表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮偏愛者の探索者、ダンジョンマスターの作ったダンジョンが雑なので作り直す。  作者: 森田季節


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/17

3 異世界初のダンジョン体験

 ダンジョン探索の醍醐味の一つは罠だと思う。

 言うまでもなく、危険はある。中には即死系のシャレにならないのもある。逆に言えば、一歩先に何があるかわからない場所なんてものは日常生活にはない。



 迷宮偏愛者の私にとって、その非日常が最高に楽しい!



 というわけで、私は早速、共同墓地のダンジョンへと赴いた。

 たしかに墓石が捨て置かれた奥に地下への入り口がある。ここから中に入るらしい。



「でも、ダンジョンに入る前に確認しとかないといけませんね」



 ありがたいことに多少の回復はキュア(弱)という魔法で行えるらしいし、一人でのダンジョン探索も可能だろう。


 ためしに右手で左腕を叩いてキュア(弱)を使ってみると、緑色の光が右の手のひらから現れた。

 そして、軽く赤くなっていた腕の赤みがすぐに消えていく。



「なるほどですね。本当に魔法が使えるようになってるわけか。日本でできないことがいろいろできてる」



 続いて、武器の確認。



「武器は日本で使ってたのが利用できるんだな。とくに劣化もしてない」



 これはお気に入りの高硬度のナイフ。青紙系の炭素鋼をガチの作刀技術で作ったもので、なかなか代替品はドロップしないだろう。この世界にオリハルコンの武器とかばんばんあるなら話は違うけど。



 入って早々、ゴブリンとおぼしきモンスターを一匹発見した。



「ウバアアアッ!」


「一匹ですか。じゃあ、ちょうどいいですね」



 私はそのゴブリンをナイフで――殴った。



「グゲエッ!」



 ひるんだところを馬乗りになる。



「ちょっと従ってくれます? その代わり、仕事が終わったら解放します」


「グゲエ?」


「少し、前を歩くだけでいいです。ちゃんと解放はしますからね?」



 私の眼力に恐れをなしたのか、ゴブリンが同意に「グエ、グエ!」という声を出した。



「じゃあ、歩いてください。ただ、歩くだけでいいです」


「ゴブ……」



 歩くだけでいくつも罠が発動するってことはないな。それと、毒矢みたいな即死系のものもない。



 私はダンジョンは設計者の意思を反映しているものと思っている。「意思」説の信奉者だ。

 だから罠の配置や性質から志向性や思想性も読み取れると信じている。

 たとえば階段のすぐ近くにワープの罠が置いてあるなら性格が陰湿だとわかるし、引き返すのに時間がかかる場所に猛毒を持つモンスターを配置してあったら人の心ないんかと思う。



 逆に道をふさぐシャッターでモンスターの進行を止めることを想定してるとしか思えない罠もある。

 それは設計者(私たちはダンジョンマスター、あるいは略してダンマスと呼ぶ)が罠を効率よく使用して攻略しろと語り掛けているとしか思えない。

 完全にランダムに罠が生まれるなら入り口や序盤に即死系の罠が来ることもあるが、そんなことはほぼありえない。



「グギャー!」



 ゴブリンがびっくりした声を上げた。

 ゴブリンの真ん前から体長一メートルサイズの大サソリが落ちてきたからだ。



「ああ、モンスターが降ってくる罠ですか。地下1階から罠を仕掛けるんですね」



 大サソリがゴブリンを狙いそうになったので、後ろから割って入った。



「グギギ?」


「別に捨て石にする気はないから安心してください。私は前を歩けとしか言ってませんから。対処できるものは私が対処します」



 ナイフを敵に打ち込む。大サソリはあっさり沈黙した。このナイフ、深々と貫通するからな。

 毒が危ういがその前に倒せた。



「死体は消滅しないスタイルですか。じゃあ、モンスターの皮とかも売れそうですね」


「ゴブ! ゴブー! ゴブゴブ!」



 ん? なんかゴブリンからありがとうって言われてるな。私が前を歩かせたのでマッチポンプみたいなもんだし、絶対に感謝されるいわれはないんだけど、助けてもらえるとは思ってなかったか。



「元は敵だったとしても、守れる命なら守りますよ。まあ、本当の善人だったらそもそも前を歩かせないですけど……」



 このあたりの自分の中の正義というかルールは、日本の探索者の中でもずいぶん異なっている。もっとえげつない奴もいれば、モンスターにも動物愛護の精神で接する奴もいた。

 どれが絶対に正しいとかではない。そもそも、普通の人間はダンジョンに入らないので、ダンジョンに来てる時点で少数派で異常者なのだ。



「ゴブー、ゴブーッ!」



 ゴブリンは自分からずんずん前を歩き出した。どうも私を仲間か何かと考えているらしい。そこまでは君に愛着はないぞ……。



 と、ゴブリンの姿が消えた。

 次の瞬間、天井から悲鳴をあげたゴブリンが落ちてきた。



「ああ、ジャンプ台か。これ、天井にぶつけることが前提ですね」


「ゴブ~!」



 頭を押さえて痛がってるので、回復魔法を試してあげよう。

 私はゴブリンの頭に手を置いた。

 緑色の淡い光が私の手から発せられる。



「うん、ちゃんと使える、使える。使用回数が謎だけど、もうちょっと使えますよね」



「ゴブ~! ゴブ~!」


「あっ、さっき以上に感謝してくれてるみたいですね。でも、先を歩かせたのはやっぱり私だから、感謝する必要ないですよ」



 かといって怒って襲い掛かってこられても、ガチの戦闘になってしまうので困るけど……。








 そのあとはとくに罠もなく、下のフロアへ降りる階段が見つかった。



「もういいですよ。あとは自由にしてください。あと、あんまり探索者に攻撃仕掛けないほうがいいよ」


「ゴブー!」



 ゴブリンは手を振ってくれた。私って、テイマーの素質でもあるのか? いや、これはたんなる偶然か……。



 罠の方向性はわかった。

 序盤のフロアは比較的安全だから、ここでこの世界のダンジョンの基礎を学ぶとしよう。






 ――などと思っていたら、地下五階のそのダンジョンの最下層に到達してしまった。



 地下5階に着くと、壁に「ここが一番底。お疲れ様。安全に戻ってください」といった貼り紙がいくつも釘で打ち付けてある。



 それと、そのフロアの一番奥まったところに宝箱があった。

 そこに入っていたのは、「初級探索者 認定証」と書いた紙の束。



 やっぱりチュートリアルのダンジョンだったか。

 まあ、いい肩慣らしになった。

 この世界のダンジョンも基本は日本で潜っていたものと変わらない。



 いや、むしろ魔法が使える分、この世界のほうがイージーモードかもしれない。

 ということは、これまでのダンジョン経験がかなり活かせるんじゃなかろうか。



「よーし! これからどんどんダンジョン潜るぞ!」


本日は複数回投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ