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極めてリハビリ的な【短編集】  作者: 伊井塚ショウ


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5/6

ストーキング

 世の中にはストーカーが当たり前のように存在する。

 他人のプライバシーを絶えず観察し、接触を図ろうとする痴れ者。

 俺はそんな奴らが心底嫌いだ。


 自分が懇意にしている中原恵美という女性も、ストーカー被害に悩まされている人間の一人だ。

 彼女は会社でこう言っていた。


「最近、誰かの視線を感じるんです」


 その発言だけだったら、単なる自意識過剰として処理されていたかもしれない。でも、どうやらそうではないらしい。彼女が言うには、誰かが後をつけてきているのだとか。酷い日には自宅の周辺で怪しい人影を目撃することもあったらしい。


 全くけしからん。女性が安心して街を歩くことができないのは、悪意を持った第三者が街中に跋扈しているせいだ。しかもストーカー気質のある人間はその自覚がないとも聞く。本当にどうしようもない連中だ。


 中原恵美はとても顔が広い。見た感じ、独身でもあるようだ。交友関係の広さに加えて、その気がなくても変に人を勘違いさせてしまう言動も相まってか、隙あれば彼女を狙っている異性、同性は多かろう。こういう時、勘違いさせてしまう人間が悪いという意見を目にすることがあるが、俺はそう思わない。どうであっても、勘違いする人間が悪いのだ。ましてや好意を好き勝手に解釈して、つきまとうなど言語道断だ。


 彼女は昼休憩になるとよくコンビニに行く。小さなお弁当にカップのお味噌汁の組み合わせ。そこにたまにホットミールなんかを追加することもある。中でもフライドチキンが好きなようだ。


 ルーティン化された行動は、観察者にとってとても都合が良い。何せその時間にその場に行けばすぐに彼女の姿を見つけることができるのだ。特にお昼時なんかは人が多いから、ストーカーする上でこの上ない良条件である。油断も隙もあったものではない。これではおちおち買い物にすら行けないではないか。


 オフィスで働く恵美の顔には、ちょっとした疲れが見て取れる。かわいそうに。ストーカーのことが気がかりでまともに寝ることすらできないのかもしれない。目の下のクマがその証拠だ。


 恵美は仕事が終わると、寄り道をすることなく帰宅する。電車で片道一時間ほど。車内でソーシャルゲ―ムに興じるのがストレス発散らしい。パズルゲームがお気に入り。


 最寄り駅で降りて歩くこと十数分。恵美は自宅へと辿り着く。


 今日も彼女が何事もなく帰宅できたことにほっと胸をなでおろす。しかし、まだ気は抜けない。彼女は言うには自宅周辺に怪しい人影を見ることがあるというのだから。もしかしたら、自宅近くに待ち伏せして彼女を狙っている悪漢がいるかもしれない。周囲を注意深く見渡してみるけれども、どこにも怪しい人影はいない。やはりこうやって見守る時間を増やして良かった。些細な行動だが、ストーカーをするような連中に対する抑止力にはなっているらしい。


 午後十一時。恵美が住んでいるアパートの一室の電気が消える。

 何も起こらなくて本当に良かった。今日も一日、ストーカーの毒牙から恵美を守れたことに満足感を覚える。


 安心しろよ。恵美。これからも俺が君のことを守ってやるからな。

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