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きみは天性の女優だ!天才だ!と言われ、辺境伯に一年間の契約結婚を申し込まれた悪役令嬢(?)は、輝く貴婦人の星となる☆  作者: 櫻井金貨


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第18話 今日から辺境生活の始まりです

 シュタイン辺境伯邸で初めて迎える朝。

 アリスリンデは気持ちよく目を覚ました。


 淡いベージュと金色で統一され、上品に整えられた部屋。

 ほのかに漂う、ピンクのピオニーの香り。

 清潔な寝具で整えられた、ふかふかのベッド。


(そうだわ。もう旅の途中じゃない。シュタイン辺境伯家のお屋敷に着いたのだわ)


 ベッドの上に起き上がると、侍女のノアが朝の紅茶を持って来てくれた。


「アリスリンデお嬢様、おはようございます。よく眠れましたでしょうか?」

「ノア、おはよう。ええ、ぐっすり眠ったわ」


 ノアに続いて、二人の可愛らしい侍女達もやって来て、アリスリンデに自己紹介した。

 彼女達もアリスリンデ付きの侍女だった。


「昨夜、全員で協力して、お嬢様のお荷物はすべて荷解きをしております。衣装室に収めてありますから、もう不便はございません」


 ノアが嬉しそうに報告する。

 アリスリンデも侍女達に「ありがとう、助かるわ」と微笑んだ。


 辺境伯家の侍女達は、カーテンを開けたり、アリスリンデに化粧着を用意したりと、いそいそと働き始めていた。


(まるで家にいる時のよう。侍女達も親切で嬉しいわ) 


 アリスリンデは紅茶を飲み、侍女達と一緒にドレスを選び、朝の身支度を整えた。


「朝食はお部屋にご用意しておりますわ」


 ノアが朗らかに言う。


「昼食はガンター様とご一緒です。朝のうちはお時間がありますから、屋敷の中をご案内いたしましょうか?」

「そうね」


 そうしてアリスリンデはノアと一緒に屋敷の中を回り始めた。


***



 その頃。

 まだ使われていない、当主夫妻の主寝室の左側。

 ガンターの個室では、ガンターが侍従のノックスをあれこれと振り回していた。


 早朝に起き、日課である朝の鍛錬を黙々と一人でこなしたガンターは、部屋に戻るついでに台所に立ち寄り、つまみ食いをした後に帰って来た。


 つまみ食いは、昨日の残りであるポットロースト肉の冷えたやつとか、ゆで卵、焼き上がったばかりのパンなどである。


 そうしてお口をもぐもぐさせながら部屋に戻り、ノックスに飲み物を用意させたのだが———。


『今日はどれをお召しになりますか?』


 ノックスの何気ない一言で、ガンターはパニックに陥った。


「ガンター様、もう一時間も服とにらめっこしているじゃないですか。そろそろ決めてくださいよ。今日のお昼はアリスリンデ様と一緒に取るのでしょう?」


「当たり前だ。だからこそ、こうして悩んでいるのではないか」


 ノックスは思わずため息をひとつ。


「ガンター様の服はどれも似たようなものばかりじゃないですか。どれを着ても同じですよ」

「!!!」


 ガンターがショックを受けて振り返る。

 しかしなんとか自分を抑えたらしい。

 さっと話題を服から食べ物に変えた。


「……ノックス。昼食のメニューは何だ? 葉っぱはあるだろうな?」


 葉っぱ、というのは、アリスリンデが欲しがった野菜のことだろう。

 そう気づいたノックスは自慢げに昼食のメニューを主人に教えてやった。


「もちろんです。ホームメイドのピクルスを刻み込んだタルタルソースをかけた白身魚のフライをサンドイッチにして、たっぷり玉ねぎとレタスを挟みます。それにケールのクリームスープですね」

「む」


 文句のつけようがなくなったガンターがうなると、ノックスは楽しそうに付け加えた。


「ともかく何か着てください。お昼までには時間がありますから、必要ならまた着替えればよろしいでしょう」

「!!!」


 その時、ガンターの背後で、何かが「わふうっ……!」と吠えた。

 ガンターが振り返ると、驚くほど体が大きく、驚くほど真っ白でふわふわな犬が、ベッドの下に敷いた絨毯の上に立ち上がって、尻尾を振っていた。


「ドンデ!」


 ガンターが嬉しそうに声を上げて、犬に駆け寄る。


「置いていって済まなかったな? 留守中、元気でやっていたか? 昨日は姿を見せなかったから、心配したぞ?」


「わふわふわふわふっ!!」


 ガンターが首をかしげる。


「おお、そうか……! フィンのところに行っていたのか。そうだな、あのウサギはおまえの親友だからな。ん?」


「くんっ……? くふんっ、わふわふわふわふっ!」


 ガンターが今度は反対側に首をかしげた。


「……心配しないでいい。おまえのことは、ちゃんと紹介する。大丈夫だ。アリスリンデはその辺のヒラヒラくねくねした令嬢達とは違うから。おまえのことも、きっと好きになってくれるぞ」


「きゅうう〜ん、くっふん……??」


 ガンターはニコニコしていたが、次の瞬間、がっくりと肩を落とした。


「どうしたんです、ガンター様?」


 ノックスが不思議そうに言うと、ガンターは暗い顔をして言った。


「ノックス、風呂の用意と、新しい着替えを用意してくれ。服の選択はおまえに任せる。ドンデが言うんだ。くさい男が好きな貴婦人はいないと。服以前の問題だと。俺はくさくないと言ったんだが、犬の鼻は利くからな……」


「!!」 


 ノックスは両手で口もとを押さえると、爆笑する前に浴室へと駆け込んだ。

 

***



 アリスリンデとガンター。

 結婚前の二人は、シュタイン辺境伯邸でそれぞれの朝を迎えていた。


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