九話「異世界の女の名前は大抵ヨシコとマヒル」
(ヒロインだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!)
振り返るとそこにはオレンジ髪でツインテール、確かに美少女と呼ばれるべき存在がいた。
(可愛い…お近付きになりたい。)
ミカエルは、「誰?」と首を傾げる。何歳ぐらいだろうか。同い年なのか、いやでも年上っぽさもある。ツインテールのせいで子供っぽく見えているだけだろうか。チー牛は気持ち悪い妄想を膨らませる。
「私こそ!!!!!魔法少女リリアちゃん!!!!!」
自分にちゃん付けしているところがSNSで自分の身体ばかりあげるセクシー女優ぐらい痛々しいが、実際可愛いので問題無し。
(魔法少女、実在した!!!!!!実在した!!!!!)
歓喜する田中。今にもセイ〇ンダンスとインドダンスを踊りだし、ハ〇太郎コールで回りだしそうな勢いだった。虎!火!人造!繊維!海女!振動!化繊!最高だ。最高である。最高でしかない。新しい命に感謝。新しい命に感謝!
「リリアちゃぁぁぁん!!!!!可愛い!!!!」
キモオタが炸裂する顔面偏差値0.5。リリアはこんなやつに好かれてもキモがる事すらしない。なぜかまだ生きている陰キャたちにトドメ~!!!!!!!
リリアは決めポーズを取りながら「ありがとう!!!!クリストファーくん!!」と笑った。なぜバカは共通で田中をクリストファーと呼ぶのだろうか。
「いや、田中です」田中は急に真顔で名乗った。リリアは「田中?変な名前。だいたい男の名前ってミカエルかクリストファーだと思うんだけど」と謎の持論をぶつける。
「じゃあ女の名前は?」田中が問うと、リリアは「ヨシコ」と急に生前の世界にいそうな名前を挙げた。「ガンバ〇ルーヤじゃん…」田中がツッコんでは、リリアは「なにそれ」と首を傾げた。
(そりゃ異世界人にはガ〇バレルーヤ通じひんかぁ~)
田中は異文化ギャップを感じた。「いやこっちの話だよ…」とリリアに言った。「女の名前はだいたいヨシコかマヒル」ミカエルが補足説明する。
(いやもっとガ〇バレルーヤじゃん…)
狙ってるのかと言わんばかりのピンポイントに田中はツッコまずにはいられない。
「とりあえず進もうよ。まだダンジョン1-2だよ。ステージどれぐらいあるかわからないんだからサクサク行った方がいいよ」
田中は次のステージに進む事をミカエルとリリアに提案する。ミカエルは、「行こっか」と二人に微笑む。リリアも、「うん!!王様にいい報告したいもんね!!」と笑顔を浮かべた。
イケメンと美少女に挟まれるガードレールのそっくりさん。空いた門を進み、1-3のステージへ向かう。黒服が規格外のサイズの鍋の下敷きになりながら「退かして……」と嘆く。
三人になったパーティーではじめての初戦。黒服は何人ぐらい来るのだろうか。その時、田中に緊張が走る!!! 三人は背中合わせになる。
敵を待っていると、どこからか黒服が四人現れる。
(三体四なんて卑怯だ!!!!!)
田中は心の中で叫ぶ。どうやら四人の黒服はそれぞれ、炎、水、草、光を操るようだ。ぶら下げている名札に『私は火属性です』などとわかりやすく書いてあった。
「まずは私だ!!!!!!!」
水属性の黒服が他三人の前に立つ。いきなり水属性である。倒しようがない。これにはミカエルも「クッ……」と歯を食いしばる。陽キャが不利になっていると田中としては気分がいいが、いまはそういうわけにもいかない。
「ウォーター!!!!!」
大量の水を手から出現させる黒服。(まずい!!!) 異能持ちが真っ先にやられたら田中もリリアも死んでしまう!
「私に力を貸して!!!!ソールト!!!!!!!!!」
リリアが大量の塩をまく。大量の塩を巻いたために浸透圧で水の形が崩れる。
「なぬっ!!!!!」黒服の動きが鈍る。
「いまだぁぁぁ!!!」田中がはじめて剣を人間に向ける。「ぐわぁぁぁぁ!!!」と痛みに悲鳴をあげる黒服。
そしてミカエルが「ファイアー!!!!!!」と叫びながら炎の矢を黒服に向かって放つ。水属性の黒服は「うわぁぁぁぁぁ!」と悲鳴を上げ倒れた。後三人。
「次は私だ!!!!!」草属性の黒服が田中を草で拘束する。「うわぁ!?!?」田中ははじめて拘束されパニックになる。「マジ無理無理無理無理!!! 無理なんですけど!!!?」動きを封じられた田中。草不可避。
ミカエルは「!???」と目を見開く。リリアも「田中!!!」と田中の名前を叫ぶ。田中を巻き添えに炎の技を使うことなんて出来ない。ミカエルは震える。
「いや助けてよ!!!!!!!」
田中は固まる二人を前に悲痛な叫びをあげる。キツめに拘束され、早く救出しないと窒息死しかねない。
(こうなるなら異世界なんて来なきゃ良かった…)
「フライパーーーン!!!!」
リリアは大きなフライパンを出現させる。そしてそのフライパンで草では無く黒服本人を打撃する。
(そんなのアリかよ!!??)
本人が意識を失ったら異能も解除されるのか、草が消滅した。
「ファイアー!!!!!!」
追い打ちをかけるようにミカエルが黒服に向かって炎の球体を蹴り飛ばす。焼ける黒服。
『あと二体!!!!』
三人は顔を合わせる。
「お次はおいらだみょーん。」
炎属性の黒服が前に立つ。なんだかクセが強いやつだ。
「気をつけて!!!」
ミカエルが言う。身構える三人。
「おいらの攻撃、くらえザウルス~~!」
炎の渦がこちら側へ放たれる。
「お水~出てきて~~!!!!」
鍋に入った水をぶちまけるリリア。炎の渦は水に溶けて消えた。
「なぜだ!!!??」動揺する黒服。
ミカエルは「ファイアー!!!!!」と黒服に向かって炎の矢を放つ。焼かれながら倒れる黒服。
(俺、全然役に立たない!!!!!!!)
自分の無能加減に気づく田中。
「あと一体!!! あと一体だよ!!!!」リリアがはしゃぐ。
そして現れる光属性の黒服。
「1-2最強の私が相手になってあげるわ!!!!」
黒服の女性がレーザービームを放つ。
『田中!!!!!』
レーザーを真正面から受けたはずの田中は、なぜか無傷だった。しかし痛い。
「ぐぅぅぅ!!!」と呻きながら田中は突っ込んでいき、剣を振り下ろす。
「なぜ…なぜ効かない!!!!?」
黒服の女性が叫ぶ。
「田中、今レーザー食らってたよね、なんで生きてるの…?」リリアが呆然と呟く。
(いや知らねぇよ!!!!!!痛いものは痛いわ!!!!)
そこへミカエルが「ファイアー!!!!!!」と炎の球体を蹴り飛ばす。黒服の女性は吹っ飛び、焼け焦げて倒れる。
「やったぁ!!!」リリアが飛び跳ねて喜ぶ。
扉が開き、三人は次のダンジョンへ進む。
廊下。
「そういえば、リリアの能力って何?」ミカエルが問う。
「私の魔法はクッキング!!! 料理を美味しく作れる魔法だよ!」
「料理って事は回復とか出来るの???」
「当然!!!」と胸を張るリリア。
(リリアの料理か、食べてみたい…)
するとミカエルが「大変!!!!」と叫ぶ。廊下にスライムが倒れていた。
「スライムが!!!」驚くリリア。
(いやもっと緊張感持てよ…スライムだぞ…)
田中は平然とモンスターに近づく二人にツッコむのだった。




