3両目
佐藤優子は巷で有名な女子校に通う高校一年生
女子校たるゆえ色々なルールがあり、校則が厳しいことで有名だ
スカートは膝丈 それ以上でも以下でもダメ
髪の毛は肩につく長さは三つ編みか後ろで束ねる
化粧それに類すること禁止
学校指定のカバン以外禁止
異性交遊禁止
エトセトラ・・・
その女子校がある駅を通るのが北武線
7時32分発 新港北行き
3両目ボックス席
進行方向に対して後ろ向きの席が優子の指定席だ
毎朝ここに座り
こんな風に窓の外を見ている
そこへ軽快な足音と共にやってきた友人真理子が
優子の前にどさっと腰を下ろした
「ギリギリセーフ!あ?優子すっげー美味しそうじゃんソレ」
と、優子のカバンからちらっと見えてるメロンパンを指差す
真理子は高一にしてはおしゃまな女の子で
オンザ眉毛の前髪が似合ってしまうような
まだ中学生感覚が抜けきっていない困ったちゃんだ
「食べたいの?いいよー」とメロンパンを差し出すと
「え?マジ?らっきーちゃちゃちゃ、ウー!もうさーお腹空いてて死にそう!」
優子の手からあっと言う間にメロンパンを抜くと
「ちんたらしてると先コーに見つかっちゃう!」とちょっと隠れるようにメロンパンを食べだす
くすくすと笑いながら真理子に気がつかれないようにホームを見る
今日はあの人くるかな〜。。
時計をちらっと見ると7時30分
あと少しで発車するはず
まだ彼は来ない・・
真理子が大きな声で弟の愚痴を言っている
こうやってダベっているとあっという間に発車時間だ
♪♪♪♪ ♪♪ ♪♪♪ ♪ ♪ ♪ 〜
発車のアナウンスが聞こえる
今日は来ないのかな。。。
そう思った瞬間
ドアからスルリと人影が入って来た
あ・・・
きた・・・
逆光で見えないけど、あのガタイの良さは絶対に彼だ・・・
始業式の日からずっとずっと気になっていた彼・・・
名前は、、、そう、、、鈴木健二くん
彼も北武線の3両目を定位置にしてるみたい
優子が通う女子高と同じ路線にある有名男子高の生徒だ
いつも大きなスポーツカバンを斜めに下げ
短髪の髪の毛はつんつんに立っている
電車が発車してから20分間
彼の事をあれこれ想像しながらちらちら見る毎日・・
何のスポーツしてるんだろ・・?
あれはどこのカバン・・?
大きな時計だなぁ・・
見てるだけ
それだけで満足だったはずなのに・・
はず・・・なのに・・・
ちくりと胸が痛くなるの・・なぜ?
最初は名前も分からなかった
学生カバンの横に小さく書いてある名前を必死に読もうとした
電車から降りる時に・・
名字が鈴木君だってことは分かったんだけど、どうしても分からなかった下の名前
偶然、彼の友達が「おい!健二!」って呼んだのをきっかけに
彼が健二君だと判明した
その日は、周りの景色ががらりとかわるくらい嬉しかった
あぁ、あと1駅で降りなきゃ・・
前に座る真理子がごそごそと慌ててる
優子もポケットの定期を取りだそうと下を向いた
その時・・・
フト、自分を覆うかのような影ができた
顔をあげると目の前に彼が立っていた
え・・・?
彼は少し恥ずかしそうに伏せがちな目で
「ほれ。」と紙袋を渡して来た
条件反射で受け取る自分
ほのかにあたたかい・・・
これは・・・?
前に座っている真理子はなんじゃらほい?!?
と、口がぽかーんと開いたままだ
「ほら、降りないとだろ?」
思わず優子は「健二くん?」と言ってしまった
慌てて口を抑えるが後の祭り・・
当の健二君はニヤッと笑うとこう言った
「また明日な 優子!」
優しく私の背中を押してくれた
ガッタンゴットン ガッタンゴットン ガッタンゴットン・・
呆然とする優子を置いて走り去る電車・・
紙袋の中身は・・・
焼きたてのメロンパンだった・・
隣で真理子がとんでもハップンだと興奮して騒いでいる
「思わず耳がダンボになっちゃったじゃん!あいつボンクラっぽいくせにめちゃんこやるじゃん!やったね優子!両思いじゃん!」
「ちょ・・・やめてよ!」
真理子の興奮はまだおさまりそうもない
反して優子は冷静になってしまった
健二君・・・明日な!って・・・
明日って・・・
明日は優子の誕生日だ・・・
まさかね・・・
優子は高校へと向う坂をフワフワしながら歩くのだった・・・
おしまい
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今日は雨模様ですねー
通学路にはいろんなドラマがありますよね
懐かしい〜この感覚!
庭子さま楽しい企画をありがとうございます!
frm葉琉日
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