まさかの異世界召喚
巫女として召喚された美都は、四神と共に怨霊と戦いながらレベルを上げる日々。
だがレベル50の“呪詛解除”は、生贄の儀式だった――。
復讐に堕ちた隠しキャラ・静流、悔恨に沈む四神、眠りに落ちる千夏。
燃える京を前に、美都は黒龍の鱗で時を遡り、犠牲の運命を上書きする。
乙女ゲーム×陰陽バトル×タイムリープ、救済の逆転譚。
龍神の巫女。
――京の危機に現れ、混沌を救う存在。
そして彼女を守る、四人の加護者たち。
……そんな設定の乙女ゲームがある。
『巫女と四神の物語』。
「見て見て! このスチル! 月景さんの横顔、国宝級でしょ!!」
鼻息荒くゲーム機を突き出してくるのは、私の幼なじみ・近藤千夏。
黙っていれば清楚系美少女。
――けれど口を開けば、二次元オタクの化身だ。
しかも彼女、三次元男子には塩対応。
アタックしては散っていった男子が何人いることか。
あれはもう、ひとつの戦場だった。
「千夏さぁ……“二次元から人生やり直してこい”は無理でしょ?」
「え? 三次元なんてノイズでしかないでしょ。優しさ配布予定もないし」
「配布って言うな」
私、栗崎美都。十八歳。
千夏とはお隣同士、十八年の腐れ縁。
成績も容姿もごく普通。
ゲームで言うなら完全にモブ。
セリフなしで退場する「通行人A」レベルだ。
でもまあ、それでいい。
千夏が隣にいれば、毎日は勝手に騒がしくなる。
「よーし! 今日も月景さんとの愛を深めにいくよー!」
テンション高く操作する千夏を、私はポテチをつまみながら眺めていた。
月景――萩森月景。
四神・青龍の加護を受ける、クールな武士。ゲーム内人気No.1。
千夏の“推し”であり、生きがいでもある。
本気で彼女はこのキャラに人生リソースを注いでいる。
日常会話の八割が月景語り。
……推し活って、たぶん火力発電できる。
「うおおお! このシーン尊い! 心臓えぐられる!」
「千夏、落ち着け。夜中に叫ぶと近所迷惑」
「大丈夫! 私の愛はご近所にだって伝わるから!」
「迷惑しかないから!!」
そんなくだらないやり取りの、まさに最中だった。
突然、部屋がまばゆい閃光に包まれた。
「え、なにっ!?」
視界が真っ白になり、思わず叫ぶ私。
けれど千夏は――。
「キタコレ!! 異世界召喚イベント発生!!」
満面の笑みでガッツポーズ。
……この子、本当に危機感ゼロだな。
「いや喜んでる場合!? 光に包まれてるんだよ!?」
「美都わかってないなあ。これは『巫女と四神』の召喚シーン!
ついに私もヒロインに!」
「やめて!? そんなフラグ立てないで!? 私まで巻き込まれる!」
足元が、ふわりと浮いた。
床の感触が抜けていく。
体が宙へ引きずられる。
「ええええええええっ!?」
――こうして私と千夏は、ポテチ片手に乙女ゲームの世界へ召喚された。




