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メンタルつよつよ令嬢ハルカはガリガリ王子をふくふくに育てたい!  作者: ふくまる
第3章:ふくふくの根を張りましょう 〜才能開花と責任の自覚〜

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閑話:セシルのため息

訓練場での出来事から数日後——。

王太子の執務室では、レイノルドが側近たちと共に書類仕事に追われていた。


いつもなら賑やかなこの部屋が、今日は妙に静かだ。

その理由は、ただ一つ。


「……はあ」


今日何度目かも分からない深いため息を吐いたのは、

セシル・ローゼンベルクだった。


快活で前向き、場を明るくするのが常の彼は、すっかり影を潜め、

視線を宙に彷徨わせている。


「……」


その様子を、レイノルド、エドウィン、リオネルの三人が

心配そうに見守っていた。


「どうした、セシル」


見かねたエドウィンが、恐る恐る声をかける。


「負けたこと、まだ引きずってるのか?」


「ん……ああ」


生返事。

覇気のない声に、三人は顔を見合わせた。


「……本当に、大丈夫か?」


レイノルドも尋ねるが、返ってくるのは曖昧な相槌ばかり。

完全に上の空だ。


「そういえば」


沈黙を破ったのは、今まで黙っていたリオネルだった。


「ハルカ嬢、って言ったよな?

アーサー殿下と一緒にいた、マロンレッドの髪の女の子」


「ああ、オンタリオ辺境伯の令嬢か」


エドウィンが頷く。


「訓練場から移動する時、セシルにハンカチ渡してたぞ」


「ハンカチ?」


レイノルドが、ぴくりと反応する。


「額から血が出てるから、って」


さらりと言い放つリオネルに、

セシルへ向けられる三人の視線。


——途端に、部屋の空気が色めき立った。


「えっ!?」


「まさか……!」


「一目惚れ!?」


レイノルドが指差す。


「え、セシルってロリ——」


「——イヤイヤ!」


慌ててエドウィンが自分で遮る。


「確かあの子、アーサー殿下と同い年だろ? 七歳だっけ」


「セシルとは六歳差か……貴族的に無くはない、か」


「いや、でもな」


レイノルドが真剣な顔になる。


「あの子はアーサーの恩人だぞ。それにオンタリオ領の跡取りだ」


「しかし」


エドウィンが、にやりと笑った。


「ラオウ様の孫娘でもある。

結婚すれば、ラオウ様を『お祖父様』と呼べるわけで……」


(……それなら、あり得る)


三人は無言で同時に頷いた。


「よし」


レイノルドが決意を固める。


「本人に確認しよう」


「あー、セシル」


恐る恐る声をかける。


「ハルカ嬢のことなんだが……」


「ん?」


ようやく、セシルがこちらを向いた。


「ああ、可愛かったよな、あの子」


「え?」


「俺の怪我を心配して、ハンカチを差し出してくれてさ」


セシルの表情が、見る見るうちに蕩けていく。


「それに、『お祖父様が無茶をしてごめんなさい』って、

手作りのクッキーまでくれたんだぞ?」


「おお……」


「いい子だ……」


完全に陶酔している。


「しかも、あの魔力! 盾の展開、見たか?」


さらに熱が入る。


「元気で健康的で、魔力が高くて、気が利いて、料理が上手で、

優しくて可愛いんだぞ——すごくないか?」


「……」


三人は黙って顔を見合わせた。


「マズいな」


エドウィンが小声で囁く。


「こいつ、本気だ」


「どうする?」


リオネルが淡々と尋ねる。


「え、えーと……」


レイノルドが必死に言葉を探す。


「あの子は、アーサーの恩人だし、その……アーサーもあの子のこと、大事に思ってるみたいだし……」


「うん」


「その……ほら、あの子はオンタリオ領の跡取りみたいだから……」


レイノルドが、必死に言葉を紡ぐ。


「あの子と仲良くなるためには、やっぱりそれなりに強くないといけないと思うし……」


セシルはハッとしたように目を見開き、途端にその瞳が輝き出した。


「そうか!」


「え?」


「あの子と仲良くなれば、オンタリオ領で修行できるのか!」


「ちょ、待て——」


「しかも、ラオウ様に直接教えを請えるかもしれん……!」


完全に暴走し始めるセシル。


「我が家は武門だ。父もきっと賛成してくれる……」


「落ち着け、セシル!」


「……まあ」


リオネルが冷静に口を挟む。


「恋愛は自由だし」


「突然、第三者を決め込むな!」


エドウィンがツッコむ。


「……とは言え、成り行きを見守るしかないな」


諦めたようにエドウィンがため息をつき、

レイノルドも同意する。


(アーサー、ごめん。兄は無力だ)


その後も、セシルの独り言は止まらない。


「強くなれる……」

「オンタリオ領……」

「ラオウ様……」


元々は、ただラオウに惚れ込み、

教えを請いたいと思っていただけだった。


だが、友人たちの言葉をきっかけに——


(ハルカ嬢の婿になるのも、案外いい手かもしれん……)


そんな考えが、静かに芽吹いていったセシルだった。



◇◇◇



こうして密かに、

セシルの「ハルカ嬢の婿になる計画(仮)」が始動した。


それが、どれほど険しく、

そして波乱に満ちた道のりになるのか——。


この時はまだ、知る由がなかった。

フラグの予感!?∑(゜Д゜)


♦︎ お知らせ ♦︎

一年の締めくくりに、「変えられるのは自分だけ」という気づきから始まる短編を書きました。

一方的な献身に甘え、胡座をかいていた相手には、それに見合う結末を。


かつては大好きだった相手――

その気持ちごと手放し、自分の未来を選ぶ物語です。


小さな覚悟と、少し強めの“ざまあ”を添えて。

忙しい年末、大掃除の合間にでもよろしければご一読ください╰(*´︶`*)╯♡


▶︎https://ncode.syosetu.com/n0871lo/


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― 新着の感想 ―
翠珠さま: (コメント欄に横から申し訳ありません) 私も????と思っておりました。 ありがとうございます。お陰様で読むことができました。
感想ではないので恐縮ですが、 貼ってもらってある新作短編のリンクが、 権限エラーで開きません。 https://ncode.syosetu.com/n0871lo/ の方がいいと思います。
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