーさん達と会議したり、自分自身で警戒線を見回ってみたりして0時近くになって俺もようやく寝床へ入る運びとなった。


だが、ひどいもので眠らせてはくれなかったのである。

「中将!大変です!」

エルネスト大尉が俺のテントに飛び込んできた。

「何事だ!?」

俺も飛び起きる。

「東の方で、大火災が発生している模様!」


俺は結局一睡もできないまま、テントを飛び出した。



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