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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
2つ 編
134/174

2つ 編-9

最近、難しいことを書いているので更新速度が異常に遅いです。

投稿するまでに何度も訂正をかけたことも・・・

ゆっくりと温かい目で見てくださると幸いです。ハイ。

2日ほど、実家にいた。

だが、未だに平和なこの国で居場所の無さを感じていた。

家族によると俺は災害で死んだことになっており、多額の保険金も降りたらしい。別に保険金云々(うんぬん)で俺を追い出そうとはしなかったが、何か俺自身が落ち着かなかった。

墓参りも行った。父方の祖父母が亡くなっていた。俺が異世界へ飛ばされる前に生きていた曾祖母も亡くなっていた。

墓参りをしたはいいが、なんだか別人の墓に手を合わせている気分になった。


夜、ベッドに入ると、戦争の夢を見た。

陸軍とやりあって、ドラゴンとやりあって、国家墓地で手を合わせたこと。

アドリミアの内乱に手を出して、死者を出したこと。

グリースト帝国で軍艦が襲われ、血塗られた甲板を歩いたこと。


どれも、最高責任者ではなかったにしろ、自分の命令、判断の結果出した“死者”だ。戦死だろうと関係ない。責任は俺にある。


俺は、幸せにはなってはいけない。物理的には、自分の出した死者を忘れ、この世界で再び平和を謳歌おうかする生活を送ることもできる。だが、それは言葉にできない何かが拒否した。



「帰ろう。俺が何年か後に行くのはこの世界の地獄じゃない。」

そう思う頃には、父親と母親が俺の荷物をすべてダンボールに詰め終わる頃だった。



2021年5月18日

俺は結局、岡山県の水島港に戻って来ていた。

戦艦“音戸”には艦を動かすのに最低限の人数、50人の海兵が乗っていた。彼らは“一時帰国希望者”なのだそうだ。ちなみに50人だと艦を動かすのでやっとだ。主砲一発撃つのにも苦労する人数である。

それだけこの戦艦“音戸”はでかく、そしてローテクだ。


「おや、戻ってきたのですか。」

艦橋へ行くと兵器廠通信部の伊豆大尉がいた。

「戻ってきたら悪いか。」

「いえ、むしろありがたいですね。海軍でもないのに一時的にしろこの艦の最先任将校(一番階級の高い将校のこと)になるのは嫌でしたから。」

「では、以降は俺が指揮を執る。」

「よろしくお願いします。」

伊豆大尉は俺に敬礼すると、艦橋を去ろうとした。


「伊豆大尉。」

俺は伊豆大尉を呼び止めた。

「はい?」

眼鏡をかけなおしながら伊豆大尉が振り向く。

「お前は、帰らないのか?」

「別に。僕が死んだのはこの世界から見て10年前です。それまでに親は死んでましたし、親戚は居ませんでしたので。

あ、でも上陸はしますよ。ちょっと電子部品を買いに行きたいので。」

そういうと伊豆大尉は去って行った。


俺は艦長室でテレビをつけた。俺が異世界へ飛ばされたときに一緒にやってきた私物のテレビだ。地デジ対応のテレビなので、伊豆大尉があらかじめ用意していたというテレビアンテナに接続すればすぐに映った。


“・・・日本の木曾田外務大臣は国連の緊急安保理会議に出席するため、今日羽田空港から政府専用機でアメリカへ向かいました。アメリカ、ロシアをはじめとする主要各国が「瀬戸大橋異世界問題」について話し合われるものと思われます。”


そろそろやばくなってきたな・・・。

そう思っていると、艦内電話が鳴った。

“谷岡中将。面会したいと言っている人がやってきていますが・・・”

「?」

まったく心当たりは無かったが、俺はとりあえず艦門へ行くことにした。


そこにいたのはスーツ姿なのに帽子を深くかぶっている女性と、緑色の自衛隊服を着た男性だった。

「谷岡!」

男性が叫んだが、俺はさっぱり覚えがない。

「おい!忘れたか!俺だよ俺!」

「2021年になってもおれおれ詐欺は存在するのか・・・」

「違う!田島だ!」

「・・・ああ。」

「反応薄!」


田島幸助。俺や佐藤と同じ大学の友人だ。とにかく筋肉と筋肉トレーニングが大好きな奴だった。趣味は軍事。よく俺、佐藤、田島で色々と語り合ったものだ。

「なんだ、田島か。」

「もっと反応あってもよくね!?」

「昔から田島の扱いってこんな感じだろ?」

「ひでぇ!何年ぶりかの再会なのに感動が一切無ぇ!」

「そんなお前はさておき、そちらの女性は?」


さっきからこの女性のことが気になっていた。スーツ姿に帽子、と言う格好がものすごい違和感を生んでいる。

「私は、ミシェル・田島です。」

こいつ、なんで奥さん連れて来てんだよ。バカじゃないの?みたいな目で田島の野郎を見ていると、ミシェル・田島さんは驚くべきことを言った。


「私は恐らく、あなたたちがいた世界から来たのだと思います。」

そう言ってミシェルさんは帽子を取った。


その頭には2021年になっても日本、いや、この世界に存在しないはずの、








獣耳がついていた。







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