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メンタルつよつよ令嬢ハルカはガリガリ王子をふくふくに育てたい!  作者: ふくまる
第2章:ふくふくの芽を育てましょう! 〜友情と絆の物語〜

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16/44

第16話:ワクワクの予感

読んでいただきありがとうございますヽ(*´∀`)


誤字報告をありがとうございます☆

早速修正させて頂きました!

アーサーとレオが取っ組み合いの喧嘩をした日。

夕方、私はお父様の執務室に呼ばれた。


扉を開けると、お父様とお母様、お祖父様、そして執事のセバスとヒロがいた。

ヒロは、お父様たちに深々と頭を下げていた。

何が起こっているのか理解するのに、少しだけ時間がかかった。


やがて、皆の視線が私に向けられ、怪我の具合を問われる。

大丈夫だと答えた。


すると、ヒロが今度は私に向かって深く頭を下げた。


「お嬢様、本日は誠に申し訳ございませんでした」


その声は、震えていた。


「弟のレオがアーサー様に暴力を振るい、さらにお嬢様にまで怪我を負わせてしまいました。侍従としても、兄としても、私が至らないばかりに起きたこと。心よりお詫び申し上げます」


ヒロは、さらに深く頭を下げた。

私は慌てた。


「ヒロ、顔を上げて。謝罪はすでに受け取ったわ。何度も言うけれど、小さな子ども同士のことだし、レオだけが悪いわけじゃないわ」


でも、ヒロは顔を上げなかった。


「いいえ。レオは王子であるアーサー様に手を上げました。これは決して許されることではありません」


その言葉は固く、重かった。


王子に手を上げる――この世界では重大な罪。

場合によっては処罰されることもある。


胸が締め付けられるようだった。


「でも……」


「ハルカ、落ち着いて」


お母様が優しく肩に手を置いた。


「ヒロ、顔を上げなさい。あなたを責めるためにここに呼んだわけではありません」


その言葉に、ヒロはゆっくりと顔を上げた。

その瞳は、深い後悔に満ちていた。


◇◇◇


「原因はなんだったんだ?」


お父様の問いかけに、ヒロが小さく答えた。


「恐らく……レオの嫉妬でしょう」


嫉妬。

その言葉に、私は息を飲んだ。


「お嬢様や私を盗られたと……身の程を弁えず申し訳ありません」


ヒロは再び深く頭を下げた。

かすかに震える肩が、必死に感情を押し込めていることを物語っていた。


……そんなはずはない、と思いたかった。

けれど胸の奥がざわつく。指先が冷えていく。

思い返せば、ヒロが遠征で不在の間も、確かに私はアーサーに掛かり切りで――


まだ七歳のレオが兄の不在をどう感じていたか。

そんなの、少し考えればわかることだったのに。

私がもっと気にかけていればーーこれは、間違いなく私の落ち度だ。


重たい沈黙が落ちる。

その気配を受け止め、まるで空気を整えるように、セバスが静かに口を開いた。


「僭越ながら、一つ提案がございます」


いつもの落ち着いた声だった。


「今後、レオとアーサー様が顔を合わせないよう、訓練の時間をずらすなど、計らった方がよろしいのではないでしょうか」


その提案に、私は胸の奥が熱くなり、気づけば声が出ていた。


「それは、ダメです」


セバスが少し驚いたように私を見る。


「お嬢様?」


「二人を引き離すのは、よくないと思います」


お父様も、お母様も、セバスも、ヒロも、私を見ていた。


「子どもが強く、まっすぐ育つためには、競い合う相手が必要なんです。ライバルが必要なんです」


私は、前世で五人の息子たちを育てた日々を思い出していた。


誰が一番速いか。

誰が一番高く跳べるか。

誰が一番たくさん食べられるか。


そんな小さな競争の積み重ねが、彼らを強く、逞しく育てた。


「アーサーとレオは歳も近いし、男同士。意識し合える、いいライバルになれると思うんです」


しばらく沈黙が続き――

それを破ったのはお祖父様だった。


「ハルカの言う通りじゃ!」


豪快に笑う。


「男ってのは競い合って大きくなるもんだ。ワシもタイロンも、学生時代は毎日のように喧嘩しておったわい!」


「父上……」


お父様が呆れたような顔をする。


「でも、それで絆が深まったのも事実じゃろう?」


お祖父様はニヤリと笑った。

お父様は何も言えなくなった。


お母様もやわらかく微笑んだ。


「そうね。あの年頃の男の子は、感情をうまく扱えるようになるまで時間がかかるものよ。黙って引き離すより、自分たちで折り合いをつける機会を与えましょう。失敗から学ぶことも大切だわ」


お母様は静かに言葉を続けた。


「ハルカの言うように、二人でいれば、相手の振る舞いが“お手本”になるでしょうし、好奇心も良い方向に働くわ。言葉だけより、実際に見て、触れて、感じて学ぶ方が男の子には向いているもの」


そして、そっと私の頭に手を置いた。


「危ない時だけ守ってあげればいいの。あとは今まで通り、できた時には褒めてあげて。そうすれば、競い合いながらも自分で考えられるようになるわーーあなたが今までやってきたように。ね、ヒロ」


そう言って今度はヒロに顔を向け、お母様は微笑む。


「そうね。きっと今日の喧嘩だって、ただの衝突ではなく、学びの始まりかもしれない」


私もお母様に全力で乗っかることにした。


「大丈夫。お母様の言う通り、ヒロは、兄としても、アーサーの侍従としてもしっかり役目を果たせているよ」


そして、にっこりと特大の笑顔をヒロに向ける。

ヒロが感極まった様子で、肩を震わせた。


そんな私たちを見て、お父様が深く息を吐いた。


「そうだな。幸い怪我も大したことないようだし、今回のことは不問にする。アーサーの養育に関しては王より我が家が一任されていることだしな。もし苦情が来たら、俺がなんとかするさ」


そしてヒロを見る。


「ヒロ、お前も気に病むな。子どもの喧嘩は、どこにでもあることだ。ただし、怪我には注意しろよ」


「……ありがとうございます」


ヒロは、深く頭を下げた。


◇◇◇


私は、みんなに感謝を述べた。

それから、ふと思いついたことを言ってみた。


「お互いをお手本にし合って刺激し合えるなら、朝の訓練だけじゃなくて、マナーや教養も一緒に学ばせたらどうかな」


ヒロが驚いたように顔を上げた。


「お嬢様、それは……」


「ダメ?」


「いえ……今でも十分過ぎる待遇をいただいています。これ以上は……」


ヒロは恐縮して首を振る。


セバスも言う。


「レオの将来を考えるなら、きちんと仕事も覚えておかなければ本人のためになりません」


確かにその通りだった。

でも、私はまだ諦めきれなかった。


お母様が助け舟を出した。


「両立できる範囲で、ならいいんじゃないかしら?マナーも教養も、どんな仕事にも役に立つわ。学ぶ機会があるなら、学んでおいて損はないもの」


私も続けた。


「アーサーも、一緒に学ぶ相手がいた方が成長が早いと思うの。もちろん私も、時々は一緒に参加するわ。でも、男女でマナーや必要となる教養も異なるから、レオと一緒の方が何かと都合がいいと思うのよね」


「それでも、流石に王族と同じマナーや教養というのは……」


セバスが顔を曇らせる。


お父様が考え、そして言った。


「ならば、まずは一年だけ、一緒にやらせてみてはどうだ?それくらいなら基礎部分と言えるだろう。その後は、それぞれの習熟具合と希望に合わせて、その時考えればいいのではないか?」


「それ、いいと思う!」


思わず飛び上がった。


「流石、お父様!」


お父様は嬉しそうに、でも少し困ったように笑った。


「ただし条件がある。嫌がったら無理強いしないこと。ついていけなくなったら相談すること。決められた授業や仕事はそれぞれきちんとこなすこと。わかったか?」


「はい!」


私には確信があった――レオとアーサーなら、きっと大丈夫。


レオは、不器用なところもあるけれど、真っ直ぐで、向上心が高くて、とても優しい。

アーサーは、少し内向的で自己主張が得意ではないけれど、その分相手をよく観察してて思いやりもある。


そんな二人が一緒に居れば、お互いの努力や、振る舞いが、全てお手本になる。

そしてお互いの好奇心を刺激し合って、どんどん成長していけると思う。


ぶつかり合ってもいい。

競い合い、励まし合い、そして――

いつか、本当の仲間になる。


ビバ!男の友情!!!


明日、二人に話してみよう。

一緒に勉強しないかって。


きっと喜んでくれる。

そう思うと、急に明日が楽しみになってきたのだった。

現時点での年齢関係を整理するとこんな感じです╰(*´︶`*)╯♡

ハルカ;5歳

アーサー:5歳

レオ:7歳

ヒロ:14歳

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