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追放された大聖女。王子よ、なぜあなたはあと一年待てなかったのか! そして義妹よ、あなたは大聖女の仕事を何もわかっていない!  作者: 星野 満


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20/22

19. 国王の復活

※ 2026/6/6 修正済み

◇ ◇ ◇ ◇



 魔獣が出現したジェダイト王国の暗雲も去り、大神殿の官僚体制は一新した。


 ダイアナは魔獣たちを元の闇世界へ封印させた功績で、再び大聖女に返り咲いた。マリーを含む数名の巫女たちも大神殿の翡翠の女神像の石碑を守った功績で、全員聖女に昇進する。



 残念ながら魔獣に虐殺された王太子夫妻や神官長、その護衛騎士三名、神官四名、併せて十名が魔獣の犠牲者と判明した。


 

 早朝、大神殿内の檀上の周辺が血の跡の惨状を見たら、もっと多数の犠牲者が出ていても、おかしくはなかった。


 これは多くの出席者たちが大神殿からすぐ屋外へ逃げられた事と、魔獣によって負傷した人々を、救出して女神と巫女のヒール魔法で命だけは助かった者が多かったのも一因だった。

 

 中には手足が魔獣に切断された者もいたが、後にダイアナが欠損回復魔法で完治させた。


 

 だが魔獣のお腹に飲み込まれて、遺体すらない遺族たちの悲しみはとても大きかった。

 

 その中にはアレックスとカミラ、更に神殿のダイアナに刺客を送った神官長もいた。他の犠牲者たちもほとんどが神官長とアレックスの取り巻き連中だった。


 

 やはり壇上にいた者、そして魔獣が仲間と判断した者が食されていた。

 

 この真実を知っているのは、ダイアナを含めてごく少数だった。


 もちろん遺族たちには真実を知らせる事は(はばか)られた。



◇ ◇


 

 ジェダイト王国は、むこう三カ月間は王国の祝賀行事は一切中止にした。


 アレックス王太子含め犠牲者の御霊(みたま)を弔う為に神殿内と王宮殿内に、一カ月は夜中でもランタンを灯した。


 

 王宮は、悲しみにつつまれたが一つ光明もあった。


 

 それは病気で臥せっていた国王が、突然ひょっこりと元気に回復したのだ。


 

 王族含め、宮廷の人々は国王の回復ぶりに大いに喜びし、なおかつその治る早さに驚愕した。

 


 本人に聞くと『長い夢を見ていた⋯⋯』と。


 その夢も金縛りにあったように体が硬直して動けずとても苦しかったと。


 

 後からわかったが、国王の病は“邪神の呪い”が原因だった。


 今まで、あれほど偉丈夫だった国王に原因不明の病いが、起きたのは不可解だった。

 

 国王の主治医や祈祷師たちは王の病いの原因がわからず首をかしげていたが、邪神の呪いと聞いて納得した。



 その呪いをかけたのはカミラだった。


 

 それに気付いたのはダイアナである。


 

 亡くなったカミラの遺品の中から、ダイアナが『闇魔法』の手引き書が発見したのだ。そこには国王の呪いの他にも、アレックスへの“魅了”の呪いも含まれていた。


 闇魔法はジェダイト王国では悪しき魔法と言われ“禁書”とされていた。


 禁書を売買並びに悪用した者は重罪に罰せられた。


 

 法で規制してるとはいえ、時おり他国から経由して、闇魔法の禁書が悪しき魔導市場などで売買されているケースもあった。

 

 

 カミラは何かしらの方法で禁書を入手して、まずアレックスを“魅了”で誘惑し、婚約に取り付けた後、国王を病で倒した事にも成功した。

 

 

 そして最終はアレックスを国王にして、自分が王妃になる魂胆だったようだ。


 

 だが、結局カミラが魔獣の犠牲になったおかげで、国王への邪の呪いも解けたとわかった。



 カミラの魔力は相当な力を持っていたが、それが却って災いとなり、大聖女となったダイアナへの怨恨から、カミラをダークサイドに墜としめた原因となった。



 呪いから目覚めたジョージ国王は、家臣からのこれまでの経緯を聞いて驚愕した。


 そのショックたるや否や相当なものだった。


 

 しかし、そこは偉大なる王と人々から云われるだけの事はある。己の悲哀は二の次にして、その後の罰則は迅速かつ公平に行われた。


 

 今回の“神殿結界破綻”を招いたのはダイアナを追放させた、王太子アレックスとその妻カミラと知ると、国王は王太子の王位継承剥奪、並びに王太子夫妻の爵位も剥奪させた。また神官長のダイアナ暗殺未遂も判明して彼の官職も剥奪させた。



 更にアレックスとカミラを罪人として、王族の墓から辺境地域にある、錆びれた罪人墓地に移し替えた。



 アレックスの母の王妃は懇願した。


「息子はカミラに騙されたのだ、せめて王子の爵位剥奪を取消して欲しい」と。


 だが国王は首を縦に振らなかった。




◇ ◇ 



 一方、暫くしてダイアナはジョージ国王からも今回の功績で大勲章を授与された。



「ダイアナ、勲章の他に、ワシから褒美をしたいんじゃが、お主は何が望みかね?」


 国王から問われ、自分の故郷ともいえる孤児院の建て増しと寄付をお願いした。

 

 それをシスターアンナに報告すると泣いて喜んでくれた。

 

 

 今回、追放されてみて、ダイアナはつくづく孤児院が自分の故郷だったと改めて実感したのだった。


 

 

 そして王都追放時に、ダイアナを故郷に送った御者のロイドも、マリーへの手紙を渡した事で褒美をもらった。


 ロイドは「いやさあ、ワシはダイアナ様の手紙を、マリー様に渡しただけなんやけどなぁ」

 赤い顔をくしゃくしゃにして上機嫌だった。 


 

ダイアナは「ロイドが手紙をマリーに渡してくれたおかげで、あの子からの伝書バトで逐一神殿の状況を知らせてもらえたのよ、あなたのおかげでもあるわ」

と、ロイドに感謝をした。


 

 また森で、ダイアナを暗殺未遂した元神官の護衛騎士ヒルロット、通称ヒルもダイアナの計らいで、恩情を受けて王宮内に戻された。


 それも神官護衛騎士団から、王宮白騎士団へ昇格したのだ。


 白騎士団は蒼の騎士団より剣技は若干劣るが、それでも白騎士団は王様直属の騎士団だったので、ヒルにしてみれば大出世であった。



「ダイアナ様、夢みたいです。私は貴方様を殺めようとした罪人なのに……まさか王宮白騎士団の一員になれるなんて……これで母さんを王都に呼び戻せます」


 ヒルは涙ながらに喜んだ。



「良かったわね、ヒル、お母様の具合も薬草飲んでからだいぶ良くなったとか、でもあなたの直接の昇進は私が頼んだのではないわ」と。


 

 実はこの大抜擢は青騎士団のエドが国王へ直々ヒルを推薦したのだった。


「あの時、俺さまの魔力剣で、お前だけが生き残ったからな。ヒルの剣の腕前は相当だろう」


 エドはさも当たり前のように言った。


 

◇ ◇




 魔獣を封印した後、ダイアナは結界のヒールなど多量に魔力を使いすぎたので倒れてしまう。


 

 入院して体力は大分回復はしたものの、宮廷の医師や聖女たちは、大事をとって数日間は安静状態と診断した。


 意外な事に彼女が入院したのは、王族たちが入院する王宮殿の病棟だった。



 なぜダイアナが王宮殿の病棟に入院したかと言えば、彼女は未来の王太子妃と決定した為だ。


 

 お相手は、ダイアナが国外追放した時から自称護衛騎士と、煩くつきまとっている王宮蒼騎士団のエドだった。



 エド・シーラン子爵。


 彼はジョージ国王の落としだねだった。





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