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迷宮偏愛者の探索者、ダンジョンマスターの作ったダンジョンが雑なので作り直す。  作者: 森田季節


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4 伝説クラスの探索者

 私は役所に戻って、前に案内してくれた女の子に報告した。



「無事に地下五階まで到着したので戻ってきました。その証拠の地下5階までの手書きマップです。それと奥の宝箱に認定証も入ってたので、一枚持ってきました」


「えっ? 初回に一人で5階まで行っちゃったんですか? まだ3時間も経ってないような……」



 受付の女の子は私と認定証を交互に何度か見た。



「え……? 本当にもう5階まで行ったんです……?」


「はい、そうですけど。あの規模であれば十分かなと」


「さすがに速すぎますよ。ステータスが高くてもどんどん増える分裂スライムだとか、防御力が高すぎて戦闘が長引くと背後から別の敵にはさまれるシルバータートルだとか、面倒な敵が多いから最初のうちは撤退することになるものなんですよ」



 だいたい、ダンジョンのモンスターは何かしらの特性を持っている。モンスターも一種の罠というか、ダンジョンに入ってきた人間を混乱させるのが前提みたいなモンスターがいろいろいる。



「ああ、いかにもそんな効果がありそうだったんで、読むと炎を発生させるスクロールで対処しました。巻いてる紙が落ちてたので、マジックアイテムだろうと思ったら、読むと魔法の効果が発動するものですね」



 ちなみにスクロールの文章はなぜか読めた。そこは言葉が通じるように、ある程度の識字能力もついてくるらしい。



「あなたほどダンジョンに慣れてる方も珍しいですね……。では、中級向けのダンジョンをご案内します。まず、その近くの役所で登録してください。これが役所の紹介状です」



 どうやらほかの世界から来た人間があっさり死なないように、手順みたいなものが決まっているらしい。実力以上のダンジョンに入ってひどい目に遭わないようにしたいという意識が感じられる。

 制度は整っていて困ることはない。ちゃんとその手順に従うことにしよう。



「ああ、それと、もう一度、ステータスを確認させてください。一人であっさりダンジョンを攻略したぐらいなので、ちょっと上がってるかもしれません」



 私は石板に手を置く。


=====

キララ

HP  91

MP  18

攻撃力 56

防御力 48

敏捷性 67


魔法

キュア(弱)


探索者ランク C

探索者ジョブ 盗賊

=====



「あまり変わってないけどちょっと成長してるのかな。あっ、『想定』の文字が消えて探索者ランクと探索者ジョブになってる」


「ですね。これはダンジョンを実際に攻略した証しです。これからの健闘も期待いたします。ちなみにランクを上げるのは――」


「それはいいです。どのみち、こっちのダンジョンに慣れて場数を踏んでいくことは変わらないんで」



 まずは最低でも20か所はダンジョンを底まで潜ってみないとな。経験がない状態でああだこうだ考えても意味がない。














 それから私は遠方の役所に行き、そこで指定されたダンジョンを一番底の階層まで探索した。

 それが終わると、また違う役所を紹介されて、そこで指定されたダンジョンに行く。最下層まで攻略したら、また違う役所へ向かう。



 その手順を数回繰り返したら、探索者ランクがBになり、どこのダンジョンでも個人の判断で探索可能ということになった。



 探索者の中には「その次元になったら、そのへんのダンジョンのアイテムを持ってきて売り払うだけでも一生食えるな。うらやましいぜ」と言う奴もいたが、本当に意味がわからなかった。

 まだまだ未踏査のダンジョンがいくらでもあるのに、そこに潜らなくてどうするんだろう。



 日本時代はダンジョン探索だけでメシが食える人にはほとんどいなかった。ダンジョンでアイテムを入手して持ち帰っても、魔法の効果が自然科学の法則に反するからか、ダンジョン外では魔法の効果は消えてしまう。

 たとえば火炎を発動させる指輪なんかは、ダンジョン外ではただの安物の指輪になる。当然価値も低くて換金もできない。

 だから探索者の9割はあくまでも趣味でやっていて、職業は別にあった。自分もそのタイプだ。



 でも、今は新しいダンジョンに挑戦すれば、それなりの金額で換金できるアイテムやモンスターの毛皮などを確保できる。

 つまりダンジョンに入るだけで生活が成り立つ。




 だから知らないダンジョンに無限に入ることができる。




 私はひたすらダンジョン探索を繰り返した。

 キララという名前を出すと役所とかで驚かれることが増えてきた気がしたが、まあ、どうでもいいことだ。探索者なんて名誉な職でもないし。






 そして3年が経過した。













「キララ・シバ、貴殿を王国3例目のSランク探索者として認める」



 王様が私に書状を差し出す。私は恭しく受け取る。

 はっきり言って、あまり楽しくはない。というのも、式典の場なのでごてごてしたドレスを着せられているからだ。こんな服装ではまともな戦闘もできない。



 でも、ドレスの中にいろいろ暗器を忍ばせることはできるな。それに相手も可憐な人間だから荒事はできなそうと油断するか。だとすると、これはこれでどこかに潜入するとかにはいいのか。



「選定の時には探索者ジョブが『盗賊』の者を国の英雄に等しいSランク探索者とすることに懸念を示す者もおったが、実際に店で盗みを働いてるわけではないのだから、犯罪者の盗賊と同じに扱うのはつまらんことだと一蹴した。そなたは間違いなくSランク探索者だ」


「はあ……もったいないお言葉です。私はダンジョンを潜りたくて潜っていただけで、誰かのためにという意識はおろか、讃えられないという意識もなかったので」



 これは本音だ。私は趣味でメシが食える状態になったので、その趣味を続けただけだ。



 結果、好きが高じすぎて、王国のダンジョンを入れるものに関してはおそらく全部入ってしまった。確認されているダンジョンの数は700ぐらいのはずだから、1日1ダンジョンを攻略すれば余裕で全部入ったことにはなる。



 中にはものすごく大きいところもあるので1日で一番奥まで進めるとは限らないが、一方ですぐに一番奥まで行けるところや、隣接してるので同じ日にはしごしやすいダンジョンもあるので1日1ダンジョンというのは案外いい線いってる数字だと思う。




 王のところから離れて、探索者界隈の集まりのところに顔を出す。



 すごいすごいと褒める人もいたが、どっちかというと、敬して遠ざけるといった雰囲気の人が多かった。



「キララ、あんたはすごすぎる……。あんたを見るとAランクの探索者なんてザコみたいなものだと実感するよ」

「あなたのおかげで傲慢にならずにすんでるよ」

「Aランクだからということで呼ばれてるけど、君との間には超えられない壁があるな……」



 口々にこんなことを言われた。

 たしかに実績でもステータスでも私はぶっちぎりらしく、いい勝負ができる探索者も本当にいないらしい。



 ちなみに私のステータスはこんな感じだ。


=====

キララ

HP 385

MP  57

攻撃力278

防御力249

敏捷性478


魔法

キュア(中) ファイア(中)


探索者ランク S

探索者ジョブ 盗賊

=====


 ジョブが剣士のAランク探索者より攻撃力が高いらしいので、なかなか検討していると思う。


 と、そこに白髪の年代記執筆の記者がやってきた。日本の職業で言うと芸能レポーターと文学部の教授を足して2で割ったような職業か。



「キララ・シバ殿、Sランクの探索者になれた秘訣はずばり何だと思いますかな?」



 見た目は威厳があるのに、質問はそのへんの子供と大差ないな……。まあ、探索者なんてやったことないから浅いことしか質問できないか。



「探索だけを考えて、誰かと比べることを一切考えなかったことだと思います。人に興味を持たず、ダンジョンに興味を持った――まあ、自分でも変人だと思いますよ」



 このあと、酒宴になるはずだけど、明日も王城から行けるダンジョンに足を延ばしたいから、お酒は一杯だけにしよう。たしか新たにできたダンジョンのはずなんだよな。



 ダンジョン探索のいいところは、新しいダンジョンがけっこう生まれることだ。行き尽くしたから新鮮味がないってことはない。

 逆に言うと、私がこの世界に来る前に入れなくなったダンジョンは探索不可能なのでつらいところだけど、そこは考えない方向で……。




 私は探索者協会のお偉いさんのところに行った。

 協会は探索者が生活しやすい環境を作るための団体だ。探索者の多くは会費を払うことで、回復アイテムを安く買えるとか、貴重なアイテムやモンスターの出現情報をもらえるとか、特典を受けている。



「あっ、キララさん! お疲れ様です!」



 白髪の会長がわざわざ姿勢を正して言ってくる。



「いや、会長、一介の冒険者にそんなに緊張しないでくださいよ」


「無理ですよ。協会は元冒険者や現役冒険者で運営しているんですから、あなたがどれだけすごいことをしたか全員わかっています。それで、いったい何でしょうか? 協会のポストだったらどれでもご用意しますよ」


「いや、いりませんよ。会議が増えて探索しづらくなりますし。あの、王都近辺で新しいダンジョンとかできてたら教えてもらえません? 明日以降かなと」



 協会のお偉いさん方はどれだけダンジョン好きなんだよという顔をしていた。いや、好きだからずっとやってるだけなんだけどな。



「まだ整備や確認が十分に済んでないところでしたら、王都の外堀の川から徒歩2時間ほどのところに一つできてます。協会所属の探索者に一応入り口の見張りをやってもらってますが、まあ、キララさんなら顔パスで入ってもらってよいですよ。Sランク探索者を止められません」



 Aランク探索者には到達してるはずの協会のお偉方が苦笑した

 皆さんも普通の探索者からしたら、化け物扱いされたりしてるはずなんだけどな。自分はまともというスタンスになるのはずるくないか。



「じゃあ、そのダンジョンに寄らせてもらいますね」


「ええ、詳しいことはわからないですが変なダンジョンだそうですので調査してみてください」



 変なダンジョン? それはテンション上がってきたぞ。

夜も更新予定です!

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