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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
第3艦隊編
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第3艦隊編-7

みなさん!あけましておめでとうございます!!

いや~、年越しでドタバタしてふと気づけばブックマークも評価も上がっていて、予想外のお年玉が来たものだと内心祝砲を撃ちまくっていた作者です。評価&ブックマーク、ありがとうございます!


今年は忙しくなりそうなので、更新速度が異常なほど遅くなる時期があると思いますが、それでも読んでいただけると幸いです。


あと、作者の木綿豆腐メンタルに配慮した感想もお待ちしております!

14年5月25日


「思ったより時間がかかったな。」

俺がそうつぶやくと隣でヘルマー大佐が言った。

「そりゃあそうでしょう。これだけ輸送船連れて来ているのですから。」

露天艦橋から後方を見れば、輪系配置になった艦隊の中央にいる兵員輸送船、タンカー、物資輸送船。今回はどれも民間徴用ではなく海軍所属の輸送艦で構成できたから、アドリミア派遣と比べて少しは速力を上げれたが、大した差は無い。


やっぱり30kn(=55km/h)くらいで航行する輸送艦がいるか?と、本気で考えてしまうこともある。

さすがに日本民主主義国の技術力では無理だろうけど。

そして前の世界の日本なら可能かもしれないが・・・必要性とコストパフォーマンス等々を考えると、“不要”となるだろうな。


とにかく、第3艦隊は日本民主主義国国防海軍としては初めて、中央大陸の沖合まで来ていた。


「さてと、見た感じすぐ近くに町がありそうに無いな。空母艦載機の偵察機から通信は?」

「それが・・・まだ艦載機との音声通信システムは不調でして・・・」

通信兵が申し訳なさそうにしている後ろを、兵器廠派遣技官の伊豆孝彦大尉達があわただしく走っていく。

「伊豆大尉。艦載機との音声通信はまだできないのか?」

俺は伊豆大尉を捕まえて話した。

「はい。それが持って来たコードに不良品が混ざっていたらしくて・・・。それがどこに使用されてしまったのか現在調査中です。」

「わかった。急いでくれ。」

「ハッ!」

四角眼鏡をクイッとあげ、伊豆大尉は工具箱を持ってどこかへ走って行った。


「空母“立山”より手旗信号!港町を発見したそうです!ここから南へ120kmほどです!」

見張り員が報告に来た。

「よし、そこへ向かおう。あ、できたら航空写真を撮らせてくれ。」

「わかりました!」


我が日本民主主義国にはこの周辺海域の海図がない。そのため、中央大陸のだいたいの位置はわかってもグリースト帝国の正確な場所は相変わらずわかってなかった。

そもそも、この世界に“正確な地図”なんて言うものは日本民主主義国が作ったものしか存在しないのだが。


「谷岡中将、第2海軍陸戦師団から艦隊内通信です。」

艦橋脇の簡易通信機にいる通信兵が言った。

「またかよ。」

今度はどんな魔の海域なんだろうか、とか思っていると通信兵が補足した。

「正確には、第2海軍陸戦師団所属兵員輸送船“国後”に乗っておられる外務省派遣職員からです。

すぐに来てほしいとのことです。」


つまりはアドリミア派遣でいう越智さんの立場の人だ。ミッシャー号沈没の報告と、国交を取り持つはずの大使行方不明などなど、外交上の問題を話し合うために外交官が派遣されていた。


第3艦隊は速力を落とし、俺は艦隊の指揮を何気に“艦隊指揮代理”が多いヘルマー大佐に任せた。

・・・今度無理やり艦隊司令に仕立てあげてやろっかな・・・。ってもうそんな権限ないか。


“国後”へ行くと、食堂へ案内された。

「・・・って、外交官が派遣されたとは聞いてましたが、まさかの越智さんですか・・・。」

「まさかってひどい言い方ですね。もう少し年上に対する敬意を払ってくださいよ。」

そう、アドリミア派遣のときの外交官も務めた、越智宗満さんが今回も派遣されていた。だが、今回はずいぶんと多くの部下を引き連れている。

その中でも若くて元気がよさそうなのが一歩前へ出た。

「谷岡中将!初めまして!

自分、越智外交官付の補佐官でリューシュといいます!よろしくお願いします!」

若くてイケメンな男性なのだが・・・いちいちうるさいやつだ。

「第3艦隊司令の谷岡だ。よろしく。」

握手をしてあいさつした。


「それで?話と言うのは?」

主計科の烹炊兵が出してくれたコーヒーをすすりながら俺は訊ねた。

「実は、最近になってグリースト帝国についていろいろとわかってきまして。」

ここで俺は少し疑問に思った。この海上でどうやって情報を仕入れたのだ?日本民主主義国で仕入れて俺に伝える必要のある情報ならこの3週間、いつでも言えただろうに。

まぁいいか、と思いこれについて質問するのは後回しにして話を聞く。


「で、何が分かったんです?」

「グリースト帝国の“やり方”です。」

「“やり方”?」

「ええ。ある意味驚きでしたよ。


そもそも、グリースト帝国は中央大陸の西方にある国家で、中央大陸でもトップ10に入るくらい大きな国です。中央大陸の西方では、国力は首位争いに参加するレベルです。


ですが、一番驚くのはこの国がここまで成長したのは、なんとここ50年の話なのです。」

「え!?

つまり、ここ最近の50年で中央大陸の西方首位レベルまで国が成長したのですか!?」

「そう言うことです。

やり方にも驚きました。


まず、50年前、亜人を人間と認めないことにして、全員奴隷にしました。奴隷となった人たちは、国の安い労働力として、又は軍の捨て駒として使われました。これにより、グリースト帝国は何度か戦争で勝利を収めました。

ですが、亜人もこういっては失礼ですが・・・数に限りがあります。いつまでも捨て駒があるわけありません。



そこで次に行ったのが、買収です。

敵軍の将軍に高い地位と莫大な報酬を約束し、自国を裏切らせたのです。

これによって“優秀な人材”を亜人たちの命を犠牲にしたお金で手に入れていき、グリースト帝国は成長していったのです。」

「・・・聞けば聞くほど最悪な国だな。反吐が出る。」

本当に気分の悪い話だ。

だが正直“命の価値=プライスレス”ではないこの世界では、ある意味“成功”と判定される行為でもある。結果的にグリースト帝国は繁栄し、大きくなったのだ。


「あなたも気を付けてください。必ず、グリースト帝国は我々にも買収を仕掛けてきます。絶対に乗らないように!」

「その言葉、そのままお返しします。」

そう言って席を立とうとして、思い出した。


「ところで“最近になって”わかったって言ってましたが、こんな船内でどうやって知ったのですか?」

リューシュ補佐官が“マズッ”って感じの顔をするが、越智さんはすました顔で答えた。



「外交上の秘密、ってやつですよ。」






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