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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
第3艦隊編
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第3艦隊編-4

自分にとっては忙しい土日が過ぎました。

まぁ、正確にはこれから正月にかけてが一番忙しいのですけどね。


これからも不定期更新でしょうが、よろしくお願いします。

「「ふざけているのですか?」」


海軍総司令部

艦隊総司令室

そこで思わず俺とエヴェリーナ中将の声が見事にハモってしまった。


「ふざけているとはずいぶんな言いようですね。我々は、熟考したうえでの要請を持って来たのですよ?」

軍需庁のラ・ドルフ中佐は笑みを浮かべながら言った。

「要請はわかりました。それではお帰りください。」

エヴェリーナ中将はそう言ってラ・ドルフ中佐を帰した。


「いったいどういうことなんだ?」

俺は勝手知ったるなんとやら、で応接セットに深く腰掛けた。

「わかりません。とても、常識的な判断とは思えません。」


軍需庁の要請。それは、第3艦隊に空母を置いて行け、と言ったのだ。

全く持って意味不明である。第3艦隊から空母を抜くぐらいなら別の艦隊を編成するか、別の艦隊を動員したほうが早い。だがそれが、“軍需庁の熟考した結果”だそうだ。

だが、軍需庁に海軍の内部まで口出しする権利はない。そのため“要請”というあやふやなものがやってきたというわけだ。


「それで?艦隊総司令殿?どうするんだ?第3艦隊司令は艦隊総司令殿の命令に従うぞ。」

俺はリネット中尉が入れてくれたコーヒーを飲みながら言った。

「このようなバカげた要請、私が取り合うと思いますか?室長。」

「そうとは思わんが、一応な。」

「もちろん却下です。」

「了解。それと、俺の提案は?」

「兵器廠軍艦部の人たちも賛成してくださいました。ですが、時間がないため急あつらえ感は否めないとのことです。しかも、航行中にも工事するとのことです。」

「ん、わかった。感謝するよ。エヴェリーナ中将。」


俺の提案。

それは、空母部隊の指揮を別の艦で取ること。

空母と言うのはとにかく余裕がない。少しでも多く艦載機を積むために格納庫が大きく作られている。さらに、艦橋は飛行甲板脇の構造物に在り、狭い。そんな艦を旗艦にした場合、艦隊司令部を置くスペースがないのだ。

空母“立山”も同じで、今までは艦橋などで思いっきり幹部が集まって海図を広げることができたが“立山”ではそれができない。艦長に操舵手など、必要な人員以外の人物がうろうろする余裕がないのだ。

ならば、別の場所に艦隊司令部を設置できる部屋を設ければよかったのであろうが、残念ながらその発想が出る前に立山型航空母艦は完成してしまった。


さらに、もう一つ問題がある。

無線の受信感度が悪いのだ。

艦橋が狭いということは、艦橋上のスペースも狭い。八木アンテナ(前の世界ではテレビの受信などに使われるアンテナ)を使っているため問題があるほどではないのだが、遠く離れた艦載機に積まれた小型無線機からの音声通信を受信するにはとても不安だったのだ。安心して受信するには、真空管など無線機自体の性能を上げるか、アンテナを大きくするかのどちらかだ。だが、前者はどうしようもなく、後者はスペース的に無理だった。


それで俺がエヴェリーナ中将に頼んだのが・・・


「いったいいきなりドックに入れられて作業員があわただしく工事したかと思ったら、やはり谷岡中将でしたか・・・」

「やはりって何だ?やはりって!」

苦笑いするヘルマー大佐。そう、ここは戦艦“瀬戸”の露天艦橋。

日本民主主義国初の戦艦となった戦艦“瀬戸”“音戸”も“最新鋭”の座は半年前に他の艦に譲り渡し、第2艦隊所属になっていた。ところが、桜市のドックだけでなく菊崎市の海軍総司令部ドックも本格稼働したため、次々と新鋭艦が就役。戦艦“瀬戸”“音戸”の瀬戸型戦艦が第2艦隊を追われる日も秒読みに入っていた。


もともと、「そんな最初から大和ほどデカい戦艦が作れるわけはないだろう。」と金剛型戦艦くらいの巡洋戦艦を目指して建造されたため、船体の改修と機関の強化で速力だけは上がっている。上がっていないのは、主砲の口径だけか。


よって、空母随伴艦としての速力も問題なし。スペースはあちらこちらにある。第2艦隊からもおさらば予定。

都合の良い物件を見つけて俺は喜んで改造したわけだ。


第3艦隊旗艦用に。


「それにしても、ヘルマー大佐はもう新鋭戦艦の艦長になっていると思っていたが・・・」

「どうにも愛着がわきましてね。出来るだけ“瀬戸”でって言ったら、こうなりました。」

「なりほど~。」


そこへ、作業服を着た作業員集団がやってきた。俺とヘルマー大佐の前で敬礼する。

「軍需庁兵器廠通信部所属の伊豆孝彦大尉以下20名。お世話になります。」

「ん、よろしく。」

ヘルマー大佐が軽く敬礼した。

案内役の海兵に連れられて、作業員服集団は艦内に姿を消した。


「そういえば航海中も工事するんでしたね。」

「ああ。今のアンテナでも受信できるんだが、兵器廠かれらが言うにはアンテナを改修工事しないと遠く離れた艦載機からの音声通信の受信が難しいらしい。私にはよくわからんよ」

「右に同じく。」

「・・・ところでふと思ったのですが・・・」

「ん?」

「あの兵器廠通信部の皆さん・・・やたら眼鏡率高くないですか?」

「それは思った。」


そんなどうでもいい話をしながら、俺は甲板から艦内に入った。



今回は第3艦隊は大所帯となる。

なぜなら第3艦隊の麾下に臨時で第2海軍陸戦師団が編入されるからだ。

いくら遭難者とはいえ、一度は戦ってしまった相手だ。警備の手薄な船なんかに乗せたら船ごと乗っ取られるのではないか?という判断で、新設された第2海軍陸戦師団の訓練も兼ねて遭難者を第2海軍陸戦師団が“護衛”していくこととなった。


「まったく・・・。佐藤の結婚式、出れそうにないな。」

戦艦“瀬戸”の露天艦橋から陸地を見ながら、小声でつぶやいた。






少々間違いがあったので訂正しました。

失礼しました。

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