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迷宮偏愛者の探索者、ダンジョンマスターの作ったダンジョンが雑なので作り直す。  作者: 森田季節


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8 S級探索者、ダンジョンマスターのお手伝いをする

 ダンジョンマスター様はものすごく迷った顔をしていた。



「ダンジョンマスターの助手? そんなことやっていいか悪いか、教本にも書いてなかったなあ……」


「書いてないってことはやってもOKということじゃないでしょうか? 私はこの世界で一番の探索者なんです。それなりにいい成果を出せるかと思います!」



 おそらく、ダンジョンを攻略する側と接触したらダメなのは当たり前だから書いてないだけな気がするが、それは書いてない側の落ち度だ。ここはゴリ押しでいく。



「そ、そうかな……。書いてないのは本当だし、提出するデータに協力者の有無を書く欄なんてないし、バレないかも……」


「そうです、そうです、バレなきゃいいんです! ぜひダンジョンを作らせてください! 必ずいいものにしてみせます!」



 アルテ様はゆっくりと立ち上がって、タンスの横の壁をぽんと押した。



 するとタンスが横にスライドしてその先にやけにSFチックな扉が出現した。ダンジョンマスター様が近づくと扉は自動的に開いた。



「この先が作業部屋なんだよ。この先は厳密にはこの世界とは違う異空間なんだけど、まあ、言わなきゃバレないのは本当だからいっか。ついてきて」



 私は嬉しすぎて、ちょっと気絶しかけた。

 探索者を長年やってきてよかった。本当によかった!



「……ん? キララさんだっけ? あの、キララさん。キララさん!」


「…………はっ! すみません。衝撃が大きすぎて意識が朦朧としてました」


「ダンジョン、好きすぎじゃん……」








 扉の先に入ると、気圧が変わったような感覚があったが、それ以外の悪影響はなかった。



「ここの空気が毒だってこともないから安心して。これが作業用のスペースで――」



 私はもう作業用のスペースに接近していた。

 スペースの手前には石板が置いてある。置くというより埋め込まれている感じだ。その石板上にはボタンらしきものがいくつも刻まれているので、おそらく機械のようにこれを押して作業するのだろう。

 その前には巨大なモニターがいくつか並んでいて、監視カメラみたいにダンジョン内を移している。ちょうど、ザコモンスターのゴブリンが通り過ぎるのが映った。



「なるほど……。こうやってダンジョン内を監視してるわけですね」


「まあ、監視は補助的な業務で、メインはダンジョンの仕様変更によって環境に問題がないかすぐに確認することだね。新しい罠でそのフロアに立ち入り不可能になっちゃったりするとまずいからさ。ほかにも上りの階段に絶対に戻れなくなっちゃったりすると探索者が詰んじゃうし」


「たしかに。ダンジョンが潜ってる最中に変わるって体験談はよく聞きますけど、あれもオカルトじゃなくて実際にあったんですね」


「人気のダンジョンなら常に誰かしら探索者が入ってるからそういうこともあるんじゃないかな」



 アルテ様は石板のボタンをいくつか押した。やっぱり機械みたいに横のサブ画面に何か文字の一覧が出た。



===

・モンスター

・罠

・部屋

・付属物

===



 よかった。ちゃんとモニターの文字も読める。これがわからなかったら面倒なところだった。



「ここのアーティファクト機構でダンジョンを設計していくんだよ。原理上はどんなものでも作れるんだけど、いざ作るとなると難しくてさ……」


「なるほど、なるほど。ちょっと私に操作させてもらえませんか?」


「いいけど、この世界の人ってこういう機械の扱いって難しいんじゃない?」



 操作キーに当たるものはこれか。

 モンスターのところに矢印を合わせる。


===

弱小モンスター

中級モンスター

上級モンスター

ボスクラス

===



「ああ、どんどん細分化していくシステムですね。弱小モンスターにカーソルを合わせると――やっぱり、ゴブリンとか大サソリとかを選べるのか。ええと、こっちのタブで能力や使用魔法から検索したりもできるし、名前で検索することもできると。うん、けっこう使いやすいですね」


「えっ? やけに慣れてる! なんでできるの!?」


「社畜的な生活もやってたんで、こういうのは割と慣れてます、アルテ様」



 まず、わかりやすいテコ入れの場所で言うと、5つ並んでる謎の部屋か。



===

マップ一覧1ページ目

・地下1階

・地下2階

・地下3階

・地下4階

・地下5階

===



「ええと、あれって何階だったかな。ああ、ここか。選択するとマップが表示されるので、これで拡大すればいいのか。罠やモンスターの設置はこれで……」


「えっ? 本当になんで操作できるわけ? どういうこと?」


「このフロア、なんで同じ構造の部屋が並んでるんですか?」


「え、ええと……それは部屋を作る操作方法がわかって、楽しくて並べてみたんだけど……使用法がいまいちわからなくて……」



 ダンジョンマスター様の声が小さくなる。自信がない証拠だ。気持ちはわかる。操作方法がわかるとつい試したくなる。でも、同じものを並べても効果的な意味を持たないことは多いのだ。



「無駄だよね……。わたしも薄々わかってたんだ。削除してもらっていいよ。削除方法もあるから」


「いえ、せっかく並べたんですから、どうせなら有効活用の方法を考えましょう。同じ小部屋が廊下に面して五つ並んでるダンジョンなんて廃ホテルみたいな特殊なケースぐらいでしか見たことないですよ。上手く活かせばダンジョンの個性になります」


「個性って、全部の部屋に宝箱を設置するとか?」


「そういうのもアリですね。どうせなら、そこにギミックを作りましょう。階段から順に小部屋を1、2、3、4、5として、特定の順番通りに部屋の空の宝箱を開けると、6つ目の部屋が出現して、そこに隠しアイテムが置いてある――こんなのどうでしょう?」



 ダンジョンマスター様の反応がない。

 お気に召さなかっただろうか。まあ、なにせこっちは作り手じゃなくてユーザーだからな。ユーザーの提案が的外れということはどの業界でもよくある。



「……す、すごい、すごい! キララさん、そんなのどうやって思いつくの!?」



 よかった。どうやら感心してくれていたようだ。



 いや~、うれしいな~! 探索者冥利に尽きる!



「場数が多いから、案が浮かんだってだけです。謎解きがメインのダンジョンもたまにありますけど、そういうのはこの手のがよくありますね。入る部屋の順番は壁を少しくり抜いて、格子をつけて牢みたいにして、そこに謎の小さな穴を並べるというのでどうですかね」



 ここはもっとブラッシュアップできそうだけど、あとでいい案が浮かんだら改良すればいいだろう。



「すごい、すごい! これだけですごくちゃんとしたダンジョンって感じが出た! ……いや、だからなんで特定条件で部屋が増えるギミックなんて使えるわけ? そんなの教本にも書いてなかったと思うんだけど……」


「ま、まあ……こういうの慣れですね」


「いや、慣れてるわけないって。こんなアーティファクトを見たのも初でしょ!」



 そういえば、そうだったな……。

 まあ、こういうのってなんとなく過去のゲームや仕事の知識でできるんだよな。


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