NMS ― 起死回生の鍵
「あーあ、ったく。
なんで俺たちが従業員に使われなきゃいけねぇんだろうな。
しかも俺だけ捕まるし」
誰かが返事をしてくれるわけでもないが、愚痴りたいんだから仕方ない。
「とりあえず腹立つから…ユキでも取っ捕まえるか」
しかし、あいにくこの建物は無駄に広い。
まぁ俺たちだけしかいないから無駄に広く感じるわけだが…。
手っ取り早くユキを捕まえるなら呼び出せばいいわけだが、つい30分ほど前に追跡者になったばかりの俺の呼び出しに応じるわけがない。
んー…いったいどうしたものか?
そろそろ日も沈んできてるし、ラストバトルも近いだろうからな…。
一発ぎゃふんと言わしてやりてぇのに。
どうしたものかね。
『おい本多、電話だぞ』
「はぁ…?電話?
ったく…俺の灰色の脳細胞が頑張って奇策を考えてるってのに――って、そういえばこれ本多のケータイじゃん。
ってか、いまの着信音は一体なんなんだよ!!
明らかにユキの声じゃねぇか!!」
そういえば、さっき俺が本多のケータイを使ってアホ従業員と会話していたときにまひるに見付かったんだよな。
それで代わりに本多が俺のケータイを持ってったんだっけ。
んで、そのまま俺の手元に本多のケータイ。
つまり…やれってことだよな?
ディスプレイには知らない番号。
いや この番号は…従業員のあいつか?
よし、いっちょかましてやるぜ!!
「なんだ?」
本多のように、短く返答をする。
声色を真似るのも忘れない。
『あーやっと出ましたか。
本多様ならワンコールで出ると思ったんですが』
無茶を言うな。
「で、何の用だ」
『まぁわかってるでしょ?
次のミッションですよ。
さくっと片付けてくださいねー♪』
う…語尾がキモい…。
だがどうやら俺が長谷川だとは気付いていない様子…。
よし いける!!
「また何か手伝わせるつもりか?」
『さ、さぁ?
いったいなんのことだかさっぱりまったくわかりませんよ?
あはは…』
あはは、じゃねぇよ!!
と、心の中で毒づく。
『とりあえずミッション内容を伝えますから、あとは適当に頑張ってくださいねー』
「いいから早く言え」
『はいはい、わかりましたよーだ』
いちいちむかつく従業員をさらっと流し、俺はユキにメールを出した。