十一話「ヨ〇ダ2000」
「ラッ〇ンゴレライ!ラッ〇ンゴレライ!ラッ〇ンゴレライ説明してね!」「いやちょっと待てちょっと待てお兄さん」
黒服二人が刻むリズムに揺れる一同。スライムは揺れる事が出来ないので飛び跳ねる。怪しい宴会みたいなテンションだ。田中はどうしてもリズムに乗ることが出来ない。
(駄目だ。陽キャの悪ノリについていけない。)
田中は諦めかけるが、それがナイスプレーだった。田中がリズムを崩した事により、バランスを崩す黒服の二人。
「ここしかないで!! 行けやオラァ!!!」
スライムが叫ぶと、リリアが「フライパーン!!!」と叫びフライパンを出現させる。田中は八千円の剣を振りながら黒服二人の方へ近づく。あちら側からは絶対に攻撃しない敵だ。田中が剣を振ると同時に、リリアがフライパンでもう一人の黒服に打撃をする。
仕上げはミカエルさん。倒れた二人に向かって炎の渦をぶつける。燃え尽きる二人。
(俺がリズムを崩したばかりに…かわいそうだ)
1-5への扉が開く。「さて、次のダンジョンに向かおう、」ミカエルを先頭に、リリア、田中、スライムがついていく。
スライムは「勝っとるやんけ!さすが勇者共、ようやっとるわ!!!」と嬉しそうに飛び跳ねる。
ミカエルが「つぎはどんな敵が来るんだろう…」と心配しながら廊下を歩く。一軍陽キャが物事心配していると飯が美味い。
「調べるで!!!!」
発光するスライム。
「次の黒服、多分また変な異能持ってるで〜。ほんま草生えるレベルのやつ来るわこれ。知らんけどwwwwww」
スライムが言うと、ミカエルは「ねえスラちゃん、スラちゃんってどんな能力を持ってるの???」と微笑む。少し気になっていた田中。リリアもスライムがいる方を見る。
「ワイ、全宇宙サーチとかいうクソ強そうな能力持っとるんやけどな? まぁノイズだらけでロクに見えへんのや。結局ちょっと分かるだけのゴミスペックやで草www」
スライムが言うと、「超便利じゃーん!!!!」とミカエルがスライムを抱えて興奮する。「便利な仲間が出来た!便利な仲間が出来た!!!」喜ぶミカエル。
(便利な仲間ってなんだ。道具か!!!!!)
田中はツッコミを入れるがそんなツッコミなんて気にしないスライムを抱き抱えたミカエルを先頭に、リリアと田中は1-5のステージにやってきた。
そこには女二人が待ち構えていた。「ドスコーイ!」と言いながら片方の開いた膝の上にもう片方が両手を広げながら立つ。スライムが言うようにこいつらはまた独特の敵だ。
相方の膝の上から降りた黒服の女は、「イギリスで、餅、つこうぜ!!!!!!」と叫んだ。(これは…まさか…)田中に嫌な予感が走る。
ミカエルとリリアは、「イギリスで餅…???」と首を傾げる。「イギリスってなに?」と目を丸くするリリア。スライムは、「どっちか生きとる限り無限回復コンボ決めてくるバケモンらしいでw 倒せるわけないやろこんなん草」と解説する。
「イギリスでお餅つく?」「そう」「どゆこと?」「イギリスで、お餅をついたら、一儲け出来るって、計算が、出たんだ」
黒服同士の会話を呆然と見つめるミカエル、リリア、田中、そしてスライム。「だからイギリスでペッタンコー、って言いながらお餅ついて貰ってもいい?」「ペッタンコー?」「そう」どこかで聞いたことのある会話を繰り広げる黒服二人。
田中は(いいから早く攻撃して来いよ…!!!!)とイライラする。
「鍋カモーン!!!!」
大き過ぎる鍋を片方にぶつけるリリア。潰される黒服。「ペッタンコー!!!!!!!」潰されてない方の黒服が怒りに湧き大声をあげる。「アーイ!!!」潰された方の黒服も鍋を放り投げ回復する。
「なぬ!!!!?????効かない!!」
驚くリリア。
「だから言うたやんけ、同時に沈めな無理ゲーなタイプのバケモンやってww」
リリアを煽るスライム。リリアは、助けたはずのスライムを片足で踏む。
「コバヤシサ〇コッ!!!!」
踏まれたスライムは特殊な呻き声をあげる。
「ペッタンコー!」「アーイ!」「ペッタンコー!」「アーイ!」「ペッタンコー!」「アーイ!」「ペッタンコー!」「アーイ!」「ペッタンコー!」「アーイ!」
自前のもののように人のギャグを堂々披露する黒服の精神に少々納得が行かない田中。この世界のスマホが使えない場所なのにどこから情報を集めるんだ、サーチ能力を持ったやつが敵側にもいるのだろうか。と田中は考える。
リリアは「油カモーン!!!」とターンを決めて高熱の油を黒服二人の方へぶちまける。黒服二人に100のダメージ。「アーイ!!!」「ペッタンコー!!」と叫びながら黒服二人は痛がる。だが、「ペッタンコー!!!」「アーイ!!!」と互いに回復する。
リリアは、「一気に殺さないとダメってこと!!???」と叫ぶ。「だからさっきから言うとるやんけwwww」とスライムは笑うが、またスライムはリリアに踏まれてしまう。
「ファイアー!!!!!!!」と炎の矢を放つミカエル。
「ペッタンコー!!!!!」「アーイ!!!!!」と叫びながら痛がる二人。黒服二人は手を伸ばしながら回復し合う。
(ヨ〇ダ2000のモノマネするなら体型まで合わせてこい!!!)
心の中でツッコミを入れる田中。だがこれじゃ埒が明かない。奴らは何度でも回復してくる。(正直ウザイ…)
「任せて!!!!」
ミカエルが前線に経つと、「ファイアー!!!!!」と叫び炎の鎖を二人に向かって放った。
「アツィィィィィィ!!!!!!!!」
炎の鎖に囚われ渾身のネタが披露できなくなる二人。そうしてエンタメ精神に満ち溢れた黒服二人は同時に焼け焦げるのだった。
(俺…何もしてないんだが…)
1-5までのダンジョンをクリアした三人と一匹。スライムは「勝ったで勝ったで!!よう倒せたなァ勇者共!!w 正直無理ゲーかと思っとったわwww」と愉快そうに爆笑する。
暫くすると、二階への階段が現れる。ミカエルが「すごい!!二階だ!!二階まで行けるよ!!」と興奮する。
三人と一匹は二階へと続く階段を登る。二階の外観が何やらおかしい。「なんか…可愛い????」リリアがその違和感を口に出す。ピンク色の壁にシャンデリア。例えるならサン〇オの世界観だ。一階の薄暗さも無く、廊下の床にはハートマークがたくさん。床のハートが微妙に脈打ってるように見えるのは気のせいか。
それに、ところどころにうさぎやクマのぬいぐるみが装飾されていた。
(痛い女の部屋みたいだ……)
田中は心の中でツッコミを入れる。「めっちゃ可愛いここ~♡」ミカエルはバラエティ番組で一人だけ饒舌に喋っているオカマのような声をあげる。リリアも、「私ここに住みた~い!」と楽しげに辺りを見渡す。
「こんなん絶対メンヘラの巣やろ…住民票見たら情緒不安定って書いてそうなレベルやんけ。」
と飛び跳ねながら言うスライム。なんだかこのなんJスライムと田中は視点が似ている気がする。
2-1のステージに辿り着くと、パッとスポットライトが黒いワンピースを身にまとった少女を照らした。
「!?」
一同はその方向に視線を向ける。
「きゅんにちは~!“明るい国を築く会”アジトへようこそ!♬ よくここまで来れたね!!!あ、アジトって言っちゃったぁ!!!言っちゃいけなかった、てへっ!♡…なんでここまで来れたの。」




