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迷宮偏愛者の探索者、ダンジョンマスターの作ったダンジョンが雑なので作り直す。  作者: 森田季節


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2 異世界だとダンジョン探索で食っていけるらしい

 自分の体が大きなパイプみたいなところを通っていて、水のようなもので一気に押し流される夢を見た。

 案外、夢じゃなくて魂か何かが経験したことなのかもしれない。



 目を開けると、私は草むらの中に倒れていた。

 田畑と森のちょうど境目みたいな場所だ。



 服は新宿のダンジョンで着ていたものと変わらないが、電子デバイス系のものは何も残っていない。ピンポイントでそういうものだけ盗まれたとも考えづらいので、違う世界のほうから拒絶されたということだろうか。



「どこかわかんないけど、違う空間には来ちゃったっぽいですね。新宿の近くにこんな場所、絶対ないし」



 来た時と同様の異世界の扉らしきものはないか調べてみたが見つからない、一方通行なのかもしれない。

 近くに小さな池があったので、顔を覗き込んでみる。



「5歳ぐらいは若返ってる気がしますね。いや、これ、大学入る前ぐらいまで戻ってるか……? たんにこの世界に来て体力が全快してるとか?」



 異世界に飛ばされた時に肉体も変更がされていると考えれば、おかしくはないか。



 畑が広がっていたので、集落のほうに移動してみたが、明らかに日本の農村の家屋ではない家が並んでいる。

 と、農家のおばさんが私に気づいた。



「あらまあ、変な格好だね。もしかして、ほかの世界から来たかい? ほかの世界のダンジョンがこの世界につながることが時々あってねえ」


「まさしくそうです。あっ、私、キララって言います」



 こういう時、できるだけコミュ力高く対応していかないと、探索者は生き残れない。「助けなくてもいいか」と思われるか、「助けてやろう」と思われるかで運命が決まることは珍しくないからだ。



「ここは小さい村だけど、近くにダンジョンがあるんで役所が置かれてるんだよ。まず、そこに行きな。最低限のお金と武具のたぐいは支給してくれるから」


「話が早いですね。ありがたいです」



 そこで少しおばさんはあきれた顔をした。



「だって、この世界に来た人間はたいてい前の世界でもダンジョンを潜ってるからね。この世界の普通の人間はダンジョンなんて怖くて潜らないよ」



 ああ、そうか。この世界に来るのは不運な人間というより、最初から命知らずのバカなんだな。おそらくほかの世界でも、ダンジョンぐらいにしか異世界に通じる扉は存在してなかったのだろう。



 まさしく私もそれだ。日本に戻れる可能性も低いのに異世界に通じてそうな扉に飛び込んだ。







 私は早速、その役所という建物に移動した。

 役所といっても二階建てのレンガ建築で、役所っぽさはない。周辺の人間もいかにも冒険者というガタイがよかったり、顔や腕に傷跡がある連中だ。歌舞伎町より物騒に見える。

 役所の中に入って、受付らしき若い女性にこの世界に来たと話すと、すぐに登録用の紙を渡された。いわゆるギルドに当たる建物なんだろう。



「違う世界から来た方には原則としてダンジョン探索の仕事――通称『探索者』をやっていただきます。もちろん、前の世界でそういった経験が一切ない場合は申告してもらえばほかの仕事も用意できますが……」


「ああ、まさしく前の世界でも探索者をしてたんで、問題ないです。それより攻略するダンジョンについて聞かせてもらえます?」



 食い気味で聞いたので、少し受付の子が面喰らっていた。



「あの、受け入れるの、早すぎませんか……? 違う世界に来たんだったら、もう少し呆然としたりとかするもんじゃないかと」


「実のところ、こういう世界に来るかもってちょっとは思ってたんです。ダンジョンって前の世界でも急に出現しましてね。しかも、探索がほぼ終了してしばらくたつと、入り口がふさがって入れなくなるんです。そして消滅したり、新しいダンジョンにリニューアルしたりする。いかにもほかの世界へのトンネルを兼ねてそうだなって」


「まさにこの世界でもそんな要素があります。ダンジョンはどんどん広がったりもするんですが、一方で急に入れなくなって、別のものになったりするんです。モンスターも出るので一般人は入りませんけど、貴重なマジックアイテムが見つかることも多いので探索者という職業が成立します」



 よかった。ダンジョンのシステムは同じらしい。そこが全然違うと覚え直す必要があるからな。

 逆に言えば、システムが同じなのだから、これまでのようにダンジョンに挑みまくればいいわけだ。



「ん? マジックアイテムということは、この世界はダンジョンの外でも魔法が効力を持つわけですか?」


「それはそうですけど……。むしろ、ダンジョンの外だと魔法が存在しない世界もあるんですか?」


「そうなんです。それでドロップアイテムの値段が安くて苦労しました……」



 受付の人が少し同情するような顔をした。異世界基準だと魔法がないほうが変なんだな。




「役所からの説明はだいたいこれで全部です。決して安全な仕事ではありませんし、無理はなさらないでくださいね」


「それは前からそうだったんで大丈夫です。ほかにやることってあります?」


「ステータスの確認をさせてください」



 おおっ! ステータスがあるタイプの世界だ。日本にはなかったから新鮮だ。ランクみたいなのはあったけど、攻撃力とか防御力とかいったものは数値化できないので、ゲームのステータスみたいなものはなかった。

 ステータスは石板みたいなものに手を置くと、表示されるシステムだった。



=====

キララ

HP  87

MP  17

攻撃力 54

防御力 45

敏捷性 65


魔法

キュア(弱)


想定探索者ランク C

想定探索者ジョブ 盗賊

=====


「Cランクか。まあ、真ん中ってことですかね。可もなく不可もなく」


「いやいや! 十分に強いですよ! 最初はEからスタートするのが普通なんですって!」



 日本でもそこそこやってたからな。問題は今の強さというより成長曲線のほうだけど。ここから全然成長しないなら今が高くても意味がない。

 それと、もう一つ気になるのが――



「こっちの世界だと私も魔法を使えるわけですね」


「え? ええ。もちろん使えない方もいますが、あなたは回復魔法は使えるようですね。むしろ、前の世界では人は魔法を使えなかったんですか?」


「……原則そうだったんで、探索者はサバイバル能力が求められてました」



 魔法を使ったと思しき罠や魔法を使うモンスターはいても、人間が自然と魔法を覚えることはなかった。ある意味当然だ。学校や塾で魔法を覚える生徒はいない。

 まあ、チュートリアルの意味も込めて、ダンジョンに入るか。実際に動いて学んだほうが早いし。



「ダンジョンの場所、教えてもらえます?」


「ものすごくやる気ですね……」



 あきれながらも、受付の子は簡単な地図をカウンターの上に置いて説明してくれた。



「この村を出ると、小さな丘があるので、そっちに向かってください。崖下の小さな洞穴がかつての共同墓地だったんですが、その先にダンジョンの入り口が空いてます」



 そこまでわかれば十分だ。

 早速、ダンジョンに行こう。



「モンスターはたいしたことないですが、罠は多いので気をつけてくださいね」



 それはいいことを聞いた。



「罠、大好きなんですよ。たくさん楽しんできますね」

明日は複数投稿したいと思います! よろしくお願いいたします!

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