表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
出向編 続き
103/174

出向編-16

残極な描写あり。

「あ、あ・・・」

王子に突き飛ばされた空軍兵は自分の腰を見て驚く。第1空挺団は特殊部隊。そのため、腰のベルトには予備の武器が備わっている。そのうちの、サバイバルナイフがないことに気づいたのだ。


そのサバイバルナイフは、王子の手にあった。



「お、おい!何をしている!取り押さえろ!」

鯵川大将が叫ぶ。

すると、今度は窓が割れる音がした。

「王女が身を投げた!」

空軍兵が叫ぶ。

状況は素早く、かつ意味不明に進んだ。


「ええい!」

空軍兵が国王の上にいる王子に飛びかかった。王子はそれをひらりと軽くかわす。そして、自分の母、王女が身投げした窓へ一直線に走り始めた。


「こなくそ!」

俺は、その王子に体当たりして突き飛ばした。大柄な体格の俺だ。さすがの王子も吹っ飛んだ。


「おらぁー!」

空軍兵が飛びかかってさらに手錠をし、片方を国王のベッドの足に繋いだ。これで逃げられない。


「衛生兵!い、いや、軍医を呼べ!」

とにかく大パニックだった。


「こ、これで・・・。安心・・・して・・・終わらせられる。



この、どうしようのない・・・終わらせようのない・・・演技を。」


その後、軍医が駆けつけたが時すでに遅く、キレヌ王国国王は息を引き取った。




「キレヌ王国元王子、カーラ・キレヌです。」


王宮敷地内に設置されたテント。いや、正確には仮設住宅と言ったほうが正しいか。野戦病院セットと同じ構造の物である。

そこで、キレヌ王国王子の取り調べが始まった。


取り調べはこの場にいるものの中で“警察官としての経験がある者”として俺が選ばれた。

「さて、あの殺害と、王女の自殺、説明してくれるかな。」

王子は自己紹介以外黙ったままだ。

かれこれこれが、2時間以上続いていた。


ノックしてリネット中尉が中に入って来た。そして、連絡を耳打ちしれくれる。

「ご苦労。外で待機してくれ。」

そう言ってリネット中尉に敬礼した。


「王子、王女のご遺体ですが、どうすればいいですかね?我々はこの国の風習を知らないので・・・。お葬式の仕方とかありますか?」

この言葉には反応した。

「・・・本当に、やさしい。あなたの国は。」

「は?」

「さっきここに移るときに外を見た。あなたたち、キレヌ王国の兵の死体を埋めていたでしょ。」

「え、ええ。あ、まずかったですか?宗教的な何かに触れますかね?」

「別に。それでいいわ。もう、キレヌ王国は無いのだから。


ここは、日本民主主義国占領下の都市、キレヌ。もう、キレヌ王国ではない。」

そうつぶやいて、王子は笑った。

この美青年、笑うと良い笑顔をすると思うのだが、この笑顔はどこかやつれていた。


「そうね。すべて話すわ。



最近のキレヌ王国は、もうどうしようもなかった。何代か前の国王が、貴族をやたら作ってしまったことからこの国の崩壊は始まった。貴族なんてそう簡単になくなるものじゃない。何か没落する原因でもあれば話は別だけど。

貴族が多くなったせいで税金は上がって、国民は国を捨てる。税収が減って貴族は税を上げる。これが繰り返された。

そのうちこれも無理になって貴族たちは商人とつるんで不正なお金を得る。そしてまた、国民の不満が高まる。


私の父はどうにかしようと、定期的に不正貴族の摘発を始めました。それでも、一気にやれば間違いなく国は転覆します。そこで、少しずつ、摘発していきました。」


ここで俺は疑問を感じた。

「少しずつ?今回だけはずいぶんと大がかりにやったようだが」

「ええ、父が突然変更しました。すべて、“一掃”すると。」

「なぜ?」

「あなたたちが来るからです。」



はっ?




「父は、このまま定期的に貴族を摘発しても摘発しきる前にキレヌ王国の財政が破たんすることが目に見えていました。だから、わざと問題の起こしそうな貴族をあなたの国へ大使として送り、ケンカを売って、あなたたちをおびき寄せたのです。

そして、あなた方の掲げる“ジンドウテキ”に父は目をつけ、わざと自国を進行させ、王家が皆死ぬことで日本民主主義国に無理やりここを統治させようとしたのですよ。今後もずっと。」

「どういうことだ?」

「父は、国民思いでした。

父なりにどうすれば国民が幸せになるかを考えてきました。


結果は、この国を終わらせる、でした。


だけど、そうなると代わりの統治者、または執政者が必要です。そうでないと国民はただ迷うだけです。」

「なるほど。

日本民主主義国おれたちにここを占領させて、他に統治できそうな者、つまり王家の血筋を根絶やしにすれば、“人道的”な看板から日本民主主義国は簡単にこの地を捨てられない。その先はどう転ぼうと、キレヌ王国時代よりかはよくなるってわけか。」


それが、あの王家集団自殺(一部未遂)の原因か。


「それで?どうするんだ王子様。見ての通りその計画は失敗だ。王家の血筋は生き残った。見た感じ、あんたは15歳くらいかな?日本民主主義国にとってこの地は金食い虫になるだけだ。おそらくあんたに統治を任せて、賠償金請求だけして帰るぞ?」

「あ、そうだ!もう一つ言い忘れた。」

「?」

そういって王子は俺の手を取った。


それを胸へ・・・



ムニュ。


「ふぇ?」

思わずバカみたいな声が出た。

「この国には、王子なんていなかったんだよ。」





・・・




取り調べ規則

捜査官が異性の被疑者を取り調べる時は、必ず被疑者と同性の捜査官を付けること。



「リネット中尉―――――!!!!!」




俺は大声で叫んだ。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ