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迷宮偏愛者の探索者、ダンジョンマスターの作ったダンジョンが雑なので作り直す。  作者: 森田季節


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5 このダンジョン、何か変……

 私は新たに発見されたというダンジョンへと向かった。

 王都と外側を隔てる大きな川を渡ってから、約2時間の道のりだ。



 平野部の畑の真ん中に、土を集めて捨てたような小山がある。その手前に陥没したような穴が空いていて、「新しいダンジョン。まだ調査前のため危険アリ 探索者協会」と看板が立ってある。



「あっ、キララ様じゃないですか!」



 小山の裏から携帯用干し肉をかじってる女子が出てきた。レオマという女子の探索者だ。女子の探索者は男性探索者よりは少ないので貴重だ。ああ、協会の会長が言ってた、ダンジョンの見張り担当か。



「昨日、Sランクに認定されたばかりですよね! もう、ダンジョン探索ですか?」


「そういうことです。あと、様付けはやめてください。探索者なんて社会からのはみだし者なんですよ」



 Sランクになっても私は原則誰にでも丁寧語で話す。くだけた調子で話して偉そうにしてると思われてもメリットがない。まあ、日本にいた時からの癖だ。



「いやいや……。Sランク探索者って、それは大物貴族でも一目置く英雄みたいなものですよ。まあ、極力『様』呼びはしないよう気をつけます」


「レオマは見張りで来てるんですよね。未調査段階っていっても、見張りをやってなきゃいけないぐらい危険度高いダンジョンには見えないですが」



 難易度が高いダンジョンに命知らずの探索者(ともっと命知らずな一般人)が入らないように監視役が置かれることはある。でも、すべてのダンジョンに見張りを置けるほど人員は余ってないから、あくまで一部だ。


 このダンジョンは外側から見る限り、ありふれた小規模ダンジョンのように思える。探索者協会ではせいぜい地下5階ぐらいまでの規模で、入手できるアイテムも意外性がないものを小規模ダンジョンと分類している。

 見る限りというのは、ぶっちゃけ周囲の様子だ。難易度の高いダンジョンは風格があるのが普通で、そのへんに穴を掘りましたというような見た目はしてない。



 最終的には内部を確認するしかないが、周囲の様子の観察は意外と当たる。

 ボロボロの服を着てる人が庶民か貴族かと問われれば、庶民と答える人のほうが多いだろう。それと似たようなものだ。



「見た目はほんとに浅い、つまんないダンジョンですよね。ただ、先行で入った探索者の情報によると、思ったよりも深そうで、しかもちょっと独特だということなようで。もっとも、見張りが派遣されたのは王都から近いっていうのが大きいですけどね」



 探索者協会は王都にあるので、王都近くに限定すれば手の空いてる探索者もいる。



「何がどう独特なのかは気になりますね」


「とにかく、これまでの常識が通用しないとかで。私も入ってないからよくわかんないですけどね」


「まあ、入ればわかりますよね。ちょっと入ってきます。食糧も結界張る用意もしてきてるから、ダンジョン内での寝泊まりもできます。少し様子を見てきますね」


「はいはい、Sランク探索者でも危ないなら未来永劫誰も入れませんよ。しっかり調べてきてください」












 レオマに別れを告げて私はダンジョンの中に入った。

 入り口はただの穴のようで、土の階段になっていた。よくあるダンジョンの構造だ。

 出てくるのは序盤の階層では定番の大サソリとかトゲ小僧とかいったザコモンスターだった。



「ぶはーっ! ……ぶばばっ! ……ばーっ!」



 私の前に出てきたトゲ小僧は、すぐに怯えた顔になって、逃げていった。本能的に関わったらまずい存在だと気づいたらしい。



 実のところ、ほかのダンジョンでも私はあまり戦闘をしてない。私が避けてるのではなく、モンスターのほうから避けていくのだ。モンスターというのは実力差というのをけっこう感じ取るらしい。

 となると、(なったばかりではあるが)Sランク冒険者はほぼ戦わずにダンジョン探索ができてしまうというわけだ。

 楽ではある一方で、ダンジョン探索の醍醐味の一部が失われているとも言えるので難しいところだ。



「何がどう独特なのか、しっかり調査してやろうじゃないか」








 現在、地下6階まで降りてきたが、独特という意味はだいたいわかってきた。

 最初に聞いた時は、「独特って何なんだ」と思ったものだが――



「これは独特としか言いようがないですね。独特というか変……」



 今、私は何もない小部屋にいる。いわゆる袋小路で、どこのダンジョンにでもあるものだ。

 問題はそんな小部屋が廊下に面して5つ並んでいること。まるで独房みたいな作りだが、別にそんなコンセプトがあるわけでもなく、雑に5つ並べただけのようなのだ。



 小部屋の中を調べてみる。不自然に色の変わっている壁を押すと、隣の部屋で鈍い音がした。

 隣の部屋に回り込んでみると、石があった。おそらく天井から降ってきたんだろう。



「いや、せめて同じ部屋に落ちるようにしましょうよ……」



 そりゃ、ツッコミを入れたくもなるというものだ。

 このダンジョンは異常なほどに「雑」なのだ。表現を変えると――設計思想が見えない。



「何がやりたいんだ、このダンジョン……」



 探索者を苦しめてやろうという意思も、驚かせてやろうという意思も、ここでいいアイテムが見つかって喜ぶだろうという意思も何も感じられない。宿題を出されたから、とりあえず提出しましたっていう感じがある。



 次の地下7階には回復の泉が一フロアに3つあった。

 なんとしても回復させなきゃいけない意図があったのか。いや、そんなものはない。



 地下8階は回転床がなぜか袋小路の通路に並べてあった。

 もしかして何かギミックがあるかもと念のため回転しながら確認してみたが、本当に何もなかった。ただ、回転するだけだった。別に目が合うと動き出す石像系モンスターがいるわけでもない。



 あと、部屋の中央にぽつんと宝箱があって、あまりにも不自然なので、石を投げてみたら案の定ミミックだったりした。

 いや、まあ初めてダンジョンに入る探索者のためというならこれでもいいのかもしれないが、もうちょっと頭使ってくれよという気はする。



 私はモヤモヤしたものを抱えながら、どんどんダンジョンを下っていった。

 ダンジョンにもプロのダンジョンや素人のダンジョンっていうのがあるんだろうか?





 で、地下9階で私はそれに出会った。





 大きな部屋に自分の体の数倍はあるモンスターが鎌を持って待ち構えている。



「これ……アークデーモンですね。地下20階より深いところで出るような奴……」



 普通の探索者がこれに出会ったら即死だろうな。

 これが狙って設計されてるとしたら、このダンジョンは慈悲がなさすぎる……。

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