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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
第3艦隊編
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第3艦隊編-18 閑話

またもや別視点、というか第三者視点です。

最近こっちの方が書きやすい・・・。

その日、グリースト帝国の第2の都市“外交の町”センヌでは、陸から見えるところで大規模な海戦が行われていた。


それに対して、センヌの人々はまるで気にも留めていなかった。

なぜなら、こんなことは日常茶飯事だからだ。


“外交の町”ということは、戦争が始まるのもこの町からだ。“戦争は外交手段の一つである”とするならばの話だが。

グリースト帝国の長い歴史に照らし合わせても、この町で国交断絶を宣言してさって言った国も多くあったし、ここで講和会議をやった国も多くあった。


中には、国交断絶宣言をした瞬間に仕掛けてくる国もあり、中央大陸情勢が不安定な時には5年に1回という頻度でセンヌ沖合で海戦が行われていたのである。



ここ50年で急成長したグリースト帝国では、すでに敵無しの状態になっていた。周辺諸国からお金に糸目をつけずにかき集めた“優秀な人材”達のおかげである。そのため、中央大陸西側ではグリースト帝国にかなう国はなかった。



そんなセンヌの町沖合で、数十年ぶりに海戦が起きた。

相手は聞いたこともない国。未開発大陸につい十何年前にできた国家だという。

センヌの老人たちは「また海戦か。明日には勝利宣言が出るな。」と言いながら酒を飲み、若者は周りの人たちが誰も騒がないのでなんとなく「大丈夫だろう」と思い込んだ。一部不安に思った者もいたが、そう言う者の大半はセンヌのお年寄りに説得されてしまった。


そんなわけで、たった10km沖合で行われている海戦を気にする者はいなかったのである。




だが、そんなセンヌの町にもこの海戦に危機感を覚える者がいた。

グリースト帝国のNO.2、宰相バレル・グリモー・ブライシュレットである。

なぜ、彼が危機感を覚えるに至ったのかと言うと、それは一概に娘のアンヌ・グリモー・ブライシュレットのおかげである。

アンヌはちょくちょく菊崎市警の鑑識課からカメラを借りて、写真を撮っていたのであった。それを、父親に見せたのだ。

アンヌはある意味、天才だった。日本民主主義国について知れるだけ知って、それをバレルに報告したのである。さすがに誘拐の被害者の少女がここまでするとは、外交のプロの越智外交官でも思い至らなかった。



「フム・・・。つまり、日本民主主義国は“カガク”という技術を発展させてこのような近代文明を築き上げたというのだな。」

「はい。父様。」


なんという優秀な諜報員を持ったものだ、と思うと同時に、私は何か教育を間違えたようだ、とバレルは思いながら写真を見た。

自動車、軍艦、食べ物、蛍光灯・・・。日本民主主義国の人々が見たら何とも思わない写真も、今のバレルにとっては貴重な資料だった。


「アンヌ。正直に言ってみなさい。我がグリースト帝国にこの国をひれ伏せさせることは可能か?」

アンヌはすぐに答えた。

「50年は不可能です。」

バレルはその言い方に、少し引っかかった。

「では、100年後は?」

「可能です。」

「その理由は?」

「彼らの政治の仕組みにあります。

彼らの政治の根幹は“民主主義”。つまり、ゆっくりと日本民主主義国の国民をグリースト帝国と友好なようにして行けばよいのです。

属国、とまではいかないまでも、そうしておけばかなり有利な条件を引き出せると思います。特に彼らは現在、他国との交流に飢えています。すでに、南大陸のアドリミアとは友好な関係にありますが、我が国も今なら2番目の友好国になれます。あとは、アドリミアが失脚すれば・・・」

バレルは首を横に振った。

「それは、ひれ伏す、ではないぞ。アンヌ。

だが、これほどの技術を持った国。アンヌの案はとても良いものだと思う。

簡単に追い返さぬよう、外交官どもに言っておこう。

特に、王族どもに下手に手を出させないように手を打っておかなくては。」


その時だった。

「旦那様!大変です!」

執事が飛び込んできた。

「何事だ!誰も入れるなといったであろう!」

「ですが!緊急事態です!

シャーウド王子率いる艦隊が、日本民主主義国の艦隊に惨敗しました!」


海戦に慣れきっているセンヌでは、自国の艦隊が負ける、という意外な結末が起こるまで海戦が話題に上がらなかったのである。よって、バレルの耳に届いた時にはセンヌ沖合での海戦が終わった後だった。

(ちなみに、正確にはまだ全滅していない。輸送船団を狙った艦隊がまだ残っていたが、センヌの町からはよく見えなかった。)

バレルの顔は、真っ青になった。




---------------


「うそだろ・・・」

「負けた?」

「いや、そんなはずはない。シャーウド王子の艦隊だぞ。」

「そ、そうだよな。じゃあ、あの大きな軍艦は・・・」

センヌの人々は、現実を受け入れることができなかった。まさか、自国の艦隊がやられるとは思っていなかったのである。


この世界では、軍艦による対地砲撃、というのはあまり一般的でない。というのも、大砲の威力が弱いからだ。そのため、軍艦による陸への攻撃は、上陸戦が一般的である。

そのため、センヌの人々はすぐには避難しなかった。軍艦が近づいてきたら逃げようと思ったのだ。


だが、日本民主主義国国防海軍の軍艦はこの世界の常識とはかけ離れていた。


海沿いの道などに集まっていた人々の目の前に、突如水柱ができたのだ。

その場にいた人々はほぼ全員が、腰を抜かした。


「に、逃げろーーー!」

「敵艦からの砲撃だーーー!」

その二人が叫んだとたん、センヌの人々は何も持たずに内陸を目指したのである。




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