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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
海軍都市編
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海軍都市編-3

書いてたらなかなか区切りが良くならなくて、ちょっと長めになってしまいました。すんません。

「佐藤ぉーーーー!!!!」

怒りに任せて俺は軍用トラックごと兵器廠に入り込んだ。


兵器廠

佐藤大佐の(本来の)仕事場だ。佐藤はここの副主任らしく、主任は前の世界の日本で戦車を作っていた人と聞いている。

海軍準備室や空軍準備室が自分の手から離れた佐藤は大概ここでいろいろ兵器開発をやっているのだ。


まぁ、中で戦車や航空機を作っているのだからもちろん広い。中にトラックが入っても何ら問題ないくらいに。


そして俺はⅣ号戦車の前で何やら講義している佐藤を見つけ、クラクションを鳴らしながら突っ込み、急ブレーキで佐藤の目の前でトラックを止めた。

「佐藤ぉ!覚悟はできちょるやろおな!?」

「えっ!?何ごと!?」


~怒声や罵声を割愛させていただきます~


俺は斎間大将に俺のことを話しただけというあまり罪でない佐藤に対して必要以上の責任を無理やり押しつけ(別名:八つ当たり)、うまく言いくるめて(別名:誘導尋問)、兵器廠も協力するように取り付けた。


「と、いうわけで早急にブルドーザーとパワーショベルを作ってくれ。」

「ええ!そんなぁ!いまティーガー作ってんだよ!?」

ドイツの重戦車だ。

「へぇ~、だから?」

にこやか、かつ威圧的に俺は返した。

「今、忙しい・・・」

「ほぉ~、人がこの世界へ来たばかりに速攻で海軍へ放り込んだのは誰だっけ?」

「ヴ・・・」

「苦労したよ~、俺、街のこともよく知らないのに軍務に追われる日々になって・・・」

「・・・」

「そういえば佐藤、お前も俺と同じ土木工学科だよなぁ・・・」

佐藤から大汗が流れ出る。

「今や海軍とはいえ中将の俺が、陸軍のお偉いさんに頭下げたら・・・」

佐藤はここで折れた。

「わかった!早急に作るから!それだけは勘弁して!」


そう。陸軍も海軍や空軍ほどではないが、人材に余裕があるわけではない。だからこそ兵器廠副主任佐藤の佐藤に“海軍準備室”や“空軍準備室”の仕事が回ってきたわけだ。


つまり、俺が要請すれば陸軍は佐藤に仕事を掛け持ちさせる可能性もあった、というわけだ。


いや~、俺交渉強いな~(別名:おどし、脅迫)




それから数日後、国土開発省を訪ねることになった。

何気にこの世界に来てから入る役所としては2つ目である。1つ目は首相官邸だった。あのころはまだこの世界に来たばかりで、本当に佐藤に振り回されてばかりいた。それをおど・・・交渉できるような立場になれたと思うと、俺も(階級的に)成長したんだな~、と思う。


さすがに町のど真ん中にあるお役所に土まみれの軍用トラックで乗りつけるわけにもいかず、佐藤に頼んで高級車を借りてきた。佐藤、本当になんでも持ってるな。


高級車、といっても元の世界にいたころの高級車とは違う。デザインから言えば、まるでロンドンタクシーだ。

この、ロンドンタクシーのような黒塗り高級車にのって俺は国土開発省へ向かった。これで副官とかに運転させていれば立派な“上級将校”風でかっこいいと思うんだけどな・・・。


副官欲しい!


そんなこんなで国土開発省にたどり着いた。

「おお・・・」

思わず建物を見て声を出してしまった。

街の真ん中にある立派なレンガ造りの建物。どこか東京駅を思い出すデザインだ。

車寄せに車を止めると、入口で待機していたボーイがすぐにやってきた。

「海軍中将、谷岡様ですね。受付へどうぞ。」

ボーイが常時待機しているようなホテルにすら行ったことの無い俺は面食らってしまった。一瞬ホテルかと思ったが、ボーイが俺の名前を知っているということは俺が来るべきところで間違いないらしい。

「ああ、どうも」

そう言って偶然お釣りを突っ込んでいたポケットからお札を一枚取り出してボーイに渡した。

「ありがとうございます!」

ボーイはずいぶんと喜んで俺から鍵を受け取り、車を駐車場へ駐車しに行った。


1000円札だったんだが、渡し過ぎたかな・・・

ちなみにお金は前の世界と同じく“円”である。しかし、硬貨も紙幣も前の世界とは違うデザインになっている。


受付で自分の名前を言うと、すぐに案内された。

エレベーターにのり、5階で降りる。

少し廊下を歩いた先の一室が、俺の行くべき部屋だった。


「やぁどうも。すでにいろいろと動いてくださっているようで、感謝しています。」

部屋に入るなり、すぐにダドリーさんが言った。相変わらずキツネっぽい耳がピクピクしている。

気になる。

「いえいえ。まぁ、仕事ですから。」

がんばって耳から目をそらしつつそう返答した。


部屋は会議室だった。建物の見た目と違い、豪華な作りこみはない。廊下までは装飾が細かなところまで作ってあってずいぶんと驚かされたのに。

まるで前の世界の、どこの会社にもありそうな会議室だ。


違う点と言えば、照明が蛍光灯ではなく電球である、という点だけであろうか。


部屋には俺とダドリーさん以外に、2名いた。

「お久しぶりね。立派になったじゃない!」

女性が声をかけてきたが・・・はて、誰だろう?

「あ、あれ?覚えていないかなー。平林美佐、と名乗っても思い出さないかな?」

う~ん・・・。

首をかしげる角度が増えただけだ。

「君、あの時はこっちに来たばっかりだったしね~。そりゃ覚えてないか~」

あ!

「経済省事務官の!」

「思い出してくれた!?」

「木嶋総理をめちゃくちゃ叱っていた・・・」

「いや!そこまではしてないから!」

まだこの世界に来て、退院したばかりのころ佐藤に首相官邸に連れてこられたときに会った、平林美佐事務官であった。


「お久しぶりね~。元気だった?」

まるで久しぶりに会った親戚に話しかけるような口調だ。

「ええ、まぁ。どうにかこうにかですね。」

「噂は聞いていたわ。」

「うわさ?」

「海軍設立でいろいろ頑張ったって。」

「あ~」

そりゃあ噂になるわけだ。海軍の正式な発足の日にはマスコミも結構来ていたしな。

「期待してるわよ~」

「あ、はい!

・・・ところでなんで経済省の平林事務官がここに?」

「美佐でいいわよ。私堅苦しいの嫌いだから。

それで理由だけど、街を一つ作るとなると一大プロジェクトだからね。経済省から“出向”ということで派遣されちゃった。

あ!ついでに紹介しておくね。」

そういって美佐さんは部屋にいたもう一人を引っ張ってきた。

「この子、私専用の部下、イリマ・レイナちゃん!」

中学生くらいの、これまた獣耳の(というか毎回獣耳を見るたびに思うが、何の動物の耳なんだろう?)少女を紹介された。

「う~ん!イリマちゃんかわいい~~~!」

人によってはドン引きするくらいイリマちゃんに頬をすりすりしている美佐さん。

「イリマ・レイナです。リスの人獣族です。先ほども紹介がありましたように、不本意ながら平林事務官の部下です。よろしくお願いします。」

さらりと“不本意”っていったぞ!おい!

「あ、はぁ・・・。海軍中将の谷岡です。よろしくお願いします。」

「私と平林事務官の関係は、軍人さんなら“副官”といったほうが分かりやすいかと。」


“副官”!

なぜだ!

なぜ軍人が副官を持っていないのにお役人は副官を持っているのだ!

神よ!理不尽ではないか!

首相よ!予算をよこせ!


という心の中の訴えは0.5秒で済ませて握手をした。


少ししてメイドさんが紅茶を運んできてくれた。本当にここは“役所”なのであろうか?よく“税金の無駄使い”とか言われないな!


「いや~、遅れて申し訳ない。」

そう言いながら、おっさんが部屋に入ってきた。まるで飲み会に30分遅れたような言い方だ。

「部長!あれほど遅れるなって言っておいたでしょう!」

美佐さんが声を荒げた。

そう、入ってきたおっさんは、総理大臣の木嶋浩平であった。

「そ、そう言われてもやな。総理大臣は結構大変な・・・」

「シャラップ!」


怖~・・・


この人木嶋総理にだけは容赦ないな。


「ごめんごめんって。本来ならあと外務省から一人来る予定だったんだけど、ちょっと忙しいみたいだから先に始めようか。」

木嶋総理のこのあまりにも“締まらない”一言で、海軍都市計画はお役所内部でも動き始めた。



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