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迷宮偏愛者の探索者、ダンジョンマスターの作ったダンジョンが雑なので作り直す。  作者: 森田季節


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9 S級探索者、モンスター設置にアドバイスする

「次は敵ですね。まず、アークデーモンを設置したのはまずいです。申し訳ないですが、これはナシということにしてください。難しいダンジョンとユーザーに不親切なダンジョンは近いようで別なので」


「それ、まずいよね……。実は……場所を移動したり削除したりする方法がわからなくて……。ちなみに、倒された後もそのボタンで設置することはできるんだけど、一回設置すると消去ってわけにはいかなくて」



 たしかにデータじゃなくて、モンスターは生物だからな。

 でなければ、モンスターの毛皮を持ち帰るようなことが成立しない。

 私は少し石板状のアーティファクトをいじる。



===

モンスター・アイテム移動

元の場所


移動したい場所



※壁の中などへの移動はできません。

===



「ああ、ここの空欄に入力すれば動かすことはできそうですね」


「だから、キララさん、なんでわかるの!? ちょっと待って! メモするから!」



 ダンジョンマスター様はメモ帳を出した。うん、やる気がないんじゃなくて、どうしていいかわからなくて投げ出しかけてたんだな。

 だったら丁寧に教えれば打開できるはずだ。こういうのはつまずくと急につまらなくなっちゃうからな。



「バランスが崩れすぎるモンスターは専用の小部屋を作って、一度そちらに移し替えましょう。地下10階前後で出すとしたら、このあたりのモンスターですかね」


「うわあ……。どんどん整理されてく……」


「それと、このダンジョンって地下何階までが最下層になる前提だったんですか?」


「…………地下30階のつもりだったんだけどさ……」



 ダンジョンマスター様はがっくりと肩を落とした。



「途中から何をしていいかわからなくなって、何も思いつかなくなってとりあえず現時点の最下層でしばらく籠もってた……」



 空中分解しちゃったか。地下30階まで過不足なくダンジョンを作るって相当な技巧や経験がいる――はずだ。

 ところで地下に穴を掘ってるのに空中分解って表現はおかしいか。地底分解? それだとただ、土に還ってるだけか。



「まずは地下10階ぐらいの規模を目指すというのはどうでしょう。それなら、難易度設定も把握しやすいです」


「10階に必要なモンスターってどんなものかな……。教本を探したんだけど書いてなくて……」


「一概には言えないんですが、いきなり最下層のモンスターを設定するのはバランスが難しいですよ。たとえば地下2階は地下1階のモンスターと戦うよりちょっとだけ強い、地下3階は地下2階よりはちょっとだけ強い――というように前のフロアより難しくなるように考えていくというのはどうですか?」


「……キララさん、本当に先生みたいだね。ダンジョン作ったことあるの?」


「いえ、あるわけないですよ。Sランク探索者になったところで、地下何階も続くダンジョンを自力で掘ることなんてできませんからね。まして本格的な地下30階まで続くダンジョンなんて巨大な神殿を作るよりお金がかかるはずなんです」



 そう、ダンジョンって土木作業として考えると絶対にお金が足りないぐらい大変なものが多い。



「それが無料で遊べるんですから最高です。ああ、探索者って仕事があってよかった~!」



 ダンジョンマスター様がちょっと引いてる気がするので、私はモンスター設定の仕事に戻る。



「じゃあ、アルテ様、モンスターの配置を行ってみてください」


「う、うん……。わからないところがあったら聞いていい?」


「どうぞ、どうぞ。でも、まずは自分で考えを持って、試していくことが大切です」


「ええと、ええと……前のフロアの中で一番弱いモンスターを、これまでで一番強いモンスターに切り替えていけば、フロアが下に行くごとに階段状に難易度が上がってく?」



 つまり、地下1階に 敵A・敵B・敵C が出現するとすると、

     地下2階は 敵B・敵C・敵D という設定に、

     地下3階は 敵C・敵D・敵E という設定にしていったらいいんじゃないかということだ。



 地下3階ではは地下1階で最強だった敵Cが最弱の設定になっている。もちろん地下1階より難しい。



「なるほど。いい線いってます! 考え方自体は何も間違ってません。出現するモンスターの種類が少ない場合はこれでもグラデーションはつきますね」


「よかった~」



 ダンジョンマスター様はほっと胸を撫でおろしている。



「では、一度それでモンスターを設定してみてください。当然、すでに設定しているもので問題ないところはそのままでいいですよ」



 画面にモンスターのグラフィックらしきものが表示される。

 こんなふうにモンスターって管理されてたんだな。世界の秘密を覗いてしまった気分だ、いや、まさに世界の秘密を覗いてしまってるのか。



 データ入力だけだからか、15分ほどでモンスターの配置変更は終わった。



「ひとまず設定してみたよ。設定してみたんだけど……正直なところ、自信がないんだよね……。あの、キララさん、少し確認してみてくれない? キララさんなら絶対大丈夫な次元だと思うし」


「それは問題ないですけど、ここ、地下17階ですよね。地下10階が最下層のダンジョンに到達する手段が必要です」


「ああ、ほんとだ。これを渡しておくね」



 ダンジョンマスター様は私に指輪を渡してくれた。



「それは【フロア移動の指輪】ってアーティファクト。すでに到達してる階層には、地上にも、地下17階にも瞬間で移動できるから」


「わかりました。じゃあ、これで地上から地下10階まで降りてみますね」


「うん、キララさんの移動の様子はここから画面で観察できるし、もし指輪に不具合があってもここから階段を作るとかワープホールを作るとか何か助け船は出せる」



 さらにテンション上がってきた!

 私は指輪を指にはめて、地上階と念じた。





 次の瞬間にはダンジョンの入り口に到着していた。



「うわー! わわわわわわっ! キララ様、いきなり現れましたよね!」



 見張り役の探索者であるレオマが呆然としていた。

 あっ……。いきなり出現したら驚きもされるか。



「ああ、ワープホールみたいなものがあると思ったらここに飛んできちゃうんですね。これは気づかなかった……あっははは……」



 ダンジョンは何でもアリだからこれで誤魔化せる。



「ダンジョンはどうでしたか、キララ様?」


「……う~んとね、まだ変化が激しいみたいだから、しばらくは立ち入り禁止にしたほうが安全かもしれないです」



 今、探索者が続々と入ると混乱するしな。



「しかもアークデーモンが地下9階に出ましたし」


「えええっ! そんなの危険すぎて誰も入りませんよ!」


「まあ、ダンジョン側も混乱してるようだから、そのうちまともなバランスになりますよ。安全になったら教えます」


「なんか、キララ様、ダンジョンを作ってる側みたいな意見ですね。Sランクともなると、そっち側の意見になるのもわかりますけど」



 あんまりしゃべるとボロが出そうだから、私はまたダンジョンに入ることにした。

空き時間に短編で「自己評価【三流】の魔法使い、婚約破棄後にその力を見出され、伝説の古代魔法の英雄と認められる ~不要と言われていた魔法は魔族を撃滅する古代魔法で、大貴族にまで立身しました~ 」という作品を投稿してみました。

よろしければこちらもごらんいただけますと、とてもうれしいです!


もちろん、こちらの作品も更新していきます!

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