表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メンタルつよつよ令嬢ハルカはガリガリ王子をふくふくに育てたい!  作者: ふくまる
第2章:ふくふくの芽を育てましょう! 〜友情と絆の物語〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/45

第25話:大地の盾

読んでくださってありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡

お母様の話を聞いてから、私はずっと「力」と「強さ」について考えていた。


お母様の言うことは、きっと正しい。

力とは、武力だけではない。

権力、経済力、影響力、発言力、政治力——世の中にはさまざまな「力」が存在し、それらをどう身につけ、どう使うかが大切なのだと。


だからこそ、焦らずに多くのことを学んでほしい。

お母様が伝えたかったのは、きっとそういうことなのだと思う。


でも——。


◇◇◇


力は、一朝一夕で身につくものではない。


領主になるための準備は、少しずつ前進している。

お祖父様やヒロから領地について学び、ミズホ村の米の増産計画でも責任者を任されている。


特産品の開発だって進んでいる。

澄み酒はこれからだけれど、すでに商品化して流通しているものもある。

これらは、このまま頑張ればいい。


そのうえで——。

今はやっぱり、「物理的に守る力」がほしい。


もちろん、パトラッシュもルナもいる。

護衛騎士だってついてくれるし、辺境伯家の嫡子として「守られる側」であることも理解している。


だけど、この前みたいに守り手が足りない時は?

アーサーやレオ、子供たちだけの時に襲われたら?


逃げるにしても、子供の足では追いつかれてしまう。

何より——アーサーとレオに怖い思いをさせたくない。


だからこそ、思う。


「自分と、側にいる人を守る力」が必要なんじゃないかな。


攻撃できなくてもいい。

助けが来るまで攻撃を防げれば、生き延びる確率は格段に上がる。

そのための結界や障壁の魔法が使えるようになれば……!


そう考えた瞬間、ハッと閃きが降りてきた。


そうだ、新年にお祖父様からいただいた——お祖母様の魔導書!


あれに、土で壁を作る防御魔法『大地の盾』があったはず!


◇◇◇


「ルナ、この前いただいたお祖母様の魔導書、持ってきてくれる?」


ルナが私の部屋から、布に包まれた古い魔導書を大切そうに抱えて持ってきてくれた。


表紙に刻まれた土の紋章に指先を触れながらページをめくると、丁寧な文字でびっしりと記された呪文や魔法陣が並ぶ。


そして——あった。


『大地の盾』


地面から土の壁を作り出す防御魔法。

難易度は初級と中級の間くらい。


説明にはこうある。


『注ぐ魔力に応じて持続時間が変わり、魔力密度が高いほど硬度を増す』


これだ……!


これが使えるようになれば、少なくとも一撃目を防ぐことができる。

その間に逃げるか、助けを呼ぶか、次の手を考えられる。


それに、練度を上げれば、どんな攻撃も通さない、もっと強い盾も作れるようになるはず。


私は『大地の盾』の載っているページを開き、そのままお母様へ差し出した。


「お母様、この『大地の盾』を覚えたいんです。勉強も特産品開発も続けます。でも、今は防御力が必要で……」


お母様は魔導書を受け取り、少し驚いたような表情を浮かべた。


「お義母さまの魔導書……。そうね、これは良い魔法だわ」


ページをめくりながら、頷いてくれる。


「ハルカの言う通り、強力な攻撃手段がない今の状況では、まずは身を守る術を持つことが大事ね」


「それじゃあ!?」


期待に胸が高まる。


「ただし、この魔法は簡単ではないわ。土魔法の基礎がしっかりしていないと発動が難しいの」


お母様は真剣な顔で続けた。


「だからまず、もう少し土魔法の基礎を固めましょう。そのうえで、少しずつ『大地の盾』の練習をしていきましょう」


「はい!」


お母様は続けて、アーサーとヒロへ視線を移した。


「アーサー様も、風魔法の防御術を身につけましょう。万一また襲撃に遭ったとしても身を守れるように。ヒロ、手伝ってくれる?」


ヒロは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに胸へ手を当て、恭しく頭を下げた。


「私でよろしければ」


アーサーも嬉しそうに頷いた。


◇◇◇


それからの日々、私たちは基礎練習に励んだ。


私は土魔法。

アーサーは風魔法。


土を感じる。

地面の魔力を探す。

それを自分の魔力へとつなげる。


……だけど、土は重い。

全然うまく動かせなかった。


それでも、諦めなかった。


何度も何度も、練習した。


◇◇◇


ある日の実習。


「そろそろ、『大地の盾』を試してみてもいいわね」


お母様の言葉に、私は思わず目を輝かせた。


「まずは小さな壁からよ。硬い土がしっかりと固まって、壁になるイメージを忘れずに」


私は目を閉じ、ゆっくり息を整える。


地面——。

土——。

それが盛り上がり、私を守る壁になる。


「大地の盾!」


魔力を流す。


地面が小さく揺れ——。


ボコッ。


土が盛り上がったが、形にならずに崩れ落ちた。


「……」


落ち込みかけた私に、お母様が優しく声をかける。


「大丈夫よ、ハルカ。最初は誰でもこうよ。焦らなくていいから、しっかりイメージを固めて」


「……はい」


悔しい。

でも、もう一回。


そして、またもう一回。


土を固めて……密度を高めて……壁の形に……。


◇◇◇


私は毎日、練習した。

朝も昼も夕方も、気がつけば『大地の盾』ばかり。


隣ではアーサーも『ウィンドシールド』の練習に励んでいた。


「僕もぜんぜん上手くできなくて」


「一緒に頑張ろうね、アーサー」


「うん!」


二人で励まし合いながら、少しずつ前へ進んでいった。


そして——一週間後。


ついに私は、膝ほどの高さの小さな土壁を作ることに成功した。


「できた……!」


思わず飛び上がって喜んだ。


「すごいよ、ハルカ!」


アーサーが拍手し、お母様も嬉しそうに微笑む。


「よく頑張ったわね。でも、これからよ。集中して」


「はい!」


◇◇◇


まだ小さな壁だし、密度も低い。

強い攻撃には、とても耐えられない。


それでも——。


たしかに一歩、前へ進めた。

お母様の言っていた「いろいろな力」のひとつを、自分の手で掴み始めている。


このまま続けていけば、きっと大丈夫。


じんわりと、胸の奥が温かくなった。


まもなく、アーサーと初めて出会った夏が来る。

魔法が少しずつ形になっていく喜びに背中を押されるように、私は、ますます訓練へとのめり込んでいったのだった。

現在、毎日12:10投稿頑張ってます!

応援していただけると嬉しいです(((o(*゜▽゜*)o)))♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
小人達も応援してます(`・ω・´)ゞ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ