表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみは天性の女優だ!天才だ!と言われ、辺境伯に一年間の契約結婚を申し込まれた悪役令嬢(?)は、輝く貴婦人の星となる☆  作者: 櫻井金貨


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/38

第31話 高まる想い〜ガンターのポエム〜

「アマリア様、フィン様、ようこそお越しくださいました」

「ありがとう、アリスリンデさん」

「アリスリンデ様、こんばんは」


 アマリアとフィンが到着すると、アリスリンデは立ち上がり、ごく自然に二人と挨拶を交わしている。

 ガンターもあわてて挨拶の輪に加わった。


「久しぶりですね、義母上」

「ごきげんよう、ガンター様」

「元気でやってるか、フィン」

「ごきげんよう、義兄上」


 ガンターも挨拶を交わすが、どうにもぎこちない。

 するとアリスリンデが少し顔を赤くして言った。


「アマリア様。わたくしも……お義母様と呼んでもいいですか……?」


 その可愛いお願いに、ガンターは思わず、げほんと喉が詰まりそうになったが、耐えた。

 心臓の次は、喉が!!

 そんなガンターの心の悲鳴に気づく者は誰もいない。

 ガンターは平静を装って言った。


「……義母上がよければ、いいんじゃないか」

「まあ、嬉しいですわ、アリスリンデさん」

「え、それでは、わ、私も義姉上と呼んでもいいですか!?」

「もちろんよ! フィン様」

「フィンとお呼びください、義姉上!」


 なぜか皆少し照れながら呼び方を確認している。

 ダイニングルームに、ほんわかとした空気が広まった。


「さあさあ、皆様、お料理が到着しましたよ。どうぞお席にお付きください」


 ノックスが呼びかけて、全員席に座った。


「本日の前菜は、冷やしたカボチャのキャセロール、ピカンナッツ入りでございます」


 ノックスが料理を手際よく配り始めた。


「前菜のふた皿目は、新鮮なレタスにリンゴとクルミとカリカリベーコンを散らしたサラダをご用意しております。ドレッシングには、地元のサワークリームを使ったものをどうぞ」


 ご婦人方の野菜好き対策もバッチリである。


「本日はお魚とお肉の両方がメインに出ますからね、たくさん召し上がってください」


 食事は和やかに進んだ。

 本日はフォーマル寄りのディナーということで、王都式に一人ずつ料理が取り分けられた皿を、ノックスとノアが運んでいく。


 湖で穫れた白身魚のクリームソースが出た際には、アマリアからアリスリンデに質問が出た。


「アリスリンデさん、王都ではなかなかお魚は食べないでしょう? こちらに来て、お魚料理は大丈夫でしたか? 王都のご令嬢には、お魚が苦手な方も少なくないと聞きましたわ」


 ガンターもはっとして、アリスリンデを見守る。


(そういえば、俺はそんな気遣いもしなかったな。アリスリンデは大丈夫だったんだろうか?)


 そう思って心配げにしていると、アリスリンデはにっこりと笑って言った。


「ここに来てから、お食事はどれも素晴らしかったですわ。もちろん、お魚も大丈夫です」


 それを聞いて、ガンターから思わず言葉がこぼれた。


「気に入ったか……?」

「はい!」


 いまだにドキドキする心臓を抱えているガンターに、アリスリンデはまるでバラの花がほころぶように、にっこりと微笑んでくれた。


「とても気に入りましたわ」


 ガンターの胸がさらにドキドキしてきた。


 に、新妻がにっこりと微笑んでくれている。

 辺境のお魚料理が好きだと言ってくれている。

 好きなのは、辺境のお魚料理で、けっしてこの地を治める辺境伯が好きだと言っているわけではないのだが。


(辺境を……好き、だと……言ってくれた———)

(※ご注意:辺境 と 好き の間は、ガンターによって、かなり省略されました)


 ガンターはその感動に震えていたが、実はそれはガンターだけではなかったらしい。


 次の料理をワゴンに載せてダイニングルームまで運んできたキッチンの召使いも、アリスリンデの言葉を聞いた。

 そして、同じように胸を押さえて顔を赤くしているではないか。


 そんな召使い達の背中を、ノックスがぽんぽんと叩き、「わかるよ」となだめてやっていた。


 そしてアリスリンデは次の一手で、ガンターをさらなる苦悩へと落とし込んだのだった。


「あの、旦那様? お義母様がお茶に誘ってくださっているのです。旦那様はお忙しいかとは思うのですが、お時間のある時に、ぜひご一緒していただけないでしょうか……? 三十分でもいいのです。もし———可能なら」


 そう言うと、アリスリンデは不安そうな色を金色の瞳に浮かべて、首をこてりとかしげるのだ。


(か、可愛い……っ!!!!)


 ガンターは心の中で絶叫した。


(完璧な美貌に、完璧な行儀作法、優秀な頭脳と三拍子揃った、完璧な令嬢だったアリスリンデが)

(完璧な令嬢改め、今では完璧な辺境伯夫人となった、アリスリンデが、不安そうに俺を見つめる)


(むむ。直接言うのは控えるが、きみを不安にさせるものがあれば、一刀両断にしてくれる)


(セオドアは何を見ていたんだ?)

(アリスリンデの魅力に気がつかないほど、バカだったのか)

(そうか。前からバカだと思っていたが、本当にバカだったんだな)


 (こんな俺の中のやりとりはもちろん、愛しいアリスリンデは知らない)

 (いや知らなくてよいのだ、美しい人よ)


 (ゆえに俺の答えはひとつしかない)


 ガンターは言った。


「わかった」


(男の言葉はいつも、まっすぐで簡潔でなければならぬ)

(しかし)


(ああ、新妻が可愛すぎて、俺は心臓発作を起こしてしまいそうだ)

(もちろん問題はある。何しろ、アリスリンデは、契約結婚の妻なのだ。いくらアリスリンデに心を奪われても、それを言葉にすることはできない———っ!!)


 ガンターの短い返事の背後には、山のような苦悩があったのだが、アリスリンデはそれを知らない。

 ぱあっと輝くような、明るい笑顔を見せた。


「まあ、うれしい。では、いつご都合が……?」


(愛しい妻よ。いつでもいい。今すぐでも)

(いつになったら、そうはっきりと言えるようになるのか———)


 そう、ガンターが心の中で忙しくあれこれ悩みまくり、赤くなったり、青くなったりしている時。


 不意に、ダイニングルームのドアが大きく開かれた。


 まさに、ば———ん!! という様子で開いたドアの向こうには。


「ガンターお兄様っ!! ようやくお目にかかれることができましたわ……!!」


 ダイニングルームの入り口で、コリンヌ王女が仁王立ちになっていた。


 ストロベリーブロンドの髪をふわふわと揺らしながら、コリンヌ王女が薄い胸をぐいっと張ると、なぜか細い腰がくねっ! と揺れる。


 コリンヌは、大きな透明な宝石のような、緑色の目を見開くと、ひた、とガンターを見つめた。


 決意を秘めた、コリンヌのまなざしに、ガンターがごくりと喉を鳴らした。


 コリンヌは細くて小さな両手をぎゅっと握り、なぜかふるふると震えた。

 すると、ミントグリーンのドレスに付けられた山ほどのリボンもヒラヒラと震える。


 淡いピンクに塗られたくちびるが開かれた。


「ガンターお兄様、わたくしを、お嫁さんにしてくださいませ……っ!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ