第3艦隊編-17
今度は短めです。
なので、連続投稿です。
重巡の射程内に入ったが、重巡“仙崎”は射撃不可、重巡“下関”はなぜか砲撃せず。
駆逐艦の射程内まではまだ数分。
そして、再び火の龍が敵艦の甲板から出てこようとしていた。
その時だった。
「敵艦轟沈!」
見張り員の報告に、艦橋全員が驚いた。
それに続く報告が入る。
「第5水雷戦隊です!」
俺は驚いた。
「第5水雷戦隊!?空母艦隊の護衛につけたはずだろ!?」
「ですが、軽巡“相原”を先頭にしています!」
確かに、軽巡“相原”は第5水雷戦隊の旗艦だ。
そう驚いている間にも、敵艦隊は数を減らしていった。
そして、最後の1隻は空母の航空隊50機の空襲に見舞われ、海の底へ向かって行った。
とても長く感じた戦闘だったが、いざ腕時計を見てみるとなんとわずか4時間の出来事であった。
戦闘が終わって20分もしないうちに、空母“立山”と“高山”が駆逐艦を2隻だけ連れてやってきた。ミーサ大佐は空母の護衛を駆逐艦2隻残して、他をすべて輸送船団の護衛の増援に充てたらしい。
俺は旗艦を大型艦で一番無事な空母“立山”にすることにした。
内火艇で空母“立山”に乗り込み、艦橋目指して階段を上がっている時だった。
「うぉっと!」
俺は足元がふらつき、階段から落ちた。幸いまだ2段目だったため、少々痛い尻餅をつきだけで済んだ。
「まずいな。俺も疲れたのかな・・・」
この時俺は、空母“立山”ほど大きな軍艦がそこまで揺れるわけはない、と思っていたのである。
だが、実際は違った。
空母“立山”、いや、海ごと揺れていたのだ。
ミーサ大佐は艦橋に上がってきた俺を見るなり、あわてて報告した。
「司令!先ほどのはどう対応します!?」
「は?何が?」
「ですから!津波です!」
どうやら先ほど階段から落ちたのは、津波のせいだったようだ。
俺が何か言おうとした時、それを遮るように俺の押しのける者がいた。
「津波への対応って、何がだ?戦艦“音戸”に連絡するくらいだろ?」
飛行服のままの姫城大佐が言った。
「このままだとセンヌが!グリースト帝国が!」
ミーサ大佐は完全に慌てていた。
そんなミーサ大佐に真面目モードになった姫城大佐が冷たく言った。
「それで?」
ミーサ大佐は真面目モードの姫城大佐を見たことが無かったのか、思わず「へっ?」と言っただけだった。
「現在、グリースト帝国は敵国だ。敵国に情けはいらない。
“敵に情けをかけるな。”
谷岡中将、海軍はそんなことも教えてないのか?」
「いや、教えている。」
昔、ヒネク少将からどんな授業をしているか聞いたこともあるし、海軍兵学校は実際に見てきた。
日本民主主義国国防軍では敵にかける情けは“捕虜にする”くらいだ。それ以外は“敵”に対しては容赦するな、気を抜けば死ぬのは自分。となっている。
これは、陸海空軍共通だ。
「司令だって!あそこには送り届けた貴族のご令嬢がいるんじゃないのですか!」
俺はたじろいだ。
アンヌ・グリモー・ブライシュレット。オードリアン事件の被害者の一人で、俺が菊崎市警からの依頼で送り届けた少女だ。
確かに、短い付き合いではあった。
だが、現在は敵国の貴族だ。
正直、どうにかしてやりたい。
だが・・・。
「姫城大佐、敵に情けをかけるな、だったな。」
「ああ。」
俺は通信士に戦艦“音戸”へつなぐように言った。
「艦隊司令、谷岡だ。戦艦“音戸”に、対地砲撃命令を出す。
目標、センヌ。」
艦橋にいた全員が俺を見た。