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迷宮偏愛者の探索者、ダンジョンマスターの作ったダンジョンが雑なので作り直す。  作者: 森田季節


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10 Sランク探索者、師匠になる

 新しくモンスターを設置したダンジョンを私はさささっと地下10階までクリアした。

 私の実力だと、ほぼ全部のモンスターのほうが逃げてしまうのだが、だいたいどれぐらいの難易度かはイメージできる。その程度にはやり込んでいる。



 地下10階を全部歩いて回ると、私は指輪を凝視して地下17階のあのコンピュータールームみたいな部屋と念じた。




 ちゃんとあのダンジョンマスター様がいる部屋に戻って来た。




「お疲れ様。動いてもらってから気づいたけど、キララさんが通ると、モンスターが戦おうとしないからあまり意味がなかったね……」


「そこはしょうがないです。それでも、モンスターの分布からだいたいの難易度はわかりますし。ちなみに、アルテ様はどういう自己評価でした?」


「大失敗とは思わない。前よりはちゃんとダンジョンになってた気がした。でも…………すごく地味でインパクトに欠ける」



 椅子に座ると、ダンジョンマスター様は腕を組んでうなった。

 これじゃないという感じがあるんだろう。



「地味な理由自体はだいたいわかります」


「本当!? 教えて、教えて!」


「モンスターをステータス上、ちょっとずつ強くなることだけ考えて設置してますね。それ自体はいいんですが変化としては弱いので地味に思えるんです。だからって急にアークデーモンを配置したらいいってことではないですよ。それはただの破壊です」


「うん、それはわかる」


「では、どうやってインパクトを出すのか。ちょっとアーティファクトを使わせてもらいますね」



 私は石板を操作して、モンスター設置の画面に移動する。



「ええと、攻撃時に相手を眠らせてしまうモンスターは……お化けキノコがありますね。これを地下3階から設置しましょう。それと地下6階あたりでは攻撃を受けるとたまに分裂する粘着スライム、地下8階以降は一時錯乱状態になる魔法を使ってくる黒魔導士を設置しましょう。あと、猛毒状態にしてくるデスグリーンスライムも地下8階と地下9階に設置と」


「あ、そうか! これまでは特殊攻撃を使ってくるモンスターが少なすぎたんだ!」


「そういうことです。もし眠り状態に陥ると、それだけで急に探索者はリスキーになりますよね。となると、早目に回復をしないといけない。探索者の緊張感は一気に上がります」


「デスグリーンスライムで猛毒状態になって解毒アイテムがなかったら、引き返すしかないよね。これなら、『デスグリーンスライムは出ないでくれ……!』と祈りながら探索しないといけない状態が生まれるよね」


「そういうことです! モンスターの強さだけでは違った緊張が生まれますよね!」



 これでモンスターの問題はほぼ解決だろう。

 あとは、ダンジョンマスター様に微調整をやってもらえばいい。意図がつかめれば後は一人でもいくらでもバランス調整はできる。



「それと……地下10階に到達しても、ゴールってわかるものがないんだよね……」



 たしかに現状では地下10階につくとそれより進む階段がないとわかるだけではある。



「かといってこの規模のダンジョンで強すぎるアイテムを設置するのも何か違う気がするしなあ……」



 私はまた石板をいじって都合のよさそうなものを探す。



「じゃあ、地下10階の奥にこういう湧き水スポットを設置するというのはどうでしょう?」


「湧き水スポット?」


「それっぽくライオンの口から水が出るようにして、これを飲むと状態異常がすべて回復、体力も全回復、ただし2日で効力は切れるとかにすれば水が売りに出されまくって、世界に影響が出るということもないかと」




 すると、ダンジョンマスター様が椅子から立ち上がって、90度近く私に向かって体を曲げた。



 これはおじぎということ?



「あの、どうかされましたか?」


「キララ様、このたびは本当にありがとうございました!」


「いや、アルテ様、そんなに感謝する必要はないですよ。私はアルテ様を含むダンジョンマスター様たちのおかげで生活できてるわけで――」


「アルテ様なんて呼び方は不要です! アルテとお呼びください!」



 いや、さすがに後輩探索者でもない人から強すぎる敬意を向けられるのは落ち着かない!



「じゃ、じゃあ、アルテちゃんというのでどうでしょうか? 私のこともキララさんぐらいならそんなに違和感はないかなと……」


「はい、キララさん様!」



 なんか混ざっている!



「キララさん様のおかげで、行き詰っていたダンジョンが無事に完成しました! 感謝のしようもありません! あの、隣の部屋にお菓子などもあるので、ぜひ食べていってください! 本当に、それぐらいしかおもてなしできませんけど!」


「わかったから、キララさん様って表現はやめてください! 敬語もいらないですよ!」








 なんとかキララさん呼びでタメ口ということで了解してもらった。

 お菓子はフィナンシェみたいな焼き菓子だった。バターっぽい味のお菓子ってどこで食べてもおいしいものだ。




 そして、お菓子を食べている途中に、こう言われた。



「キララさん、弟子にしてください!」



 ちゃぶ台に両手を突いて、アルテちゃんは言った。



「弟子? ということは私が師匠ってことですか?」


「そう! まだまだわたしはキララさんからダンジョンについてたくさん教わることがあると思う!」


「…………それって、隣の部屋のアーティファクトとか使ってダンジョンも作れるってことです?」


「むしろ、どんどん作ってください! ほかの場所にダンジョンを作ることも可能だし!」



 私の顔はものすごくにやけたと思う。

 じゃあ、世界に一つだけの完璧なダンジョンを作ることも可能なんじゃなかろうか。



 いいじゃないか、いいじゃないか。

 最近、普通のダンジョンはいまいち面白みがなくてつまらないと思ってきていたのだ。




「ありがとうございます! 師匠やらせていただきます!」


「よろしくお願いします、キララさん師匠!」




 こうして私はアルテちゃんの師匠になったのだった。



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