表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/78

帰り道の途中

「ナミってもしかして、水泳で潜水とか得意?」


「よく気付いたね、香楽。今年のプールじゃ披露出来なかったけど、ナミは籠目中の潜水の記録保持者だよ。」

「やっぱり!ナミの秘密はそれか〜。」 


 詩織と真夢がもうすぐを卒業を迎える少し前の月。2月の中旬。

 部活で帰りが遅くなった七海と絵里子、そして美鷹中学からの推薦入学で新たに籠目高校でバスケ部員として活動することになったシンディ香楽の3人は、もうほとんど暗くなった鳳町の人気の少ない通りを、いつものように部活の話に花を咲かせながらワイワイと歩いていた。

 最近の部活の話題の中心と言えば、もっぱら香楽が特に興味を持ち始めた七海に関する事。普段はおしとやかでおよそスポーツには一見すると縁がほとんど無いように見える彼女が、部活動になるとなぜあれほどの動きが出来るようになるかという事に、興味深々で大真面目に疑問を投げかけているのである。

 

 香楽から見れば、絵里子に関してのスポーツの才能は納得出来るものがある。彼女は小回りは苦手なものの、直線的な機動力は男子顔負けのものがあり、積極性な戦略を瞬時に組み立てられる攻めの姿勢も折り紙付き。厳しい練習にもひょうひょうと付き合える少しお得な性格も考えれば、むしろキャプテンとしての器もあると考えてもいいだろう。

 しかし七海はどこからどう見ても、普段はとても人をまとめるようなリーダー的な性格とは思えず、どちらかと言うと人に引っ張られるタイプの人間である。それは部活の最中も変わりは無いのだが、なぜか彼女は対外練習や試合になるとゲームの中核を完全に支配し、結果勝利のための立役者になっているのである。

 

 七海と絵里子の間にある秘密兵器【ノーサインパス】。これはこの2人が相手の位置を確認しなくとも、お互いの位置や動きを瞬時に察知しパスを出し合うというもので、他校から警戒されている戦法ではあるが、その攻略法は未だに発見されていない。しかし香楽は2人と一緒に部活をするようになり、このノーサインパスがお互いの位置を察知し合っているのでは無く、どちらかと言うと七海が絵里子の判断を見抜き、彼女の動きに合わせて動いているということを知ることができた。

 そしてもう一つの不思議が、彼女の運動能力の事。七海はバスケの際には、その動きがどう見ても他の選手とは大きく異なっている。彼女の小回りの良さは前から知っていたことだが、七海のそれはまるで別世界のもので、彼女だけに注目して試合を見ると、本来体力を大きく消耗するはずのダッシュ&ターンが全く途切れることが無い。普段の体育の授業では七海の運動能力は瞬発力も持久力もさほど秀でているというわけでも無いので、そこがどうしても香楽には理解し難い部分だったのである。


「普段のナミを見てると、どうして部活であんなスゴイ動きが出来るのかなって不思議に思うけど、ナミって無酸素運動がずば抜けてるんじゃ無い?」

 香楽が七海に質問をすると、そこに絵里子が割って入った。

「香楽、そういう『無酸素運動』とか難しい事ナミに言っても、『ホァ?』で終わっちゃうよ。」

「え〜と、つまり・・・。普通の人だと100mぐらい全力疾走するとガス欠になるけど、ナミは1000mぐらい全力疾走できるってこと・・・かな?」

 するとようやく七海が香楽の問いかけに、不思議そうな表情で答える。


「ホァ?うん・・。まぁそんな感じかな?」

「やっぱり!道理であんな体力激削りの動きを息を切らさずに連続でやり続けるなんて、おかしいと思ったんだ。」

 そして香楽と七海の顔を見て、絵里子がケラケラと笑いながら七海の肩に手を置き、香楽の顔を見た。


「香楽。実はまだ見た事無いと思うけど、ナミって体力が限界に来ると、電池が切れたみたいに動かなくなるんだ。まあ普通の人の体力はマンガン電池みたいなもんだけど、なぜかこいつだけは、アルカリ電池なんだよね〜☆」

「リコ。それってあたしのこと褒めてるの?それともけなしてる?」

「褒めてるに決まってるじゃん!でも動かなくなった時のナミは、ホントに糸が切れたマリオネットみたいで面白いけどね。」

「・・・やっぱり笑われてる気がする!」

 そして少し不満気な表情を見せる七海を他所に、絵里子と香楽は大笑いをした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ