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迷宮偏愛者の探索者、ダンジョンマスターの作ったダンジョンが雑なので作り直す。  作者: 森田季節


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14 料理開発をする

「モンスターに料理を作らせる? またまた師匠~。そんなこといくらなんでもできるわけな――――できるかも!」



 アルテちゃんが思わず畳みたいな床から起き上がった。



「そういえば、モンスターの知能の設定で、探索者裏をかくような行動ができるぐらいには全然賢くできるはずなんだよね。だったら、注文された料理を作れるようなモンスターも本当にできちゃうかもしれない……」


「最初のうちは私たちで料理を教えないといけないかもしれませんが、できるわけがないということはないはずなんです。試しても無駄じゃないかなと」



 私としてはアルテちゃんのテンションが上がった時点で成功したようなものだ。ダンジョンの打開策が成功しないとダンジョンが消滅するわけではないし、可能性を提示できた時点で目的は達した。

 そういう意味ではここからはウィニングランだ。



「まあ、とはいえ、賢すぎるモンスターを作るというのは倫理的なハードルとかもあるかもしれませんし、ダンジョンマスターであるアルテちゃんの確認はいただきたいんです。開発室のほうに来てください」


「う、うん! わたしも詳しいこと、いろいろ聞きたいし。だいたい、なんで飲食店をダンジョンでやろうなんて思ったの?」


「そのお店が有名になれば、探索者が来ますからね。じゃあ、ダンジョンもにぎわうじゃないですか」


「その発想はなかった~!」



 アルテちゃんは笑顔でそう言った。



「やっぱり師匠はすごいよ! たしかに探索者をお客さんだと考えるなら、繁盛するお店があればいいんだ!」


「そうです、そうです。成功するかは全然不明ですけど、テコ入れとしては面白いでしょ? ダンジョン制作からお店経営に新章スタートって感じですよ!」


「だね。モチベーションは上がってきたかも」









 まず、飲食店を開くための材料を用意できるかを調べていく。

 飲食店をやるには食材が必須だ。それを外から買い込むというわけにはいかない。探索者を雇うことはできるが、部外者を入れるとおそらくアルテちゃんのことがバレる。



「水に関しては飲料用で問題ないものが用意できます。食糧関係のアイテムは……薬草や豆はすぐ選べると思うんですが、これでお茶をちゃんと作れるかというと、試してみるしかないですね」


「それぐらいならすぐ試せるよ。ひとまず薬草とか基礎攻撃力が上がる力の豆とかで試してみよう」






 ここから私たちはいろんな草や豆で「お茶作り」(厳密にはお茶の葉っぱを使ってないけど、広義の飲み物としてのお茶)を実験することになった。





「うええ……。この草はダメだ……。苦すぎるし、変なえぐみがある……」


「毒消し草は×ですね。マヒを取り除く月光草はどうでしょう?」


「毒消し草よりはマシかも。でも、お金払ってまで飲みたいかというと……どうなんだろ」


「たしかに物珍しさ以外での価値も必要ですね。おいしいお茶にしないと意味はありませんね。ひととおり試し終わったら、少しスパイスというか、味を加えることも選択肢に入れますか」



 何度か試した結果、私は月光草を少し煎ることにした。

 これなら上手くいく気がしたのだ。焙煎という発想はコーヒーでもよく耳にしてたし。



「アルテちゃん、これを試してみてください。自信作です!」


「おっ、香ばしい……。なんか、飲み物なのに食欲そそるね~」



 ずずずっと、アルテちゃんはお茶を冷ましてから飲む。

 畳敷きっぽい部屋がお茶とよく合うな。



「おいしいっ! 師匠、これはいけるよ! ものすごくほっとする! 仕事終わりに飲みたい!」


「よかったです! 番茶というお茶をイメージしました!」


「バンチャ? 聞いたことない名前だね」



 そういや、この世界で番茶を飲んだことなかったな。日本での知識が役に立った。



「これなら、お金をとっても問題ない気がする! ……まあ、お店で稼ぐのが目的じゃないんだけど、お金払ってでも来たいと思うものでないと意味ないもんね」


「そうです、そうです。オープン当初は物珍しさで人を集められるかもしれませんが、クオリティがついてこないと人が定着しませんからね。ただ、飲食店をやるにしても、まだ目的の半分しか達成できてません。問題はむしろ、ここからです」


「えっ? いいお茶が見つかったからいいんじゃないの?」


「フードメニューがありません。飲み物だけのために来る探索者は限られてますからね。探索者は泥水を煮沸して飲むぐらいのことはして生活してる職業ですから」


「えっ……? 探索者ってそこまで苛酷なんだ……」



 なんか、アルテちゃんにあわれみの目を向けられた。



「ちなみに私も山中のダンジョンに向かった時の帰りはそういうこともしましたね~。まあ、水は沸騰させればだいたい大丈夫ですよ。逆に言うと、何が入ってるかわからない水を沸騰させないのはリスク高すぎるから、よほど危機的な状況じゃない限りおすすめしないです」


「そっか……。そりゃSランク探索者にもなれるや……。ええとフードメニューだね……。当たり前だけど、豪華なディナーとかは出現させられるアイテムにもないよ」


「それは心得てます。ただ、食糧自体はアイテムの候補の中にありましたよね」



 基礎的なダンジョンを作るための情報はすでに私は目を通している。



「といっても、乾燥させた保存食とパンぐらいしかないよ? 保存食はゲロマズで、料理に使える代物じゃないし」


「あれはあれで調理方法があるんですが、まあ、店で食べたいものになるかと言われると、そんなことはないですからね。でも、パンがあるならどうとでもなりそうですね。とりあえず、パンを20個ぐらい出してもらえますか?」


「はいはい、アーティファクトを操作してくるね」



 アルテちゃんが開発室に行って1分ぐらいで、ちゃぶ台型の低いテーブルに大量のパンが出現した。

 このアイテム発生システム、ものすごく便利だな。


 私は開発室のほうに向かって声をかける。



「アルテちゃ~ん、砂糖やハチミツってアイテム欄にありましたよね?」


「うん。まあ、食べ物と言えばそういうのも食べ物か。そのあたりも出しておくね~」



 じゃあ、甘いものはすぐに作れそうだな。もう勝ったようなものだ。



「とりあえず揚げパンにしてみますかね。台所お借りします」


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