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セラエノへ

「メアリー!」

「キララ♪」


 久しぶりの再開を果たした輝蘭とメアリーは、心からの喜びの抱擁を交わした。ほんの少し前までは輝蘭の反応の悪さに機嫌が悪かったメアリーだったが、事情さえ判ってしまえば後はどうという事は無い。そしてしばらくお互いの感触を確かめながら小さな思い出話のやりとりをしたが、本来ここに現れるはずの無いメアリーが現れたということには必ず意味があると輝蘭は気付き、彼女に鳳町への再来の理由を聞いた。


「メアリー、また逢えてうれしいです。でもあなたがここに来たということは、また何かが起きるということを報せに来てくれたということではありませんか?」

「さすがキララ。勘が鋭いね。」

 そしてメアリーは胸元に手を入れると、そこから小さな碧く輝く玉を取り出した。


「メアリー。それは?」

「憶えてる?これ、【碧星】だよ。」

「碧星?メアリーの時代と私たちの時代をつないだ、あの碧星ですか?」

「うん。」

「でも、あれはもう壊れたのではありませんでしたか?」


「でもね。今回はどうしてもキララに伝えたいことがあって、あたしの仲間たちの能力をフル回転させて、短い期間だけ再生させることに成功したんだ。」

「再生?」

「うん。あたしたちの住む過去のヨルダンからここに来るには、どうしても大量のエネルギーが必要になる。あたしが人間のままだとエネルギーの消費量が多過ぎるから、キララに大仕事をしてもらうために、もう一回人形に魂を移して、あたしだけがここに来たっていうわけ。」

 そしてメアリーは碧星を懐にしまうと、輝蘭の思いも寄らない話を始めた・・・。


 メアリーの話によると、輝蘭たちの時代のある時期に2つの【外なる神】【旧支配者】が同時に脅威を及ぼす時期があり、それがすぐ間近に迫っているらしい。これらの事は全てメアリーの【碧星】による予言で判ることで、本来はこのような未来は予測されていなかったが、ここ数日の星辰(星の並び)の位置が急激に変わり、その結果輝蘭たちの時代のすぐ後が全て空白になってしまう異常事態が予測されるようになったということだった。

 この地球に影響を及ぼす邪神は【アザトースの種子】【ハスター】の2体。特に【アザトースの種子】の脅威は他に類を見ないほどに強大なもので、確実な方法を確立しない限り、人間の終焉は免れないということだった。

 輝蘭は詩織と真夢がハスターの手により失踪してしまったことをメアリーに伝えたが、彼女は2人の事を心配しつつも、それは後回しにするべきだと主張した。ハスターの脅威はもちろん恐れなければならないことだが、今は石着山に落ちた【アザトースの種子】をどうにかしないと、もし詩織たちが無事でも帰る場所が無くなってしまうと言うのである。

「キララ。これからあたしたちがすることは、アザトースの種子にもハスターにも対処できる方法になると思うの。あの子の事が心配なのは判るけど、今はあたしたちがしなければならない事に集中して。」

「・・・判りました。少しでも良い方向に向かう方法があるなら、それに賭けてみましょう。それで、どうすれば良いのですか?」

「うん。あたしと一緒に【セラエノ図書館】に行って。」

「瀬良江の図書館?」

 輝蘭は聞き覚えのある単語に、フイと首を傾げた。

「瀬良江の図書館って・・あの美鷹市にある図書館ですか?」

「え・・・ここにはそんなのがあるの?違う違う!【セラエノ図書館】っていうのは、ここから400万光年離れた所にある、全宇宙の知識が詰まった情報保管庫のことだよ!」


 セラエノ図書館とは、旧支配者が【旧き神】より奪い取った知識が蓄積してある場所。そこはしわのある円錐形の生物に管理された施設で、プレアデス星団の恒星セラエノにあり、宇宙のありとあらゆる情報を閲覧できる場所だという。

 ちなみに資料の持ち出しは禁止されているらしい(笑)


「もしかしてラバン・シュルズベリィ博士の書いた【セラエノ断章】のセラエノって。」

「な〜んだ。キララもセラエノのこと知ってるんじゃない。」

「それで、私がそこでやることというのは・・・?」


「決まってるじゃない。セラエノで【アザトースの種子】を回避する方法を見つけること!これが出来るのは、多分キララだけだと思うよ。」

「出来るかしら・・。私に・・。」

 するとメアリーは彼女の両手を取って、とびっきりの笑顔を彼女に向けた。それはあの小学生だった頃の懐かしく暖かい思い出を呼び起こし、あの時と同じように、メアリーが彼女に伝えたい事が言葉を使わなくとも伝わってくるように感じる。


「キララ。キララになら出来るよ。あなたの知識の吸収力は半端じゃ無いし、あたしがちゃ〜んとキララの後ろにいてあげるよ!」

「・・・メアリー・・・。」

「キララには心から信頼できる友だちがたくさんいるんでしょ?それならそれと同じぐらい、あなた自身のことも信じてあげなくちゃね☆」


 そして輝蘭は【碧星】の能力を借り、メアリーと共に遠いプレアデス星団の彼方へと向かっていった。

 メアリーの予測によると、【アザトースの種子】の発芽が始まるのは約1週間後。ここで輝蘭は3人目の失踪者として扱われることになったが、彼女の生還は地球滅亡へのタイムリミットに大きく関わる運命となったのである。

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