意外な行く末
真夢が特殊能力【真実の瞳】で見たモノリスの弱点。その土台に見事に燭台の炎を命中させた彼女は、巨大な金属のタワーの様子を固唾を呑んで見守った。モノリスは最初に小さくユラリと揺れたような気がしたが、そこにすぐに大きな変化が訪れた。モノリスは次第に姿勢を斜めに傾けていくと、巨大な破砕音を響かせ倒れ始めたのである。
擬音で例えられないような奇妙な音を立てて崩れ行くモノリスに、ビヤーキーのほとんどが激しい動揺を見せ、傾きを正そうとその上部へ向けて羽ばたいていく。しかしモノリスは金属の塊で重量も半端では無く、とてもビヤーキーの群れ程度の力では押し留められそうには無い。
付近に巻き起こる噴煙と、あきらめ逃げ去ろうとする一部のビヤーキーたち。しかしその喧騒にも一切の関心を示さず、モノリスは更に傾きを増していく。
そしてその時、思わぬ事態が目の前で引き起こされた。
モノリスはハスター降臨の象徴のサインとしてV字型に整然と並べられているが、真夢が見事に倒したモノリスがちょうど扇の要の位置にあったため、まるでドミノのように他のモノリスを巻き込んでいく。
それはまるで巨大なゲームの一部を見ているようだったが、モノリスは多くのビヤーキーを確実に巻き込み、ハスターの僕たちを押しつぶしていったのである。
真夢はこの壮大なドミノ倒しの光景を見て、それをしたのが自分だとは信じられないといったような顔をしていたが、やがて最後の地響きが終わり、辺りを覆った噴煙が落ち着いた時、やっと自分の行動が実を結んだことを実感した。
モノリスは完全に崩れ去り、その巨大な金属板に押しつぶされた多くのビヤーキーの死骸が辺りに転がっている。
まだリャンはニャルラトテップに捕まったままだったが、その邪神もこの大騒動に満足したのか呆けながらも不思議な笑みを浮かべていて、真夢はここから事態が大きく変化するのではと実感に近い希望を抱いていた。
しかし。
その真夢の希望は、信じられない残酷な運命により崩れ去ることになった。
真夢がモノリスの破壊に喜び、飛び上がろうとしたその時だった。彼女は背中に小さな違和感を受けた。その違和感は、最初は背中を軽く押された程度のものに感じたが、それはやがて彼女の背中をジワジワと這い上がり、血管を通すように腹部まで伝わっていく。真夢はその感触の源を確かめるために後ろを振り向こうとしたが、まるで体中の骨が鎖で縛られているように力が出ない。
そして彼女が感覚の先にある自分の腹部に目を落とした時、この奇妙な違和感の正体を知ることになった。
真夢の腹部に見えたのは、彼女の背中から突き刺された剣の切っ先。それは真夢の血を吸うように赤く染まり、次第に彼女の喉に辛い血液が湧くのを誘わせる。そしてこの致命傷は真夢の体に信じられないような痛みをもたらしたが、同時に彼女の意識を刈り取り、その記憶を闇の中へと吸い込んでいく。
真夢は実感した。今彼女のすぐ傍に、【死】が這い寄っていることを。
真夢は一本の長剣により、背中から刺されていたのである。
そして彼女は意識を失う前に、その剣を持つ者の正体を見ていた。
彼女を刺したのは、他でもない【詩織】。
彼女は最愛の親友の持つ剣により体を貫かれ、その狂気の瞳の前で崩れ落ちるように倒れ、動かなくなってしまったのだった。
「・・・シオリ・・・ちゃん?」




