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メンタルつよつよ令嬢ハルカはガリガリ王子をふくふくに育てたい!  作者: ふくまる
第2章:ふくふくの芽を育てましょう! 〜友情と絆の物語〜

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17/43

第17話:家族が増えた日

ちょっと短めのお話です。

あの喧嘩の翌日、私はアーサーとレオ、それにヒロを呼んで、一緒に話をした。

三人とも、最初は少し緊張した顔をしていた。


「朝の訓練だけじゃなく、マナーや教養も二人で一緒に学んでみる?」


私の言葉に、二人は顔を見合わせ、それから力強く頷いた。


「僕、やりたい」

「俺も!」


二人の顔がぱあっと明るくなる。でも、少し戸惑いもあるようだ。

特にレオーーおそらく、昨夜ヒロから色々言われているのだろう。


「でも、本当にいいのか?」


私は、にっこりと笑った。


「うん。お父様とお母様も賛成してくれたから。もちろん、二人が嫌じゃなければだけど」


二人はほっとしたように口元を緩ませた。


二人の意思を確かめたのは、今日が初めて。

なのに、どちらも迷うことなく「やりたい」と言ってくれたのが嬉しかった。


とはいえ、レオは読み書きがまだ十分ではない。趣味が読書のアーサーとは、スタート地点が異なる。

そこで私たちは話し合い、毎朝の訓練に加えて、朝食後一時間だけアーサーと私でレオに読み書きを教えることにした。

それが終わったら、ヒロが日替わりで「マナー」と「計算」を、家庭教師から「簡単な地理と歴史」「基礎の法律」などを少しずつ教えてもらうことにした。


そして、学びの時間の“ルール”も決めた。


「レオは、お仕事の手伝いはこれまでどおり、午後からしっかりやること」

「アーサーは、魔法の勉強と練習を毎日欠かさないこと」

「二人とも無理はしないこと。解らない時、難しすぎると思った時は正直に相談すること」


どちらも、得意も苦手も違うからこそ、補い合える。

二人は真剣な顔でうなずき合った。


──こうして、二人の生活は少しだけ大人びたリズムになった。


朝は今まで通り体力作り。

午前は座学。

午後からはレオが家の仕事を手伝い、私はアーサーと一緒に魔法の勉強をする。

加えて、レオはどうやら毎晩ヒロから読み書きの補習を受けているようだった。


屋敷のあちこちで、ページをめくる音や、筋トレや素振りの“いち、に、さん”という声、呪文の小さなつぶやきが重なり、それがいつの間にか、私にとっては心地よい“日常の音”になっていった。


◇◇◇


十二月に入り、オンタリオ領に初雪が舞い始める頃には、二人の意欲あふれる毎日に刺激されるように、屋敷全体の空気が活気づき、生産効率もぐんと上がっていた。


部屋は今まで以上にピカピカに磨かれていたし、兵たちの動きも一層キビキビしていた。

パトラッシュでさえ、なぜかいつもよりキリッとして見える。


レオは既に「読み」は習得し、今はもっぱら書きとりの日々。こっそりヒロから宿題も出されているようで、時間を見つけてはせっせと励んでいた。


アーサーはアーサーで目に見えて活発になった。表情も明るくなったし、自分の意見を口にすることも増えた。何より、以前に比べて体力がつき、少しだけ筋肉もついてきたようだった。


『男子、三日会わざれば刮目(かつもく)して見よ』


本当に、驚くべき成長だった。


そんな二人の成長を眺めながら、私はふと考えてしまう。


――私にも、こんなふうに一緒に成長できる友達がいたらな。


アーサーもレオも大好きだけれど、二人は男の子だ。

同じ気持ちを共有できる“同性の仲間”がいたら、どんな感じなんだろう。

今更お姉ちゃんは無理でも、妹とか……。


そんな想像をしていたちょうどそのときだった。


「誰か!お医者様を呼んで!!奥様が……」


マーサの声が、廊下に響き渡った。


「お母様!?」

「奥様、しっかりして下さい!」


あっという間に家中が騒然となり、ヒロがお母様の肩を支え、慌てて駆けつけたセバスが指示を飛ばす。


「産気づかれた!――急げ、準備を!」

「旦那様と大旦那様にも至急連絡を!」


心臓が跳ね、足が震えた。

でも、不思議と怖くはなかった。

胸の奥で何か大きなものが温かく広がっていく。


「赤ちゃん!」


待望の瞬間が、すぐそこまで来ていた。


◇◇◇


数時間後。

冬の澄んだ空気の中、かすかな産声が二つ、重なるように響き渡った。


「おめでとうございます。元気な女の子が二人、生まれましたよ」


お母様の隣に寝かされた小さな二人の赤ん坊。

感涙に咽び泣くお父様と、デレデレと目尻を下げたお祖父様と一緒に、お母様を労う。


「アリサとヒナタよ」


少し疲れた様子が残るお母様の優しい笑顔に、ホッと胸を撫で下ろす。


——わたし、妹ができたんだ。

胸がいっぱいになり、涙がこぼれそうになる。


ああ、こんなにも嬉しいんだ。


「お姉ちゃんになるのね、ハルカ」


お母様が微笑む。


「触ってもいい?」


「ええ、優しくね」


私は、そっと手を伸ばした。


赤ちゃんの小さな手に、指を触れる。

温かい。

すると、アリサが、私の指をぎゅっと握った。


「……っ」


胸が熱くなった。


私は小さな双子たちの手に触れながら、そっと語りかけた。


「……お姉ちゃんだよ」


私が感動の初対面を果たしていると、背後からそわそわとした気配を感じた。

——レオとアーサーだった。


「ち、ちいさい……」


「これ……泣いたらどうすれば……?」


初めて自分たちより下ができた二人は、どうしたらいいのか分からず、ただオロオロウロウロしていた。


「よかったら近くで見てあげて」


お母様が手招きして二人を呼び寄せる。


二人はおっかなびっくりしながらも、私を真似てそっと指を差し出した。

アリサがその指をキュッと握り、ヒナタがふえっと声をあげる。


途端に、二人の表情が、ぱあっと綻んだ。


「かわいい……!」


「うわ、なんか守りたくなる……!」


その声は、少し誇らしげで、少し照れくさくて、そしてなによりも"お兄ちゃん"そのものだった。


——そうか。

今日から、私だけじゃなく、レオもアーサーも"お兄ちゃん"になるんだ。


二人の賑やかな様子に釣られるようにやってきたお父様とお祖父様も加わり、双子を囲んで皆がニコニコと嬉しそうだ。


私はそっと双子の額にキスを落とした。


「これからよろしくね、アリサ、ヒナタ」


小さな光のような二つの命。

この冬、私たちの家に、あたたかな未来がもうひとつ——いえ、ふたつ増えたのだった。

お読みいただきありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡


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