十八話「伝説の勇者」
魔王を前に体育座りする三人と一匹。
魔王は「王様が進めるモンスター共生…それは王様が考えた政策なんかじゃない。モンスター帝国のいいなりになった王の売国だ!この政策は間違っている!」と語りだす。
リリアは「嘘言わないでよ!モンスターと共生することでもっと王国をよくして行こうって王様が!」と叫ぶリリア。
ミカエルも、「モンスターだって悪さをするって決めつけられて勇者に倒されるより共生したほうが何倍も…!」と魔王の言葉に反論する。
ミカエルは「ファイアー‼」と魔王の話を聞かず魔王に攻撃を仕掛ける。
田中は「ちょっと待て!」とミカエルを止めるが、魔王はその攻撃を闇の中に封じる。
「なに⁉攻撃が効かない⁉」ミカエルは目を見開く。
「まずは人の話を最後まで聞け!このメガソーラー王国では王様の言うことは絶対厳守!私はモンスター共生に異を唱えたまでだ!それだけで家族は全員私の目の前で皆殺しにされた!その上、私は【魔王】のレッテルまで張られ国民から悪者にされた!でも私は何度でも訴える。モンスターと共生したってまともな未来はやってこないと!いまはただでさえモンスターがこの国に次々と移住し数も増え続けている。全員が全員悪いモンスターでは無いが町を荒らしたり、人を襲ったり、淡々と政治を変えていこうと企むモンスターもいるぐらいだ…。そんな中で次々とモンスターを国に入れたらどうなる⁉一度考えてみろ!この国はロクなことにならない!私は…私はそれがわかっている、だから異を唱えただけなのに!なぜ家族を殺されなければならない!なぜ魔王呼ばわりをされなくちゃならない!」
魔王の涙ながらの訴えは続く。
田中は(これ…魔王のほうがまともでは)と考えはじめる。
「この国のモンスター帝国に言いなりになるやり方、気に入らないものは排除するやり方、すべて間違っている!だから私は同じ異を唱える者をこのアジトに集めた。どうやっていまの政治を変えるか話あっていた…。それがなんだ!ここはただのアジトでしかないのに!ダンジョン呼ばわりじゃないか!次々勇者に仲間が殺されて…反対派の意見なんてあのジジイは聞こうともしない…!あのジジイは狂っている!間違っているのは国のほうだ!」
魔王は呼吸を整える。
「あの~」田中は前に立つリリアとミカエルを割って入る。
「一緒に王様に会いに行きません?そっちのほうが絶対早い気がするんですけど」
田中の提案に、ミカエルは「二人に話し合いさせるってこと?」と、首を傾げる。
リリアは「そんな…こんな意見まかり通るはず」と困惑する。
「なんでも否定から入るのはよくないよ」自身の行動への反省もあってか、田中が言うと、魔王は「ふっ…変わった勇者もいたものだ。」と乾いた笑みを浮かべた。
「でも…確かに僕も、王様に会いたい」ミカエルが言うと、リリアも「まぁいいわ。王様が売国奴なんて有り得ないと思うけどね」と答えつつも魔王の同行には否定しない。
魔王は「ならば共に参ろう。私も王に直接言いたいことがある。」と玉座から立ち上がる。
ダンジョンをクリアした三人と一匹は城へ向かう。
魔王が歩いているだけで、「え…魔王」「魔王様だ」「うわぁ…」と町の人は避けていく。
(たかだか十四歳ぐらいの女の子の扱いがこれか…)と下を向く田中。
城の門番は「何事だ⁉」と魔王を見て驚く。
「伝説の勇者が良いと言っているんだ!通してくれ!」チー牛・田中はついに権力を使いはじめる。
門番は「しかし…」と躊躇うが、「伝説の勇者の指示だ。入れてやれ。」と家来が現れる。
門番は「通りなさい」と四人と一匹を招待する。
スライムは「もうよぉわからんな」と呟く。
城にやってきた四人と一匹。
「魔王を連れてきました」田中が言っては、老人ホーム予備軍クソ売国ジジイこと王様は「うむ。何事じゃ」と目を細めた。
ミカエルは「嘘ですよね…。王がモンスター帝国のいいなりになってモンスターとの共生を進めていたとか、魔王の家族を皆殺しにしたとか。嘘ですよね?」と跪きながら問いかける。
王様は「ハハハハハハハ!」と高笑いを浮かべた。
「本当じゃよ。でも、ワシがモンスターが好きじゃったのも本当じゃ!モンスターと一緒に暮らすなんてメリットしかない。モンスター帝国の王はそう言っとったわい。ワシもそう思う。」
王様の言葉に、魔王は「その言葉の裏にどんな意図があるのか想像もしないのか!」と王を非難する。
王様は「この国ではワシが言うこと見るもの感じることがすべてじゃ。この国はワシのためにある。ワシの意見に反する者は皆粛清じゃ!」
ミカエル、リリアは信じていたものの実態に、「うそ…」「嘘だよね…」と膝から崩れ落ちる。
「この小娘を倒せ、伝説の勇者」
王様はとんでもないことを田中に言った。
田中は「王様。俺はそもそも伝説の勇者じゃない!」田中は反論するが、王様は「なにを言っておる。お主には特別な能力があるじゃないか」と驚く。
「俺は…能力なんて…何も」理解が一切できない田中。
ミカエル、リリアも「え?」と田中のほうを見る。
「お主の能力は死なない能力じゃ。」
王様に告げられた途端、すべての辻褄が一致する。
「は?」田中は固まる。
「その能力でワシをこの小娘から全力で守ってくれ!」田中に命令する王様。
その時だった。
ダンジョンにいただけではない数の黒服が城の中に入り込んでくる。
「すべて話は聞いた売国王め!」「すべての悪事は我々が許さない!」と次々声を上げる。
中には力を溜め始める黒服も。
魔王が「よせ!それでは戦争になってしまう!」と制止するが、もう彼らに残された術は無かった。
「王様を殺せ!」黒服が各々能力を使い暴れはじめる。
その暴動を家来たちが止めに向かう。
パニック状態になる城から逃げる三人と一匹。
「なに…なんか城が騒がしくない?」町の人が城を見つめる。
もう何が正義かわからなくなった田中たちは、混沌とした城を見上げる。
リリアは「これ以上…私たちにできることって、無いよね」と呟いた。
ミカエルも「勇者がダンジョンに行く理由も、もうないね」と言いながら城を見上げる。
スライムも「ほんまに、人騒がせな奴らやなぁ」とぴょんぴょん飛び跳ねながら言った。
政治的思想が強めだった田中だが、ここまで来ると正直どうでもよくなっていた。
それはリリア、ミカエルもおなじだろう。
つい燃え上がる城を見て三人は同時に呟く。
『もう、勝手にやっててくれよ…』




